コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
???「ここにもないか……」???「海音さん?ここにいたんですね」
???「!」
◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎
???「お師匠様!一緒にこれ食べませんか?」
???「雨花が自分から来るなんて珍しいね。何かあったのかい?」
???「最近、お師匠様と会えてないのでたまにはこういうのも良いかなと……!ダメでした?」
???「いや良いよ。寧ろ歓迎だよ。雨花。早く縁側の方に来なさい。」
ここは、雫の家。久しぶりに挨拶に行くために菓子折を持って「雫」に会いに行ったのは「紫雲雨花」である。
雨花「チョコクッキー美味しいですね!」
雫「でも君甘いもの好きじゃないだろ?持ってこなくても良かったのに。」
雨花「まぁそうなんですけど……あはは」
雨花は笑っているようにみえるが、どこかいつもと違う。
雫「やはり、何かあっただろう?言える範囲で言ってくれないかい?」
雨花「…………」
雨花はしばらく黙ったが、ある言葉を口にした。
雨花「神魂滅裂(しんこんめつれつ)」
雫「!、あ、雨花!まさか……!」
雨花「ちょっと待って下さい!落ち着いて!まだ身につけてません!ただ、あと少しで身につけられそうなんです。」
雫「そ、そうか……そうだったのか……本当にやり遂げるつもりなんだね。この神様の魂を消滅する神通力を……」
「「「「自分に使うために」」」」
ガシャン
雨花・雫「!」
雨花と雫のみるほうには、持っていた花瓶を割った海音が立っていた。
海音「ね、ねぇ……!雨花……そんなことしないでよ……そんなことやめてよ!!どうして……?雨花!何があったの?何かあるからそれをやろうとしてるんでしょ?雨花!答えてよ!!」
雨花「…………」
雫「雨花……何か言いなさい」
雨花は立ち上がると、目を合わせずこう言った。
雨花「ごめんね。海音ちゃん。わたしは……わたしはね……。…………」
そう言うと、雨花は瞬間移動でどこかへ行ってしまった。
海音「雨花!!!!」
雫「海音。落ち着いて。」
海音「落ち着けるわけないじゃないですか!!雨花を止めないと!!このままじゃ……!」
雫「いいかい。海音。「神魂滅裂」という技は神通力を極めて極めて極め抜いた者しか使えない技なんだ。それを使えるのは現段階では、万能神様のみ。まだ雨花にはそこまで届くほど実力はない。まだ……だが。」
海音「…………」
海音は雫に背を向け、外に飛び出した。
雫「海音は本当に雨花のことが大好きなんだね……」
◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎
海音「冥府になら、何か「神魂滅裂」について記されている何かがあるかもしれない。「神魂滅裂」を止める方法が……!」
そしてあれから一週間が経った。海音はずっと冥府にある資料室で探し続けていた。
海音「…………はぁ……はぁ……」
海音はずっと書類と格闘して、昔の勉強づくめの毎日と重ねてしまった。
海音「うっ…………気持ち悪い……でも、探さないと……」
それでも海音は探し続けていた。
海音「ここにもないか……」
???「海音さん?ここにいたんですね。」
海音「!」
その瞬間、海音はまた倒れてしまった。
???「雨花さん急にいなくなったかと想えば、「海音ちゃんのことお願い」って……それ以外何も書いてないし……何やってるんですかね……あの人は……」
???「とりあえず雫さん呼んどいたわよ。」
海音が目を開けると、そこは雨花の仕事部屋だった。床に軽く毛布がひかれ、その上からまた毛布をかけられていた。
海音「あ、雨花は……どこに……?」
橙「あっ目覚めましたね!良かった。雨花さんはここにはいませんよ?……やっぱり何かあったのですか?」
桃時「あいつ……今めちゃくちゃ後悔してるんじゃない?自分のせいでとか想ってるわよ……はぁ……」
海音「雨花いないの?……そ、そんな……!早くみつけないと!!」
橙「海音さん。何があったのか聴いてもよろしいですか?」
橙も桃時も真っ直ぐした目で海音をみつめる。
海音「実は……」
◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎
橙「…………」
桃時「…………っ!あいつ……馬鹿じゃないの……!」
橙は、とても暗い目になり、桃時は、激しく怒る。
橙「雨花さん……雫さんだけには教えとかないとと想ったんですかね……私たちには言わず……」
桃時「何でそんな切羽詰まった状態なのを隠すのよ!!バッカじゃないの!!」
海音「私は止めたいの。雨花を。」
