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⚠️光が死んだ夏・ヒカル×よしき・心理的調教・口調、性格違う(多分)
第四部 ― 墜落・完全服従 ―
夜の校舎は静まり返り、窓から差し込む月明かりだけが床を淡く照らしていた。
放課後の慌ただしさは消え、教室には二人だけ。
よしきは机に座り、肩を落としていた。胸の奥はまだざわついている。
「よしき、今日も俺に従ってるな」
ヒカルは机に肘をつき、ゆったりと座る。
「……べ、別に……」
言葉が自然と震える。
抗いたいのに、抗えない。
もう自分の意思で動けないことを、よしきは痛感していた。
「黙るな。嘘はつくな」
ヒカルは静かに立ち上がり、よしきの肩に手を置く。
その重さは優しくもあるが、逃げられない圧力がある。
「おまえ、わかってるんだろ? もう選べないってことを」
よしきは目を伏せた。
胸がざわつき、喉が締め付けられるように息苦しい。
逃げたい。抵抗したい。でも、それ以上に――
胸の奥に、どこか安堵している自分がいることも否定できなかった。
「……もう……抗えないのか……」
かすれた声で呟く。
ヒカルはその声を聞き、にやりと笑う。
「そうだ。抗うことを諦めるんだ。
それが、おまえにとっても俺にとっても、一番楽な方法だ」
言葉が胸に深く刺さる。
自分の選択肢が完全に奪われていることを、よしきは認めざるを得ない。
「……わかった……従う……」
小さな声で吐き出すと、胸の奥で何かがほどけるように静かに落ち着いた。
恐怖や不安よりも、心のどこかで「安心」という感覚が広がる。
自分でも驚くほど、安堵している。
ヒカルは満足そうに微笑む。
「いい子だ。ようやく自覚したな」
肩を軽く叩かれ、指先が髪をなぞる。
その触れ方は、強さではなく確かさを伴う。
よしきはただ、身を委ねることしかできなかった。
月明かりに照らされた教室で、よしきは自分の心の変化に気づく。
抗うことをやめた瞬間、恐怖は完全には消えない。
でも、安堵が勝る。
――ヒカルの言葉に縛られることが、心地よく思えるのだ。
「これでいいんだ……」
心の奥で、ようやく呟いた。
自分から従うことで、自由を失ったことを認める。
けれど、自由を失ったことが、こんなにも心を軽くするなんて――。
ヒカルは椅子に腰かけたまま、静かに笑みを浮かべる。
「おまえ、もう迷わなくていい。
俺の言葉だけで生きれば、それでいい」
よしきは頷く。
言葉にならない感情が、胸の奥で波紋を描く。
恐怖、羞恥、依存、そして安堵――全てが絡み合い、ひとつの感覚に溶けていく。
「……俺、ヒカルの言うことに従う……」
声に出すと、全てが確定した気がした。
もう戻れない。
でも、それでいい。
ヒカルの支配の中で従うことが、今の自分にとって最も自然で、最も安心できる状態なのだから。
月明かりの中で二人の影が重なる。
ヒカルの言葉に縛られ、心を預けることで、よしきは新しい感覚を手に入れた。
それは恐怖ではなく、確かな安堵。
自由を失ったことが、救いになった瞬間だった。
教室に静けさが戻る。
ただ、二人だけの時間が流れ、外の世界の喧騒は遠くに感じられた。
よしきはヒカルの視線に縛られ、言葉に従い、心から安堵していた。
これが、自分の選んだ道――完全服従の先にある救いだった。