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「さようですな、私もシスター・ミレはとても素晴らしい女性だと思いますよ」


私とリビアさん達の会話に横から入り込むように声をかけられました。


気配を感じなかったのですが……びっくりして振り向けば旅商人がにこにこ顔で私達の側に立っていました。


何となく作ったような笑顔です。

胡散臭さを感じた私は、この男性を少し警戒しました。


「おや? ジグレじゃないか」

「お知り合いなのですか?」

「度々ここで商いをさせていただいている行商人の一人ジグレと申します。お見知りおきを」


気安いリビアさんの態度に私の警戒が弛んだと見たのか、ジグレと名乗る旅商人は私達の輪の中へ入ってきました。


「いやぁしかし本当にシスターはお美しい。私も色んな国で商いをしてまいりましたが、あなたほど美しい方にはお目に掛かったことがありません」

「それは言い過ぎですよ」


ジグレさんの褒める言葉の裏に貴族達との騙し合いの時と同じ臭いを感じました。リアフローデンの人達の率直な褒め方と何か違うのです。


「いやいや、アシュレインの王都にも寄りましたが、少なくともこの国一番なのは間違いありませんよ」

「ジグレは王都にいたのかい?」

「ええ、そうなんですよリビアさん。それでですね……」


それからジグレさんは奥様連と王都での話で盛り上がり、色々な情報を提供してくれました。それに対してどうにもジグレさんは怪しいと私の勘が警鐘を鳴らしています。


ですが、他から隔絶されているリアフローデンにおいて商人が運んでくる情報はとてもありがたいのです。私も黙ってジグレさんの話に耳を傾けました。


「王都でちょうど王太子妃のお披露目がありまして」

「へぇどうだったい?」

「うちのシスターを振って添い遂げた女なんだろ?」

「国一番の美姫との評判でしたが……正直に申し上げてあれは微妙でしたなぁ」


それからエリーに対するジグレさんの辛辣な評価が続きました。


清純で可憐と聞いていたのにドレスが成金趣味だとか

可愛い容姿と言ってもざらに見られる程度だったとか


さらにジグレさんは王都でのエリーの噂を次々と披露していきました。


「それから聖女なのに聖務をされている姿を見た者がいないそうです」

「うちの聖女様とはえらい違いだね」

「いえ、聖務はひけらかすものではありませんから、私も王都に居た頃には同じく姿を見られてはいなかったと思いますが……」


これに関しては私も耳の痛いところです。


王都に居た時にはそれで民衆からそっぽを向かれてしまったのですから。


「シスター・ミレは奥ゆかしいですね」

「うちのシスターは真面目だからねぇ」

「ですが、彼女の場合は本当に聖務を怠っているみたいですよ」


ジグレさんの話ではエリーは本当に遊び惚けているそうです。そのせいで、王都周辺は浄化もままならないそうで、近郊には魔獣が多数出没しているとか。


その為、王都での彼女の評判は芳しくないそうです。

以前はあんなにも民衆から支持されていましたのに。


「まぁ今の王太子妃についてはおおよそわかったよ」

「他には何か変わった話はないのかい?」

「変わった話ですか……」


奥様連の無茶振りに苦笑いしながら、ジグレさんは思案する素振りをみせました。


「そうですねぇ……かなり力のあった貴族が一晩で没落したというのはどうでしょう?」

「一晩でですか!?」


貴族の盛衰は世の常ですが、さすがに予兆なしで一晩で潰れるのは尋常ではありません。


「まあ、一晩というのは噂話を盛り上げるための誇張みたいですが、実際あっという間だったらしいですよ」


そしてジグレさんの次の言葉に私はそれ以上に驚愕したのでした。


「それで潰れた貴族というのが、伯爵位で最も隆盛を誇ったクライステル家なんですよ」

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