今日は、教育実習の最終日。
皆で実習生室として使わせてもらっていた教材室を掃除して、机と椅子を片付ける。
 「いやぁー、長かったけど、あっという間だったなあ」
 高野がそう言うと、綾華も頷いた。
 「ねえ、皆、ぶっちゃけ教師になるの?」
 綾華の問いに、俺たちは顔を見合わせる。
 「…俺、正直わかんない。一応体育科の教採は受けると思うけど、ベースも捨て難いんだよなぁ」
「え、高野、ベースやってんだ」
「うん。今大学で一応バンドやってるしね。ベースもさ、続けていきたい気もあるんだよなー」
「私も一緒。社労士の資格にも興味あるし、ドラムも続けたいしなぁ…って感じ。涼ちゃんと阿部ちゃんは?」
「僕は、まずは気象予報士の資格が欲しいかなぁ。どっちに進むかはわかんないけど」
「ダンスは? いいの?」
「うーん、正直生業にするのは難しいよね…なら教師になってダンス部の指導ができるってのも、良さそうなんだけどねー、迷ってる。涼架くんは?」
「俺も、うーん、正直、免許取れるなら取っとこうくらいで来たからなあ。たぶん、フルートに進みたい、かな」
「なんだ、俺ら全員腰掛けもいいとこじゃん」
 高野の言葉に、ははは、と笑い合って、最後のホームルームの為に、それぞれの教室へと向かった。
 
 
 3年3組の教室で、最後の挨拶を行う。着席している生徒の中には、もちろん元貴と、若井もいる。
 「えっと、約1ヶ月、ですね。4週間、本当にお世話になりました。皆さんと一緒にいると、すごく、こう、気持ちが蘇るというか。あの頃の思い出とか、青春だったなあ、という時間。そんなものを、たくさん、思い出しました。だけど、あなたたちは、まだそんな青春の真っ只中にいます。少し歳上の僕から言わせてもらうと、本当にかけがえのない時間に、あなたたちはいます。だから、傷つけ合っても、笑い合っても、泣き合っても、…好き合っても、その全部を、大事にしてください。月並みな言葉ですが、本当にそう思います。ここに、実習に来て本当に良かったと、思っています。皆さん、ありがとうございました」
 途中で涙が零れてしまいながらも、最後までなんとか話し切って、俺は頭を下げた。大きな拍手が響いて、松嶋先生に背中をトントンと叩かれる。顔を上げると、元貴が花束を持って、目の前に立っていた。
 「涼ちゃん先生、ありがとう。…俺、こっから最後まで、学校ちゃんと来るよ」
 にこっと笑って、花束を差し出す。もう俺は、顔がぐしゃぐしゃになるまで泣いてしまって、またポケットに入れっぱなしのハンカチで顔を拭いた。
 「きたな」
 元貴が眉を顰めて、またそう零して笑う。
皆が寄せ書きをした色紙を渡してくれて、集合写真まで撮ってもらい、最後のホームルームは無事に終わった。
 職員室でも、実習生全員で前に立ち、同様に挨拶を終え、それぞれの担当教諭にお礼を言いに行く。
 「松嶋先生、本当に、ありがとうございました。お世話になりました」
「…お疲れ様。今日、来るわよね?」
「あ、打ち上げですよね、はい、もちろん」
「そ、じゃあ、またその時に」
 あっさりと切り上げられて、俺は肩透かしを食らった。まあ、松嶋先生らしいといえば、らしいのかな。
職員室を出て、最後に少しだけ見ておこうと、音楽室へと向かう。吹奏楽部がちらほらと練習をしていて、その姿を目を細めて見ていた。
将太先輩とよく一緒に練習をした、この教室。廊下も、他の空き教室も、渡り廊下も、全部、全部、将太先輩との思い出が詰まってる。今までは、少しの痛みと、苦味が込み上げるだけだったその場所が、今は少し、甘味の部分が優しく湧き立つ。
本当に、ここに来て良かった。自分本位な部分でも、そう思える実習だった。
階段を降りようと歩みを進めると、階段の下辺りから、声が聞こえた。
 「今日、一緒に帰れる?」
「…最終下校になると思うけど」
