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私は少し動揺しながらもそう返した。
駅に着くと、改札付近で彼は急に立ち止まり、真剣な顔で私を見つめて言った。
「俺さ……桧山さんのこと好きなんだよね」
「…え?!」
そんな突然の告白に私は思わず固まってしまった。
「だから、もしよければ俺と付き合って欲しいんだ。駄目かな?」
「えっと……」
私は動揺していた。まさか太陽くんに告白されるとは思ってもみなかったからである。
「今日は、それを伝えたかっただけだから…いつでもいいから返事待ってるね」
「あっ、太陽くん……!」
私は呼び止めようとしたが、彼はそのまま改札を通ってホームの方へと走っていってしまった。
どうしよう……太陽くんは良い人だけど、急すぎて、頭が追いつかない。
その日は頭の中はそのことばかりで、あまり眠れなかった気がする。
翌日、一通りの少ない立入禁止という張り紙が掛けられた階段の前で
「はぁ……」
思わずため息がこぼれた。
すると突然後ろから声がした。
「おい」
「え?五木…?」
「お前昨日、菅野と帰ってたろ」
「あ、うん。そうだけど……」
「あいつのこと、好きなんかよ」
「はっ、はあ?!そんなわけないでしょ!ただ、話してみたかったって言われただけで」
「へぇ…」
五木はなんだか不機嫌そうだ。
「それに、太陽くんはいい人だよ…」
「なんだそれ、アイツになんか言われたんか」
「そんなんじゃないし、五木には関係ないこと…!」
「ま、世間話ってとこか。アイツがお前のこと女として見てるわけねぇしな」
「……っ、告白、されたの」
「は……?」
「だから、告白されたの!でも、結構戸惑ってて…昨夜も太陽くんのことばかり考えちゃって、返事はいつでもいいって言ってくれたけど…だって、太陽くんに好きって言われるとか思ってもみなくて…!」
すると突然五木は私の両腕を掴み、私を横の壁にドンッと押し付けてきた。
「なっ、なにするの…!」
「お前、あんま他の男に尻尾振ってんじゃねえぞ」
その低い声に思わずドキッとする。
「なんで、五木にそんなこと言われなきゃ…」
「「てか、いい加減離して!」と声を荒らげようとしたその時、暖かい唇の感触が私に衝撃を与えた。
五木は私の唇を強く奪い、快感と困惑が、私の心を掻き乱した。
「あ……」
そして五木は名残惜しそうに唇を離し、私を解放すると、私の目をじっと見て言った。
「……分かったかよ」
「……っ…か、からかうのもいい加減に…」
すると五木は目を伏せながら答えた。
「…からかってねえ、だから他の男のとこ行くなや。お前のこと本気で好きなやつがここにいんだろうが。」
「は、はあ?!うそ…え、冗談でしょ…っ?」
私が聞き返そうとしたそのとき、チャイムが鳴り響き、彼は先に教室に戻って行った。
五木にキスされるなんて、思ってもみなくて、私は呆然と立ち尽くしてしまう。
が、なんとか私も急いで教室に向かい、席に着く。
暫くして担当の先生がきて、授業が始まった。
どうしよう、授業が始まるというのに、五木のせいで全く頭に入ってこない。
そんなとき、携帯に一通のメールが届いた。
送り主は……太陽くんだった。
「明日の放課後、屋上に来て」
短い文だったけど、きっと告白の返事を聞きたいんだと悟った。
そして次の日の放課後
屋上に行くと既に太陽がいた。
「来てくれたんだね」
「うん……」
「返事、聞かせてくれるかな?」
「……ごめんなさい!」
私がそう言うと彼は一瞬驚いたような顔をしたがすぐに笑顔になって言った。
「そっか……でも、雫さんならそう言うと思ってたよ」
「え……?」
「雫さん、犬神が好きなんでしょ?」
「え、いや違うよ!?あいつは本当に……生意気な幼馴染ってだけ、で…」
「昨日、二人がキスしてるところ見えちゃったんだ」
「……っ!」
私が動揺していると彼は続けて言った。
「だから、犬神が雫さんのこと好きなのはなんとなく分かってた。でも、ごめんね?俺、雫さんのこと……諦めたく無い」
「え…っ」
すると突然彼は私の手首を掴み強引に引き寄せて壁に押し付けた。
そして至近距離で私を見て言った。
「犬神より、俺を見て……?」
そのときだった。屋上の扉がもの凄い勢いと音を立てて開かれた。
「菅野、お前……っ」
五木だった。
そして太陽くんと私の間に割って入る。
「コイツに気安く触んな」
一瞬驚いたような顔をした太陽くんは、また笑顔になって
「まぁいいや。雫さん、いつでも僕は待ってるからね」と最後に一言付け足し、胸の前で手を振って、屋上から出ていった。
残された私と五木の間に沈黙が流れる中、五木と目が合い、先に口を開いたのは五木だった。
「…で、なんであんなことになってんだよ」
「そ、それは……」
私は今までの経緯を説明した。
「この前の告白断ったんだけど……そしたらあんたとキスしてるとこ見ちゃったって言われて…」
すると五木は深いため息をついて、言った。
「……お前さ、無防備すぎんだわ。俺がいなかったら今頃どうなってたと思ってんだ?」
「な、なんで私が説教されなくちゃ!…まあ、五木が来てくれて助かったけどさ…」