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────プロローグ
『高橋茉奈果は、”まんなかまなか”』
誰が最初にそのあだ名で私を呼んだのか、
今になっては覚えていない。
たしか、中学二年生になったばかりの頃。
保険の授業で、前の週に行われた
健康診断の結果が配られた。
それをもとに、先生が中学二年生の平均身長や
体重について話をしていて、
自分のデータと比較することになった。
正確な数値は覚えてないけれど、
その時の私の身長と体重がまさしく
平均値だったのだ。
それに気づいた隣の男子が
おもしろがって騒ぎ出し、その話題が水面に小石を落としたように広がっていった記憶がある。
ひとつ前の授業で、国語のテストが返却され、
『平均点は六十八点。高橋がまたその点数だったな』
と、先生が笑い、私に ”まんなか” という印象が残っていたのも災いしたと思う。
誰かが私を『”まんなかまなか”』と命名し、
その愛称は瞬く間にクラスに浸透した。
普段は名前で呼んでいた友達さえも、
テストや体力測定で平均点が発表されると、
おもしろがってそのあだ名で呼んできた。
そして、あだ名にふさわしくいつだって私は、
平均点のあたりまえをさまよっていた。
たまに平均点以下になると、『まんなかまなからしくない』と批判されることもあった。
そのあだ名で呼ばれる時、私はいつも笑っていた。
恥ずかしさと悲しい心を隠して、
それでも笑うしかなかった。
どんなに頑張っても平均点を大きく上回ることはなく、私は『まんなかまなか』のまま、中学校を卒業した。
あだ名をつけられてから、もうすぐ三年。
私はまた、『まんなかまなか』のまま、
楽しいフリをして笑っている。
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明日から、第1話スタートです。
お楽しみを…。
コメント
1件
誤字っている所がありましたら… すみません🙇💦