『……ひま』
何度目かのため息交じりの呟きを落とす。
あの後、無事ゼリーを完食したはいいものの、やることが全く無い。退屈すぎて無意識に部屋の中をウロウロとし始める。
─ガチャン
『きゃっ!?』
ダラダラと宙を見つめていた私の耳に、いきなり金属が重なり合うような鋭い音が耳を貫く。それと同時にドタドタという乱暴な足音も。多分、今扉の前に居る。
『……?』
いきなりの事に体が強張る。
「○○?」
ギシッと鈍い軋んだ音が聞こえてきたと思った瞬間、扉の開いたすき間からお馴染みのあの赤い服を身に纏ったイザナさんが顔を出した。
『…なぁんだ』
音の正体はイザナさんだった。
そう理解すると強張っていた体の緊張が解け、ホッと胸を撫でおろす。安心感の波が胸につっかえていた不安を洗い流す。
「…良かった、ちゃんと留守番してくれたンだな。」
そう、どこか虚ろ気な声と表情をしているイザナさんが安心したように呟く。
『…イザナさん?』
空白というのが相応しいほどの虚ろな表情をしたイザナさんに、裸足のペタペタという足音と共に近づく。あともう一歩でぶつかってしまうというところで足を止め、おかえりなさいと言葉を紡ごうと口を開いた瞬間。
『え』
突然勢いよく抱き着かれ、重力に従い体が後ろへと倒れてこんでしまう。咄嗟に手で体を支え、体の衝突の直撃は免れたが支えに使った手のひらが焼ける様に痛む。
痛みを我慢し、肩に埋められたイザナさんへ意識を向けると線香の火の匂いが香水か何かの様にイザナさんの服から漂っていることに気づいた。
墓参りにでも行っていたのだろうか、何か嫌なことでも思い出してしまったのだろうかと考えを巡らせている私にイザナさんはぼそりと言葉を零した。
「…なぁ、オマエはオレの事好き?」
突然、力の抜けた声でそう問われる。
イザナさんのその言葉が合図に首を絞められた時の光景が妙にリアルにフラッシュバックのように頭を駆け巡る。力任せに締め付けられたあの苦しさが、チカチカと視界が段々と濁っていくあの恐怖が昨日のことのように脳裏に焼き付いている。
『……好き、です…』
震える声で吐くようにそう答える。声というよりも鳴き声の合間に出る嗚咽に近かった。
疑問型だけどイザナさんはきっとこれ以外の言葉を受け付けないだろう。
「…オレも好き。大好きだよ。…もし逃げたりしたらオマエ殺してオレも死ぬから。」
スラスラと流れてくる呪文のような言葉にヒュッと空気が喉を掠る。
恐怖で体が強張り、抱きしめられているというのに体から段々と暖かさが消えていく。
「分かった?」
虚ろな目で見つめられ、頭を無理やり下げられたようにコクンと1度頷く。
こんなに怖いのに。
なんで私は逃げないんだろう。
日々日々増える疑問の塊がまた1つ心の中に埋まった。
続きます→♡500
この話が終わったら誰の話書こうかな🤔💬
誰がいいかコメントで教えて下さい🙇♀💞
コメント
7件
またイザナのお話見たいです! ほんっとに毎回見るの楽しみすぎる😭
いつも見てます このお話が終わってもイザナのお話書いて欲しいです😍😍