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いつか壊れる、不思議な人形___
それはとても大きくて、外見も内面も人間にそっくりだ
人間にそっくりとは、目には光があり、表情がころころ変わり、痛みを感じ、心を持っているということだ
それだけ人間に近い人形には、一つ決まりがあった
__どんな人形も、いつか必ず壊れてしまうということだ__
壊れるというのは、動かなくなってしまうことであり、体の一部が無くなることであり、心がなくなることでもある
体がバラバラにはならないが、一度壊れてしまうとすぐに欠陥品扱いになり、世から消えるのが常だ
このような人形は、どこにでもあるものではない
貴重でもあるが、人は失ってからそれに気づき、後悔を繰り返すのだ
貴重だと気づかない人は、人間と同じように接し、挙げ句の果てには傷つける…
そのせいで、10年以上生きた人形は、未だ存在しない
そう思われていたのだ …今日までは
それは、壊れた人形と関わりを持っていた者や、人形を造る者に、瞬く間に広がった
___10年以上生きている人形が居るという事実だ___
人形には、造られた年月日がある 人間の誕生日と同じようにだ
その人形は、もう少しでさらに歳をとるらしかった_まだ10代ではあるが_
人形のことは世間でも知られるようになり、皆、その人形を探し回った
しかし……最初に事実を知った者さえも、その人形がどこにいるのかを知らなかったのだ
人形を造った記録はもちろんある
だが、この未来を予測しなかった人間は、人形の見た目などは記録していなかった
そして人形は…壊れた時に初めて人形だとわかるのだ
人間のようにまあまあ上手く生活することができる人形は、人ではないとバレてしまうことは、ありえなかった
こうして人々は、人形探しを諦めたのだ…
今この瞬間も、人形は「人」として生活している
この人形がもし近くに居たなら、手を差し伸べたいと、私は思う___