「うちもそうだと思うから。あのさ、正門で、待ってたり、とか、待っててくれたり、なんて…」
「…わかった、…じゃあ」
 階段を昇ってくる音が聞こえて、慌てて身を隠すところを探すが、その前に中条さんが俺を見つけた。
 「…あ、藤澤先生…」
「あ、中条さん、どうも」
 今気づきましたよ、という風に、挨拶を返す。中条さんの頬は紅く色付いていて、さっきの声の相手である若井に、良かったな、と心の中で呟いた。
 
 そのあとは、結局松嶋先生にも見つかって、折角だからと最後に吹奏楽部と一緒にフルートを奏でさせてもらった。久しぶりに、この教室の中で人と音を合わせるのは、なんだかくすぐったいような、泣きたくなるような、不思議な感覚だった。つい隣に目をやって、笑顔で目を合わせてくれる将太先輩を探してしまったりして。
 
 
 結局、最終下校時間まで青春の残り香を堪能しまくった俺は、松嶋先生の車で先生達との打ち上げにこのまま向かわせてもらうことになった。
ほかほかとした気持ちで、下駄箱から靴を取る。すると、指にカサリと紙が当たった。靴の中から取り出して見ると、白い紙が四つ折りになっている。開くと、表面には『私の推し教師』と書いてあった。これは、あの時の紙だ。裏返してみると、そこには、こう書かれてあった。
 『校舎裏の中庭で待ってます』
 宛先も、差出人も書かれていないその紙を見て、俺は急いで職員室に走る。松嶋先生を見つけて、「少し遅れそうなので先に行っててください」と伝えると、俺の手の中の紙をチラッと見て、「駐車場で待ってるから」とだけ言い、俺の花束を取り上げるとさっさと歩いて行ってしまった。
 俺は、すぐに踵を返して中庭へ走った。あの紙を使って、俺にこんな約束を取り付けようとする人なんて、1人しか浮かばない。でもまさか、まさかこんな時間まで待ってるわけないよな、いないよな。走る前から速くなっていた鼓動が、更に激しくなる。
中庭に着くと、ほとんど沈みかけた夕陽の中に人影は見当たらなかった。はぁはぁと肩で息をして、辺りを見渡す。
すると、柵の向こうの大きな木の下から、立ち上がった元貴が見えた。
 「…おそ」
「………ごめん、今、気付いて…」
「んーん、いーよ」
「…ずっと、待ってたの?」
「そーだよ。暑かったよ。死ぬかと思ったわ」
 タオルを頭に乗せて、少しでも影を探して、木の根元にでも腰掛けて待っていてくれたのだろう。
 「…ほんとに、ごめん」
「だからいーって、こんくらい覚悟の上で紙入れたんだから」
 その言葉に、ぐっと喉が詰まる。なんで、なんでそこまで、俺を待っててくれるの…。
 「…なんで…?」
 俺が、泣きそうになりながら、元貴に問いかけた。元貴は、困った笑顔を見せながら、手にあるスマホを俺に見せた。
 「…今日で、実習終わりでしょ? だったら、連絡先、交換してもいいかなって」
 俺は、瞳を揺らして、少し迷った。ここで、連絡先を交換してしまったら、どうなるんだろうか。どうなりたくて、どうなって欲しくないのか。頭の中がぐちゃぐちゃと、こんがらがっていく。
 「…ちなみに、他の先生達はみんな教えてくれたよ」
「…え?」
「ほら」
 元貴がスマホを見せると、トークが並ぶ画面に、『高野清宗』『山中綾華』『阿部亮平』の名前が並んでいた。
 「ホントだ…」
「ね。…まあ、涼ちゃん先生が嫌じゃなければ、だけど」
「…まさか。嫌じゃないよ、もちろん…」
 これ以上、元貴を傷つけたくはなくて。それは確実に俺の本意ではないから。俺はスマホを差し出すと、元貴と連絡先を交換した。ブル、とスマホが震えて、元貴からトークが送られてきた。
 『これからもよろしく』
 その一文に、俺は、『よろしくね』と返した。元貴は、手元を見て、ふ、と笑った。
 「…先生、この後は?」
「ん? …この後?」
