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#めめだて
ポテチ
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「じゃあ、僕はここで。気をつけてくださいね」
優しくて、でもどこか名残惜しさを含んだ声。
「あ、ありがとうございました……」
そう返すと、握られていた手が、そっと離れた。
一瞬だけ、指先に残る温もり。
それが、すぐに空気に溶けていく。
足音はゆっくり遠ざかっていく。
「……あっ、名前、」
思わず声に出す。
でも、どうやらその声は届かなかったみたいで、足音は止まることなくどんどん遠ざかっていった。
「あ……」
聞きそびれた。
あんなに助けてもらったのに、名前すら聞けていない。
名前も、どんな顔をしているのかもわからないままだった。
ただ俺の頭の中に残ったのは、声と手の温もりだけ。
「そっか……」
小さく呟く。
ほんの数分の出来事だったのに、
やけに心に残っている。
さっきまであった不安や恐怖が、
嘘みたいに少し軽くなっていて。
代わりに残ったのは、
少しの寂しさだった。
「……帰るか」
白杖を握り直す。
さっきと同じ道のはずなのに、どこか違って感じる。
怖いのは変わらない。
でも、さっきよりも自信を持てている気がした。
『……こっち、段差あるので気をつけてくださいね』
ふと、さっきの声が頭の中で蘇る。
それだけで、心が緩む。
名前も顔も知らない人の言葉なのに、
それだけで安心するなんて。
俺は、白杖をついて家まで帰った。
家に着いても、あの人のことばかり考えていた。
テレビはつけても意味がない。
スマホも、音声だけじゃなんとなく億劫で。
結局、ベッドに座ってぼんやりする。
暗い世界。
静かな部屋。
でも、
俺は心どこかで温かさを感じていた
あの手の感触を、思い出す。
俺より少し大きくて優しい手。
包み込むみたいな握り方。
「……どんな人だったんだろ」
俺よりも背は高かった気がするあの人は、
どんな仕事をしているのだろう。
俺より年上かな、年下かな。
どんな顔で、どんな表情で笑う人なのかな。
想像しようとしても、何も浮かばない。
それが、少し悔しかった。
「もう、会えないよな……」
ぽつりと漏れる。
あんなの、ただの偶然だ。
街で困っていたところを、偶然助けてもらっただけ。
ただ、それだけの関係。
普通なら、そこで終わりなんだろう。
「……はぁ……」
ベッドに倒れ込む。
視界は、相変わらず真っ暗で。
でも、さっきよりほんの少しだけ
その暗さの中に、温かさがある気がした。
「…また、会えたらいいな」
無意識に、そう呟いていた。
名前も顔も知らないくせに。
それでも――
もう一度、あの声を聞きたいと思った。
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コメント
3件
ふみさん、第4話読んだよ! 名前も顔も知らない誰かの優しさが、主人公の中でじわじわ温かくなっていく感じ、すごく丁寧に描かれてて良かった…。 「もう一度あの声を聞きたい」って最後のところ、切ないけど希望もあってグッときたな。 続き、めっちゃ気になるわ!