コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
涼さんは優しくていい人なのに、力のある〝男の人〟だ。
私は朱里ほど細くないはずなのに、涼さんの大きな手で腰を掴まれると、自分がとても細くなったように思える。
それに、体重だって軽くないのに、こんなにたやすく引きずられるなんて……。
涼さんと一緒にいるほど、自分が彼に比べてずっと非力な〝女〟なのだと思い知らされる。
その時、少し開いた私の口内に涼さんの舌が侵入し、舌先同士が触れ合う。
ピクッと体を震わせると、涼さんは私を宥めるように優しく頭を撫でてきた。
彼の舌は柔らかく、ヌルヌルと舌同士を触れ合わせているだけで、気持ちがフワフワしてくる。
(あれ……、いいのかな。こんな……)
私はボーッとした意識の中、口内に挿し込まれた舌をチュッと吸う。
キスをしながら、涼さんは私の首筋から肩、二の腕を触れていく。
とても大切なものを確かめているような手つきなのに、私はゆっくりと肌を撫でられて息を荒げ、胸を高鳴らせる。
「……胸、触ってみても大丈夫?」
キスの合間に涼さんが囁いて尋ね、それに私はコクンと小さく頷いて返事をした。
すると涼さんは大きな手でパフッと私の胸を包み、じわりと指先に力を入れてゆっくり揉んでいく。
「ん……っ」
私は慣れない感触に思わず声を漏らしてしまい、気にしていた事を打ち明ける。
「……あ、あの……っ」
「ん?」
「……胸、小さくてごめんなさい……っ」
きっと男の人は、朱里みたいに揉みごたえのある胸の方がいいんだろう。
そう思うと、ささやかサイズが申し訳なくなってしまう。
「どうして謝るの? 俺は恵ちゃんの胸なら、どんな胸でも好ましいけど」
涼さんならそう言ってくれると思っていた。
分かっていたけれど、どうしても劣等感があり落ち込んでしまう。
視線を落として黙っていたからか、涼さんはチュッと音を立てて額にキスをしてきた。
「大事なのは恵ちゃんが気持ち良くなってくれる事だよ。俺が満足するかどうかなんて、どうでもいいんだ」
「でも……」
言いよどむと、涼さんは少し照れくさそうに笑う。
「柔らかくて気持ちいい事に変わりはないから」
涼さんの言葉を聞いた私は、ちゃんと〝女〟として捉えてもらっていると知って、心から安堵した。
彼は言い含めるように言う。
「恵ちゃん、いい? これからセックスする事もあると思うけど、俺の気持ちよさなんて気にしなくていいんだからね。男はある程度気持ち良くなれば射精する。でも慣れていない女性ほど、気持ち良くなって絶頂する事は難しい。だから俺は恵ちゃんの快楽を重視していきたい。女性の気持ちや感覚を無視して、男だけが気持ち良くなって勝手に達くなんて、そんなのセックスじゃない。ただの人を相手にしたオナニーだ。俺はそんな事はしたくない。……だから、俺の事は気にしないで」
どこまでも優しい涼さんの言葉を聞くと、泣きたくなってしまった。
(どうしてこの人はこんなに優しいんだろう。こんな素敵な人の相手が本当に私でいいのかな)
痴漢騒動で男性不信気味になっていたのは言わずもがな、歴代彼氏もどきも、悪い人ではなかったけど魅力的とは感じられず、長らく天敵認定していた田村はクズ男だった。
今までの私の人生に〝まともな男〟はおらず、篠宮さんだって朱里にとってはスパダリで運命の人だけど、付き合うまでの過程を知っている私から見れば、普通とは言いがたい。
なので涼さんと話していると、「こんないい人がいる訳がない」と何かのバグだと思ってしまう自分がいた。
不安そうな顔をしていたからか、涼さんは私の頬を撫でて微笑みかけてくる。
「信じられない? まだ怖い?」
正直、まだ信じ切れていないし、怖い。
けど、前に進まないと。
「……少しずつ、ゆっくり」
先ほどの言葉への回答になりきれていない事を口にしてしまったけれど、涼さんはちゃんと察してくれたみたいで、「ん」と頷いた。
「触るけど、もし怖かったら言って」
「はい」
頷いたあと、涼さんは私のパジャマの裾から手を入れ、キャミソール越しに胸を揉んできた。