「今日は、帰るだけ?」
「あ、ううん、今から先生達の打ち上げに行かなきゃダメなんだ。松嶋先生がね…あ、そうだ、元貴もついでに送ってもらう?」
「…いいのかな」
「いい…んじゃないかな、ダメかな」
「知らないよ」
「とりあえず、一緒に車まで行ってみよ。ダメなら、駅まで一緒に行こ」
「…うん」
 嬉しそうに微笑んで、元貴が頷いた。よかった、体育祭のような悲しげな顔は、もう見たくはないから。
 
 
 松嶋先生は、元貴を連れて行っても特に顔色も変えず、またこの前のように「後ろに乗りなさい」と言ってくれただけだった。
後ろに並んで座り、今回は寝落ちしてしまうことなく、元貴が松嶋先生と会話をしている。ふと、左手が暖かくなって、そちらを見ると、元貴の手が俺の手に重なっていた。驚きで、ぴく、と動かしてしまったが、握り込むわけでもなく、ただ優しく俺の手に重ねるだけ。元貴は表情も変えず、まだ松嶋先生と話を続けている。俺は、手を退けることもなく、かといってこちらから握れるわけもなく、ただ暖かな元貴の体温を、左手からずっと感じ取っていた。どうか、この心臓の音が、元貴にも先生にもバレませんように、と頭の中で願いながら。
 月曜日になって、また普段の大学生活が戻っていた。とはいっても、3年生にもなると、そんなに講義のコマがみっちり詰まっているわけでもないので、空きコマに学食のテラスでゆっくりお茶を飲んでいた。学食の大きな窓の外側がテラス席になっていて、丸いテーブルがいくつも並び、他にもちらほらと人が座っている。
 「涼架くん、お待たせ」
「あ、亮平くん」
 次の講義を同じく受けている亮平くんと落ち合い、少し話をしようと約束をしていたのだ。
 「打ち上げ、楽しかったね」
「そうだねー、あんなにゆっくり高野たちと話せると思わなかったからね。あそこで一番仲良くなったかもね」
「ほんとほんと。2人があんなに真剣に楽器してるって知らなかったからね、すごいよね。また会えるかなぁ」
「あ、ねえこれ見て」
 亮平くんが、スマホを見せてきた。『目黒蓮』と書かれた、トーク画面だ。そこには、『7月の夏祭り一緒に行こう』、というメッセージが送られてきていた。
 「…え、これ、目黒くんって、あの?」
「そうそう。意外とグイグイくると思わない?」
 亮平くんが、画面を見ながら、ふふ、と嬉しそうに笑った。
 「…え、え? それって、そういう?」
「…まあ、ね。最終日に思いっきり告白されてるしね、俺」
 実習が終わったからか、亮平くんの『俺』が戻ってきていた。って、そんなことよりも!
 「え、告白?! そ、それで…?」
「とりあえず、保留、ていうか、今すぐ返事はいらないってさ。それより、何回かデートして、それから見極めて、って言われた」
「…そう、なんだ…」
 そんな風に、素直にやり取りをしている2人が、なんだか羨ましく感じてしまった。
 「涼架くんは? なんか無かったの?」
「え…なんかって…?」
「告白とか」
「な、無いよ!」
「えー? てっきり大森くんからされてるかと思ってた」
「な…! なん、で…」
「え、だって、俺に連絡先訊いてきた時に、『涼ちゃん先生は最後に訊く』って嬉しそうに言ってたから」
 元貴の、嬉しそうな笑顔が頭に浮かぶ。ああ、可愛いなぁ、とつい、口角が少し上がってしまった。
 「ふふ、今、可愛いなぁって思ったでしょ」
「え! ちょっと、心読まないでよ」
「はは。良いこと教えてあげようか」
「なに?」
「男の人を、『可愛い』と思った時は、それはもう沼に落ちてるんだって」
 亮平くんが、頬杖をついて、にっこり笑う。
 「『カッコいい』とかはさ、まだ側を見てるだけで、ダメなところとか見ると幻滅したりもするけど、『可愛い』になると、もうその人のダメなところとかも全部『可愛い』で受け入れちゃうようになってる、らしいよ」
