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(誰だっけ……)
表示された名前を見て、亜佑美はぼんやり瞬きをする。
(藍島 朝陽……?)
『あの……木葉さん? どうしましたか?』
そこでようやく思い出した。
合コンにいた、例の年下の男だと。
「……っ、あの……」
本当は“間違えました”と言うつもりだった。
けれど喉が乾いて上手く言葉にならない。
『大丈夫ですか?』
再び掛けられた声が少しだけ強くなり、それは明らかに心配しているよう。
「……ねつ……出て……」
『熱があるんですか!?』
「……う、ん……」
まともに返事もできない亜佑美に、朝陽は暫く黙った後で遠慮がちに口を開いた。
『あの……もし迷惑じゃなければ、今から伺ってもいいですか?』
「……え?」
『木葉さん、一人暮らしですよね? 地元も九州って言ってたし……俺で出来ることなら何でもするので』
それは迷いのない声だった。
弱っている今の亜佑美には、その言葉が妙に頼もしく聞こえる。
「……おねがい……」
時間が経つにつれて辛くなった亜佑美は藁にもすがる思いで途切れ途切れに住所を伝えると、そのまま通話を切り、スマートフォンを取り落とすようにしてベッドへ沈み込む。
(藍島、朝陽……だっけ……)
合コンで見た、頼りなさそうな姿をぼんやり思い出す。
勢いで住所を教えてしまったことを少しだけ後悔したが、今はもう考える余裕も無く、そのまま意識は暗闇へ落ちていった。
それからどれくらい眠っていたのか、遠くで鳴るインターホンの音に、亜佑美はゆっくり目を開けた。
「……は、い……」
ふらつく身体を無理やり起こし、玄関へ向かう。
そして扉を開けた瞬間、
「大丈夫ですか!?」
そこには息を切らした朝陽が立っていて、両手にはコンビニ袋がいくつも下がっている。
「すみません、寝てましたよね? あの、飲み物と、それから消化に良さそうなものと……あと薬も買ってきました」
矢継ぎ早に言いながら袋を差し出す朝陽の姿は、合コンの時とはまるで別人だった。
「あの……わざわざ、ありがとう……」
「いえ。それじゃ、俺はこれで」
そう言って帰ろうとする朝陽に亜佑美は少し驚いた。
(上がら、ないんだ……)
まあ、風邪を移しても申し訳ないし、移りたく無いのかもしれないと、亜佑美は袋を受け取って部屋へ戻ろうとした時、
「あっ……」
手から袋が滑り落ちてしまう。
それを拾おうとした瞬間、熱でふらついた身体がそのまま傾いた。
「危ない!」
袋が落ちる音に気付いて戻ってきた朝陽が咄嗟に支える。
「大丈夫ですか!?」
強い腕に抱き起こされた亜佑美は苦しそうに息を吐いた。
「すみません、少しだけ失礼しますね」
そう断ると、朝陽は亜佑美を抱き抱えたまま部屋へ入る。
そして、亜佑美をベッドへ寝かせた後、すぐにキッチンへ向かい買ってきたものを手際よく並べ始めた。
飲み物を冷蔵庫へ入れ、薬を準備する。
その動きは驚くほど自然だった。
「あの、これ食べられそうですか?」
ゼリーとスプーンを差し出された亜佑美はぼんやり朝陽を見る。
「……ありがと」
小さく呟くと、朝陽は安心したように笑った。
「よかった……安心しました」
その笑顔はどこか幼くて、それなのに妙に頼もしい。
「ここに置いておくので、食べ終わったら薬飲んでくださいね」
ベッド脇へ水と薬を置き、朝陽は再びキッチンへ戻っていく。
#溺愛
コメント
1件
うわ、2話目にして既にこの距離感…!合コンであんまり印象残ってなかった朝陽くんが、熱で弱ってる亜佑美さんにここまで献身的になるの、ギャップがエグい。特に「上がらないんだ…」って亜佑美がちょっと拍子抜けしてるとことか、実際に倒れた時に迷いなく抱きかかえて動く朝陽のギャップ萌えが凄い。買い出しの品揃えも手際も良すぎて、実はこういうシーン何度も経験済みなんじゃ…?って気になる。続きめっちゃ気になるわ!