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*.ある満月の夜
優しい月明かりに照らされた川のせせらぎに
ただ当たり前のように
眺めていた
その横をとある男が通る
ふわっと
鼻をくすぐる匂いに誘われる
その男の手を思わず手に取る
「太陽の香りだ…」
またその手を取られた男も思う
「綺麗な人だ」
月明かりが、2人を小さく照らしていた*.
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「…」
「…」
「…あ、ご、ごめん
つい、太陽の匂いがした気がして」
「…あ、い、いえ!
かと言う私もあなたの綺麗な顔に見とれてい たので」
「いやいや、綺麗だなんてそんな」
「あの、名前聞いてもいいですか?」
「俺はレトルト。 貴方は?」
「俺はキヨっていいます」
「キヨくんね、」
「レトさん、あn…」
「行かないで」
「え、?」
「もう少し一緒に居たい」
レトさんの瞳が少し揺れる
そんなことを言われて誰が断れるのだろうか
「お、俺も…居たい」
レトさんの目が少し見開く
「ほ、ほんとにっ?!」
「い、居てくれるのっ、?」
「え、う、うん 」
何故かとても驚いていた
これは何かしらの奇跡かもしれない
そう思ったから
「なら、いい所に連れてってあげるよ」
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そういい、レトさんは俺の手を優しく握った
それに少しどきどきしながら、チラリとレトさんを見る
白い着物を1枚羽織っているだけだからか
とてもスラッとしていて
横顔はシュッとした鼻が月明かりに照らされていた
2人を添えるような風が
レトさんの髪を撫でた
あぁ、綺麗だ
からころとレトさんの下駄が橋の木にあたっている音が心地よい
俺は紺色の着物を1枚と草履
一般市民のごく普通の格好
なのに何故俺を引き止めたのか
こんなに綺麗なら、もっとたくさんの人に好かれるはずだ
それに、“太陽の香り”って
どういうことだろう
そんなことを考えていると
「着いたよ」と優しく問いかけてくれた
はっ、として前を見た瞬間
「わぁぁぁ」
思わず声が漏れてしまった
だってそこには
1面海で山も建物もない地平線が広がっていて
月明かりできらきらと光る海面が星のように
眩しかったから
「こ、こんなに綺麗だなんて知らなかった」
「ふふ、よかった」
隣で小鳥のように微笑んだ顔はとても静かだった
「ねぇ、キヨくん」
「キヨくんは家族と住んでるの?」
ぴくりと肩がゆれる
「…うんん、家族はみんな俺を捨てたんだ」
「お前は一族の恥だって」
「追い出されちゃった」
ははは、と苦笑いをして見せる
何故追い出されたかは未だに分からない
でも、家族との思い出は思いつかないほど
もうとっくに切り捨てていた
「そっか、なら今は外で過ごしてるの?」
「うん、まぁでも、なんとか生きていけるよ」
「…ならさ」
「俺のところ、来る?」
えっ、と声にもならない声が漏れる
優しく微笑みかけるその顔は、どこか切なさを感じさせた
ただ、食べる物も尽きていた
レトさんの服装からして、そこまで偉い人では無いのだろうと考え
「うん」
と2つ返事で答えた
今日の満月はいつもより少し大きく感じた
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