 俺は、顔が赤くなっていくのが自分でもわかって、両頬を手で押さえた。亮平くんが、クスクスと笑う。
 「俺もさ、蓮が可愛くてしょーがないんだよ。ヤバいよね、2人してもう落ちてるよ、これ」
「だ、ち、違うよ、俺は別に元貴になんにも言われてないし…!」
「ふーん? じゃあそのうち言われるね、頑張って」
 肩をポンと叩かれて、俺は「だから違うって!」と真っ赤な顔で意味のない否定を口にしていた。
 1週間ほどして、亮平くんと一緒に、高校へ実習ノートを受け取りに行った。この間に指導教諭のチェックや総評を書いてもらっていて、これを大学へ提出すれば、俺たちの実習は本当に終了だ。
松嶋先生によくよくお礼を伝えた後、亮平くんと廊下を歩く。
 「教室見にいく? 今休み時間だよ」
「…いや、いいよ…」
 亮平くんが誘ってくれたが、あれからひとつも元貴から連絡が来てない事に少し不安を抱えていた俺は、頭を振って断った。
 「ふーん? 俺、蓮に呼ばれてるから、ちょっと顔出してから帰るね」
「そっか、じゃあね」
 そうか、亮平くんは、蓮くんからそんなに連絡がくるんだな。やっぱり、ちょっと羨ましいな。
そう思いながら、靴を履いて、正門へと歩いて行った。
 
 
 
 
 
 「涼ちゃん先生!」
 正門まで後少しというところで、後ろの方から、元貴の呼ぶ声がした。俺は、振り返って、走り寄る姿を確認する。
 「ちょっと、待って…!」
 駆け足で近寄ると、膝に手を当てて肩で息をした。
 「めめが、阿部ちゃん先生、教室に呼んだ、って言うから、涼ちゃん先生も、来ると思って、待ってたのに…」
 はぁはぁと、息を整えながら、途切れ途切れに話した。もしかして、教室からずっと走って来てくれた、のかな。
 「あ、ご、ごめん…。あの…邪魔になる、かな、と思って…」
「邪魔? なんで?」
「いや、あの………」
 先生から受け取った実習ノートを手で弄りながら、下を向く。
 「連絡…なかった、から…」
 自分で言ってしまってから、なんて面倒臭い発言なんだとハッとした。元貴の反応が怖くて、顔を上げることができない。
 「ふはっ」
 元貴の笑い声が聞こえて、つい、顔を上げた。眉を下げて、なんだか嬉しそうに笑っている。
 「ごめん、連絡しようかと思ったんだけど、今日来るってめめから聞いてたから、直接言おうと思ってて」
「直接…? 何を?」
「7月のさ、26日って、空いてる?」
「何曜日?」
「土曜日」
「まだシフト出してないから、バイト休もうと思えば休めるけど…」
「じゃあ、休んで」
「え?」
「お祭り」
 元貴がそう言って、俺は亮平くんが誘われたというお祭りを思い出した。もしかして、元貴も…?
 「お祭り、観に来て欲しいんだ」
「み…え?」
「お祭りのステージでさ、俺、出させてもらう事になって」
「ステージ? あ、もしかして、歌?」
「そうそう。だから、涼ちゃん先生に観に来てほしくてさ」
 あ、ああ。お祭りに一緒に行こう、とかじゃなくて、お客さんとして呼びたかったのか。俺は少し、自分の自惚れを恥じながら、「もちろん」と頷いた。
 「よかった。じゃあ、また時間と場所、送るね」
「うん。ありがとう」
 じゃあ、と手を振って、俺は正門を抜けた。
 「あ、涼ちゃん先生!」
「ん?」
「ちゃんと、浴衣、着て来てね。楽しみにしてる」
 キュッと口角を上げたその笑顔に、俺は心臓が高鳴った。踵を返して校舎へと戻る後ろ姿を、ずっと見つめてしまう。そして、独り言が口を突いて出た。
 「え、浴衣?」
 元貴に浴衣を指定されてしまったものの、そんな物を一人暮らしの男子大学生が持っているはずもなく、今日は大型ショッピングモールの浴衣を扱う催事場に来ていた。広いホールに、たくさんの浴衣が並べられている。
 「浴衣なんて、初めて買うよ…うわ、高!」
