なんで…なんでこんなことするの?
大切な人たちが、血まみれで倒れてる。
私の…私の大切な人たちを奪って…
絶対…絶対復讐してやる…
…………………
私は隣の光景を見る。
「おどろくちゃん!?どうしたの!?」
「ひぐっ…凸さん、転んじゃった…」
凸さんは急いで幼い頃の私に絆創膏を貼る。
「…はい、これで大丈夫。」
「凸さんありがとう!」
幼い頃の私が、凸さんに抱きつく。
「わっ、おどろくちゃん抱きつくなよ〜」
「えへへ〜」
……………………
右と左で、こんなにも差がある。
幸せか、そうでないか、
少なくともあの時みたいな幸せは、もう戻ってこない。
なんで、どこで間違えて…
そこで目が覚めた。
「はあっ、はあっ…」
乱れた息を整える。
……………もう私は、後には戻れないんだ…
「ご、ごめんなさい…謝るから、命だけは…」
「………」
俺は無言で撃ち殺す。
「さもさん、あんま無理すんなよ?」
凸さんが俺の肩に手を置く。
「わか、ってる…」
俺は殺すのが苦手だ。
殺そうとしても相手を仕留められないわけじゃなくて、相手を殺そうとする気持ちがないことに対しての『苦手』だ。
まったく殺意がないってわけじゃないよ?
けど…殺す覚悟ができない…
教育係である凸さんに戦闘技術を教えられて、昔は敵である政府と戦うことに躊躇いはなかった。
はっきりと苦手意識を感じるようになったのは、今から3年前のこと。
俺はそれまで政府の情報とか武器を奪う仕事がほとんどだった。
ある日、おどろくさんから殺しの命令をされた。
初めての殺し
相手を撃ち殺した時の体の震え
吐き出しそうなほどの鉄の匂い
目の前に広がる赤い水溜り
嫌だった、もうあんな感覚は味わいたくなかった。
けど、俺達はおどろくさんの命令に従う操り人形だ。
それに、殺せば殺すほど嫌でも慣れてしまう。
どんどん殺すことへの迷いがなくなってきて、俺は自分が自分じゃなくなくなってしまうんじゃないかって、物凄く怖い。
俺、こんなのことしたくてodmnに来たんじゃない…
「………は、ぁ…」
息が荒くなる。視界が歪む。
「……………っ」
俺はそのまま、意識を手放した。