「…今日、本当は―――」
斜め下を向く様に俯いている彼女は、まだ言うのに迷いがあったのか、声は小さくて聞こえにくかった。それでも、すぐ近くに居た私の耳にはその声がはっきりとまでは行かずとも、届いた。…届いてしまった。
「…ほんとに…?庵梨。」
「うん、本当だよ。だからね、一つだけお願いがあって。」
瞬間、私の背中に悪寒が走った。
嫌な予感がして、私はそのお願いを聞きたくもないし、受け入れたくも無くなった。
けれども同時に、これを受け入れるべきだとも思った。
「…分かった。」
私は、お願いを聞き入れる他無かった。
嫌な予感が外れていてほしかったから、もしかしての微かな可能性に賭けてみる事にした。
「ありがとう…!」
私の返事を聞くと、そう言って何時もの様に笑顔を顔に浮かべる庵梨。そして、私にだけ聞こえる様にし、そのお願い事を言った。
◇ ◆ ◇
「お〜ふたりさんっ、僕達を差し置いて何を話してるのかな〜?」
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