「俺、これなんてどうかな?」
 俺が値札を見て目を丸くしている隣で、亮平くんが深緑を基調にして、その全体を万寿菊の模様が大胆に覆っている浴衣を手にしていた。全体に散った黄色い菊の花びらが、花火のようにも見えて、華やかな一枚だ。
 「うわ、すごい、めっちゃいいね、似合うよ絶対」
「ふふ、ありがとう。涼架くんは? 何色が好み?」
「えー…わかんないよ…」
「金じゃない? 金髪先生だったし」
「やだよ、そんな荒れる成人式みたいなカッコ!」
 あはは、と亮平くんが笑う。色か、何色が似合うんだろ、俺って。元貴が好きな色は、なんだろ。ぐるぐると考えながら、ひとつひとつ商品をずらしてその柄を確認していく。
 「あ…これ面白い」
 俺が手に取ったのは、黒を基調とした落ち着いた雰囲気にも見える浴衣だが、黄色で描かれたその模様は、なんとスーパーカーだ。
 「えー、なにそれ、おもしろ」
「ね、すごい、俺これ好きかも」
「いいじゃん、可愛い。…まあ値段は可愛くないけど」
 値札を見て、亮平くんが呟く。俺も値札を覗き込んで、目が飛び出そうになった。
 「ご…!」
「どーする? 他のにする?」
「ぐぅぅ…!」
 しばらく外食を控えて、遊びも我慢すれば、貯金が無いことは、無い…。
 『わ、なにそれ涼ちゃん先生! 良いじゃん、素敵。似合ってるよ』
 これを着た俺を、元貴が褒めてくれる所を想像してしまって、もう手が離せなくなってしまった。意を決して、亮平くんと試着をさせてもらいに店員さんへと頼みに行った。
 試着ブースの中で、男性は広い空間でちゃちゃっと着付けてもらえた。隣で菊の花を纏う亮平くんが、物凄く素敵だ。
 「よくお似合いですよ」
 着付けてくれたミセスな店員さんに促され、鏡の前に立つ。スーパーカーという派手な柄が、派手な髪色と良く合っている気がした。
 「これなら、このまま色落ちして金髪になった方が似合うかもね」
 横から、亮平くんも声を掛けて一緒に鏡に収まった。
 「いいね、お互い。これでいこうか」
「うーん…そうだよねぇ…うー、でも、お値段がなぁ〜…」
 この期に及んで、まだお値段のおかげで購入に踏み切れず、唸り声を上げていると、さっきの店員さんが俺に耳打ちをして来た。
 「…実はこれ、展示品として現品限りで入って来てるものがあって、それだとお値段が半額以下になってるんですけど、いかがです?」
 俺は、目を輝かせて、「ぜひ、お願いします!」と即答してしまった。亮平くんが、あはは、と横で笑っている。良かった、元貴に会う前に、飢え死にしてしまう所だった。
 
 
 無事にお気に入りの浴衣を手に入れて、俺は早速部屋の中に吊るしておいた。まだ7月に入ったばかりだけど、もう既に夏休みが恋しかった。
早く、夏休みになって、早く、26日になれ。
この浴衣を着た姿を、目を細めて喜んでくれる君を、俺はすっごく見たいんだ。
部屋の中で脚を伸ばして座り、両手を後ろに突いて、首を傾けながら、俺は綻ぶ顔を止めもせずに、ずっと壁にかかる浴衣を眺めていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
コメント
97件
更新、ありがとうございます💕 実習終わって、さみしいなと思ってたら、まさかの夏祭り🌟めっちゃ楽しみです〜❣️ そして、じんわり💛ちゃんの浴衣柄が気になり過ぎます🫶笑 先生と生徒から、大学生と高校生、どっちも好きです🤭❣️
夏祭り編あります?!よね!? きゅんきゅんしすぎてにやけが止まりません😇青春してるなぁ~!()
め・め・あ・べ!!!あは、最高です💚🖤私のために書いてくださってありがとうございます🫶(絶対違う)お祭りデート(?)も楽しみです〜! 週末はゆっくり休んでください!私も定期試験があるので頑張ります、、、泣 次の話も楽しみにしてます🥰