第5.5話「新たな世界」
🚀 シーン1:戦いの余韻
森の奥深く、ゼインは荒い息をつきながら石の上に腰を下ろした。
ヴェール・バインドの襲撃をなんとか退けたが、まだ身体のあちこちが痛む。
「……これが、碧族の世界か」
ジャケットの裾を翻しながら、腕に刻まれた碧色の模様を見つめる。
「おい、しんみりすんなよ」
ナヴィスが、青い瞳を光らせながらゼインの隣に座る。
その無造作なくせ毛が、わずかに風に揺れていた。
「とりあえず、今日くらいはのんびりしようぜ」
「のんびり……って、お前、本気で言ってんのか?」
ゼインが眉をひそめると、ナヴィスは肩をすくめる。
「ヴェール・バインドが次に来るまで時間はある。だったら、今のうちに“碧族の生活”を知っておくのも悪くないだろ?」
🚀 シーン2:碧族の街へ
ゼインはナヴィスに連れられ、碧族の街を歩いていた。
そこは、まるで近未来都市のような不思議な空間だった。
建物は淡い碧色の光を放つ構造物で統一されており、まるで空間そのものが呼吸をしているかのようにゆっくりと脈動している。
「お前ら……こんなところに住んでたのか」
ゼインが周囲を見渡しながら言うと、ナヴィスが笑う。
「ま、そうだな。でも俺らの街は、普通の碧族の暮らしからするとちょっと異質かもな」
街の中には、碧族の店や屋台が並んでいる。
中には、宙に浮くフラクタル製のオブジェや、自動で動く料理ロボットも見える。
「これは……普通の人間には絶対に見せられねぇな」
ゼインが呆れたように言うと、ナヴィスは頷いた。
「だから隠れてるんだよ。ここは碧族専用の区画。人間の社会とは完全に隔離されてる」
「……どうやって?」
「フラクタルの結界さ。ここに足を踏み入れた時点で、普通の人間には存在しない場所に見えるようになってる」
ゼインは改めて周囲を見渡した。
碧族は、こうやってひっそりと生きていたのか——。
🚀 シーン3:直営の店へ
ナヴィスに連れられ、ゼインは碧族直営の雑貨店へ入った。
店の中は、まるでラボのような雰囲気だった。
カウンターには、透明な碧素で作られたガジェットや、未知のフラクタルアイテムが並んでいる。
「ほら、これ見てみろよ」
ナヴィスが手に取ったのは、碧素で作られたスマホ型の端末だった。
「これが、碧族用のスマホ……か?」
ゼインが手に取ると、画面に淡い青白い文字が浮かび上がる。
——《すずかAI起動》
「……お前ら、AIまで作ってんのかよ」
「当然。碧族の生活を支えるために、情報管理は必須だからな」
ナヴィスが笑う。
「ま、すずかAIのことはあとでじっくり教えてやる。今は、適当に見て回ろうぜ」
ゼインは呆れつつも、店内のアイテムを眺めた。
人間社会とはまったく違う、碧族の文化——。
自分はこれから、この世界で生きていくことになるのだろうか?
🚀 シーン4:碧族の社会
店を出ると、広場では碧族の子どもたちが走り回っていた。
彼らは無邪気に、フラクタルを使って宙に浮く光の球を飛ばし合っている。
「……普通に“人間”と変わらねぇな」
ゼインが呟くと、ナヴィスが頷いた。
「だろ? 俺たちは“人間”じゃないって言われるけど……生きてるってことに変わりはねぇ」
ゼインは少し考えた後、静かに言った。
「お前らは、人間をどう思ってるんだ?」
ナヴィスは少し黙った後、ゆっくりと答えた。
「……正直なところ、複雑だな」
「……?」
「碧族には色んな考えのやつがいる。人間を敵視するやつもいれば、共存を望むやつもいる。でも、ほとんどの碧族は“放置”が一番だと思ってる」
ゼインはナヴィスの言葉を反芻する。
碧族は、人間を支配しようとも思っていない。
ただ、自分たちの世界を守りながら、ひっそりと生きているだけなのだ。
(……なのに、ヴェール・バインドは俺たちを消そうとしているのか)
ゼインは拳を握った。
🚀 シーン5:束の間の安息
「……さて、そろそろ戻るか」
ナヴィスが伸びをする。
ゼインは深く息を吐いた。
「まさか、こんな風に碧族の生活を知ることになるとはな」
「まぁ、お前もこれから“碧族の一員”として生きていくんだから、慣れとけよ」
ナヴィスが笑いながら、ゼインの背中を叩く。
ゼインは苦笑しながら、夜空を見上げた。
碧色の光が、穏やかに揺らめいている。
——束の間の休息は終わり、再び戦いの日々が始まる。
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