橙「そのためにこんなご自身のトラウマが呼び起こるようなことを?」
海音「…………」
橙は海音に向き直る。
橙「海音さん。もし海音さんが無茶したらきっと雨花さんはもっと自分を追い詰めると想います。雨花さんは誰かを傷つけることで感じる罪悪感に本当にとても弱い方です。一度感じるとそこから抜け出せなくなり、自分からも抜け出そうとしない方です。だから海音さん。無理しちゃいけないんです。雨花さんのためにも。」
海音「…………分かった。」
桃時「まずはアタシたちを頼りなさい。絶対に。約束破ったら雫さんの修行見学禁止にするから!」
海音「……え!?それはやめて!!」
桃時「嫌よ。やるわ。ていうかあんたがちゃんとアタシたちを頼れば済む話でしょ?」
海音「分かったよ……ちゃんと頼る。」
橙「でも雨花さんにとって私たちがしてることって余計なことなのではないでしょうか……」
桃時「どうしてよ?」
橙「雨花さんは……消えたい。それが……雨花さんの望む「救い」なら……止めるのは良くないのかなと……」
桃時「でも、それは……!」
海音「「救い」を求めてみんな生まれてくる。植物も妖怪も人間も神も。みんなそれぞれ「救い」は違くて、複雑だったり、移り変わっていくものもある。でも、私は想うんだ。みんな誰しも一度は願う「救い」……それは、”手に届かない普通”だって。母親や父親に抱きしめて貰ったり、先生に褒められたり怒られたり、どんな形状であれ出会いや別れが来たり、絶望のどん底にいる時ほど、そんなみんな誰もが想い描く幸せを手に入れたい。その幸せは普通だったり、超人的なものだったり、人によって違うけど、みんな誰しも一度は願うのは”自分の憧れた普通”。誰かにとっては当たり前なことでも自分にとっては手に届かなかった、自分の地獄がなかったら手に入れられたはずの”普通”。「こんなことがなければ」「あんなものがなければ」と想う度に願う普通という名の幸せ。誰もがそんな幸せを願ってる……雨花はきっと、誰もが想い描く幸せをきっと手に入れたかったんだと想う。今も。ずっと。でも……雨花はもうそんな幸せ手に入れられないし、それを望む資格もないと想ってる。」
桃時「雨花はそれほどのことをしたって想ってるってこと……ね。」
橙「…………」
橙は……
雨花さんは……”普通”になりたかった。
誰もが想い描く幸せをただ手に入れたかった。
自分の憧れる”普通の人間”になりたかった。
…………やっぱり、私と雨花さんは似てるんですかね……
海音「でも、例え雨花がどれだけ人を傷つけても私は受け止めたい。絶対に。罪なら一緒に背負いたい。」
橙・桃時「………」
桃時は……
こういう「受け止めたい」って想われること自体が雨花は嫌なのかな。
「受け止められる」ということが
されたくなくて、
どうしたって「誰かに受け止められる自分」というものが許せない。受け入れられない。自分というものがたまらなく壊してやりたい。
あの子は。自分が一番、自分自身を許せないんのよね。
あの子はそういう子なのよね。
橙「桃時さん。今雨花さんにするべきことは、受け止めることでも、何か言葉をかけることでもなく、何事も無かったかのように毎日を送ることではないでしょうか?」
桃時「…………どうして?」
橙「そもそも雨花さんは、雫さんにしかこのことは知らせたくなかったはず。それを突くようなことはしちゃダメだと想うんです。……だから本当に申し訳ないですが……」
橙が桃時にこしょこしょ話をする。
海音「何してるの?」
桃時「ごめん。海音。」
桃時「神通力・【時雨】」
海音「………!!…ちょ……」
◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎
海音「…………うーん……」
橙「海音さん?大丈夫ですか?」
海音「あれ?何で橙がここにいるの?……ってここ雫さんの家じゃない……何で?」
桃時「ごめん海音。アタシ今、時間以外の神通力の練習をしてて間違ってあんたを冥府に飛ばしちゃったの。」
海音「そ……そう……なの?」
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
橙「海音さんの時を雨花さんの得たい力のことを知らないところまで戻して下さい。」
桃時「……何でよ」
橙「雨花さんはきっと私たちなら雨花さんの話を聴けば、「本来雫さんにしか教えたくなかった」という部分を汲み取ると想うと想うんです。だから私たちがすることは海音さんの記憶を戻すこと。桃時さんなら「雨花さんの得たい力」の部分の記憶だけ戻して固定して記憶を隠蔽することができますよね?」
桃時「できるけど……そしたら海音の意思はどうなるの?あの子は雨花を……」
