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地獄のインタビューを終え、二人は無言のまま楽屋へと戻った。渡辺はソファにドカッと腰を下ろし、これ見よがしにスマホをいじり始める。
宮舘はそんな渡辺を一瞥することもなく、鏡の前で静かにメイク落としの準備を始めた。重く、冷たい沈黙が、狭い楽屋を支配する。
その時だった。
「お疲れ様でーす!」
ガチャリ、とドアが開き、底抜けに明るい声と共に、目黒蓮がひょっこりと顔を出した。どうやら、別の仕事を終えて合流したらしい。
楽屋に充満する異常な空気に全く気づかないまま、目黒はにこやかに二人に歩み寄る。
「あ、舘さんと翔太くん。インタビューだったんですよね?お疲れ様です」
渡辺は、スマホから顔も上げずに「…おー」と気のない返事をするだけ。
宮舘は、鏡越しに「お疲れ様」と短く返した。
明らかに、いつもと様子が違う。しかし、生真面目な目黒は、それに気づかない。
「今日のインタビュー、どんな感じでした?ファンの人たち、ゆり組の対談めっちゃ楽しみにしてましたよ」
無邪気な、そして最も残酷な質問だった。
その一言に、渡辺の指がぴたりと止まる。
宮舘のコットンを持つ手も、一瞬だけ宙で固まった。
先に口を開いたのは、渡辺だった。
「…別に。いつも通り」
その声は温度がなく、投げやりだった。
その素っ気ない態度に、さすがの目黒も「…え?」と戸惑いの表情を浮かべる。
するとすかさず宮舘が、鏡越しに完璧な笑顔でフォローを入れた。
「とても、有意義な時間だったよ。俺たちのこれまでと、これからについて、改めて考える良い機会になった」
その完璧な大人の対応。しかし、渡辺にはその言葉が白々しく聞こえて仕方がなかった。
(有意義な時間…?よく言うぜ…)
心の中で、再び黒い感情が渦巻く。
目黒は、二人のあまりの態度の違いに、ようやく「あ、もしかして俺、なんかまずいこと言いました…?」と気づき始める。しかし、もう遅い。
宮舘の「完璧な対応」は、結果的に渡辺の苛立ちを増幅させ、二人の間に流れる溝を、さらに深く、そして冷たいものへと変えてしまったのだった。罪のない後輩の登場は、皮肉にも、二人の関係をより一層こじらせる結果となった。