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すちはLANの頼みで昔の孤児院に関する記録を調べていたシクフォニの情報網でも手を出せないほど
古くて闇に近い情報
しかしようやく地下経路のマーケットに
流れた紙の束の中から
ある【日記】が見つかった
すちは、仄暗い照明の下でその一冊を丁寧にめくっていく
ー
すち、(ボロボロ……でも、これ……
手書きだ)
ー
──表紙には、タイトルも名前もない
ただ一言、鉛筆で書かれていた
ー
「記録:No.72」
ページを開いてみる
中身はたしかに子どもの手による
日記だった
文字は汚いけれど生々しくて
どこか苦しさが滲んでいた
ー
> 「今日は注射が3回だった
痛かったけど泣かなかった」
>「220番がまた怒られてた。
ふざけしたらしい」
>「123番はまだ言葉をうまく話せない。
でも、220はよく笑うから好き」
>「220番は自分でいるまって名乗って
その子が夜に絵本を読んでくれた」
>「名前って何?って聞いたらお前に も
つけて やるって言ってくれた」
──その一文に、すちの指が止まった
ー
すち、……いるま?
ー
ページをめくるたび、“その子”と“72番”の
やりとりが増えていく
> 「いるまは僕の手をつないでくれた」
>「いつ名前つけてもらえるかな?」
>「いるまがいると123番はすごく
優しくなる」
>「やっと名前つけてくれたなつだって さ
僕の番号の72からなつだって」
ー
すち、ッ──!!
ー
すちは大きく目を開けた
記録で220番はいるまで72番はなつだと
いう ことがわかった
─日記の中で“なつ”という名前を
呼び始めたのはいるま
すちは、膝にその日記をぎゅっと抱えるようにして呟いた
ー
すち、……これ、確定じゃないけど──
少なくとも“なつ”って名前をもらった子が
いたのは、間違いない
ー
そして、“いるま”はそこにいた
すちは、しばらく黙っていた。
ー
すち、ひまちゃん──
君、本当に忘れちゃったんだね。