そもそも 私には本心なんて出せる訳ない
だから せめてもの気持ちで偽っているだけだ
気がつけば お弁当の中身は無くなっていて
空っぽな私にそっくりだった
もし この気持ちを表すのなら
きっと『喜怒哀楽』なんかじゃなくて
〖透〗という文字があうだろう
「…ぁ…次の授業の準備しなきゃ」
次の授業は確か 『歴史』だった筈
「…また悲惨な日本の過去を教えられるのか」
正直憂鬱だ
赤黒い血も 日本の戯言も 銃音も
全部好きじゃない
どうせなら 地理の方がまだマシだったな
愚痴を心の中に留めながら
手早くお弁当を片付けながら
歴史の教科書やノ-トを机の中から取り出す
そういえば 予習し忘れちゃってたな…
今からやっても間に合うかな?
そんな風に思考を巡らせ
自主用のノートを机から出し 机の上に広げる
「えぇっと…確か……」
前の授業では 日本と露西亜の戦争
日露戦争を教えられた筈…
「……日露戦争…か…」
戦争で亡くなった人達は 数え切れないほどで
その魂達は 星になってゆく
「……本当に戦争なんてつまらない…」
そんな 私の呟きも
他人から見れば ただの戯言なんだろうな
「ーーーからして 日本は_」
先生が教卓で 淡々と喋っていく
「(…つまらない)」
過去の事を振り返ってはいけないように
日本の昔を今から学び
そして二度と同じ過ちを犯さないようにする
そんなのただの口約束と同じだ
行動で示せれた方がずっと良いのに
「 それでは 蒼唯さん この文を読んで下さい」
「分かりました」
笑顔を貼り付け
教科書に書かれている文を 読み出す
「ーーーは ーーーーとしての」
嗚呼 本当に なんて
「ん~…やっと終わった」
そんな言葉を小さく呟き
歴史の授業で必要な道具をしまう
「…それにしても」
「「日本の過去って残酷だなぁ」」
不意に誰かと声が重なった
声のした方向を見ると
「お? 蒼唯さんじゃん」
猫のような仕草を見せながら
私の顔を見るのは
同じクラスメイトの
〔青沙偽 詩空 〕だ
性別は女の子っぽいが よく”分からない”
そう思いながら彼の顔をじっと見つめていると
彼が不思議そうに首を傾げ
「…? なぁに? 蒼唯さん
そんなにボクの姿に見惚れちゃった?」
そう言いながら
にひっと小悪魔のように笑う彼は
なんだか同級生とは感じられなかった
「…ふふっ そうかもね」
私もにこっと笑ってから 彼を見詰め返す
すると彼の顔が少しだけ赤みがかり
「ふぅ~ん……そうなんだぁ~」
と恥ずかしそうに瞳を揺らした
それに腹が立ったのか 彼が仕返のように
私にこういってきた
「…そ~だ 蒼唯さん 今度一緒にお茶しない?」
いわゆる ナンパだ
「おいおい 詩空! 抜け駆けすんなよ!」
「俺らも蒼唯とお茶行きてぇ~!」
「駄目駄目! ボクが最初に誘ったんだから!」
なんて愉しげに口喧嘩をしている
「いいよ」
一瞬 教室が静まり返り 皆の視線が突き刺さる
その中 彼が「へ?」と腑抜けた声を出し
私の方を向いた
私は精一杯の作り笑顔を浮かべ
「いいよ 今度一緒にお茶行こ」
と何気に言った
その瞬間 教室から沢山の歓喜と
嘆きが一斉に放たれた
【”今度なんて” 嘘だって知ってるから】
私は 静かに笑みを浮かべ
次の授業の準備をした
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