橙「でも、雨花さんなら海音さんの記憶を簡単に消すことができたと想うんです。でも……」
桃時「雨花は出来なかった……のね。」
橙「海音さんにはいつか私からそのことを話します。その時が来るのがいつになるかは分かりませんが……だから……」
桃時「……仕方ないわね。分かったわ。でも海音に説明する時は必ず謝るのよ。もちろんあいつにも謝らせる。……っていうけどあいつの場合、あいつがちゃんとこの世界で過ごすって決められたらになっちゃうのか。それから「雨花のために仕方なかった」なんて言うのもなしよ。海音は雨花をめちゃくちゃ助けたいと想ってるんだから。」
橙「分かりました。必ず」
桃時「じゃあ……」
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
海音「?」
橙「では私たちが海音さんのことお送りしますね。」
桃時「…………」
海音「ありがとう……?」
こうして、海音は雫の家に戻って行った。
◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎
???「そうか。雨花のことを知ったんだね。橙と桃時も。」
雫が橙の仕事部屋で、橙と桃時と話し合っている。
???「はい。」
???「あいつのせいでらしくないこともさせられたし、あいつが帰ってきたら、思いっきりデコピンしてやるわ。あのバカ女をこうやって……」
桃時は、何度も空中でデコピンをしている。
橙「雨花さん。何していらっしゃるでしょう……ここ一週間一度も姿をみせていらっしゃらないですし……」
雫が呟く。
雫「まるで「黒い彼岸花」と言われていた頃に戻ったようだね。」
橙・桃時「…………」
「黒い彼岸花」
妖怪を狩り、天使を狩り、
あらゆる生命を拒否し続けていた頃の雨花。
ろくに帰ってこないこともたくさんあったと兎白から聴いた。
あの頃の雨花にはもう戻って欲しくない。
自分を苦しめることしかしていない
あの頃の雨花には……もう……
コンコン
橙の仕事部屋をノックする音がする。
???「橙さーん!!」
ノックしたのは、紅緒だった。
橙「どうかしましたか?」
紅緒「雨花さんが戻ってきました!……でも」
橙「何かあったんですか?」
雫「……とにかく早く行きなさい」
雫は雨花が来ていることを既に知っているようだった。
橙「行きましょう」
桃時「えぇ!」
◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎
雨花「…………」
橙「雨花さん……もう戻ってこないかと……」
桃時「ちょっとあんた!今日という今日だけはあんた……を……って……」
雨花はもたれかかれるように橙と桃時に倒れ込んだ。
雨花「…………」
雨花は疲れ果てたかのように眠っている。
雫「どうやら、ずっと修行していたようだね。……そして……」
雫は雨花の手足を服から出す。
桃時「うっ……」
橙「む、むごい……」
とてもじゃないが言葉で言い表せないほど、とても痛々しい傷や痣が手足いっぱいに敷き詰められていた。これなら、身体の部分はみることができないほど痛めつけられているだろう。
橙「雨花さん……この一週間何をして……」
桃時「これじゃあデコピンしたくてもできないじゃない……はぁ……」
雫「雨花には休息が必要だ。橙。休暇をとって雨花を看病してやれないだろうか。もちろん、その分の仕事は私に任せて良いし、有休を消費させたりはしないから。」
橙「もちろん良いのですが……雨花さんがじっとしてるでしょうか……」
桃時「それはアタシに任せて。こいつの体の時間を固定して休憩場所から動けないようにしてやる。」
橙「なんだかやりすぎな気がしますけど……でもそれぐらいしないとこの人は動くでしょうね……全くもう……」
雫「私もなるべく顔を出そう。二人とも任せたよ。」
橙・桃時「はい」
雨花は、雫に運ばれ橙の家で休息することになった。
外は新月になり、真っ暗な夜が広がっていた。
言えない。あと0҈҉̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̿̿̿̿̿̿̿0҈҉̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̿̿̿̿̿̿̿0҈҉̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̿̿̿̿̿̿̿0҈҉̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̿̿̿̿̿̿̿をすれば
あの力を手に入れられるなんて。言えないよ。
あぁあ
お願いだから、ほっといてくれないかな。
【続く】