次の日の朝、俺は大森くんの家の前で、若井くんを待っていた。約束の時間の十分前に、彼は軽く走って現れる。普段の俺なんかより、よほどしっかりした子だ。
 「おはよ、先生」
「おはよう、じゃあ早速」
 俺の手にあるビニール袋を見て、若井くんが話しかけてきた。
 「それ何?」
「アイス」
「アイス? なんで?」
「昨日はお菓子だったけど、受け取ってもらっただけで終わっちゃったから。アイスならさ、『溶けちゃう!』って言えば、もしかしたら中に入れてくれるかもって、思って」
「なんだその作戦」
 はは、と笑って、若井くんがインターホンを押す。お母さんが対応してくれて、俺たちが二人で来たことに少し驚かれていた。
 「どうぞ、中に入っちゃってください、もう」
「あ、一応、ここで待たせてもらいます。あんまりズカズカ行くと、ねえ、嫌がられるかもなんで」
 玄関の三和土で留まる俺を、よく言うよ、という顔で、若井くんが見る。アイス作戦なんて狡い手を使ってるのにね、確かに。
階段から、また眠そうな大森くんが降りてくる。俺たち二人の姿を見て、固まった。
 「…え…なんで…」
「僕たち、目的が一緒だったから、もう一緒に来ちゃいました…」
「…元貴、久しぶり…」
「…うん…」
 二人は、少し気不味そうに言葉を交わす。俺は、早速作戦を遂行することにした。
 「あ、あの、これ!」
 少し身を乗り出して、大森くんにアイスを手渡す。つい受け取ってしまったようで、怪訝な顔でアイスと俺を見比べた。
 「え…なに」
「アイス。新商品」
 俺は、若井くんにも別の種類を手渡して、俺もまた別の種類を手に持つ。
 「えっとさ、溶けちゃうから、みんなで一緒に、取り敢えず中で食べない…?」
 大森くんが、じっと俺を見つめて、チラとだけ若井くんを横目に見た。そして、身体を階段の方に向けて、小さく呟く。
 「…藤澤先生だけならいいですよ」
 そう言って、さっさと上へあがってしまった。俺が、若井くんの方を申し訳なく思いながら見ると、少し眼を丸くしていたが、俺に笑いかけてきた。
 「すごいじゃん、元貴がちょっと陥落するなんて」
「…ごめんね、なんか…」
「いや、何も知らない先生の方が、今の元貴には多分気楽なんでしょ。じゃあ先生、俺先学校行っとくわ。これ、ありがと」
 アイスを掲げて、ニコッと笑う。なんていい子なんだろう。この子の成績は、是非とも満点あげて欲しい。笑顔で颯爽と立ち去る若井くんに、俺は心の中で拍手喝采を贈っておいた。
 「若井くん、いつもごめんね。先生、どうぞあがってください」
「あ、はい、失礼します」
 靴を脱いで揃えた後、用意してもらったスリッパに履き替えた。ペタペタと音を立てながら、二階へと向かう。
 「上がったところの部屋です」
 下から、お母さんにそう言われ、俺は振り返ってペコリと頭を下げた。言われた通りのドアの前で、コンコンコン、とノックをする。
 『どーぞ』
 中から声がして、俺は「失礼します」とドアを開ける。窓際にベッドがあり、その横には同じく大きな窓の前に縦長の収納棚が付いた作業机がL字に置かれている。その上にはパソコンと、打ち込み用のキーボードのような鍵盤楽器が並べられていた。その向かいの壁際にローソファー、そして扉が開けられた収納の中にはエレキギターやアコースティックギターがいくつか置かれていてた。8畳くらいの、シンプルな一人部屋、という感じだ。
 「凄いね、ギターだ。ちょっと見てもいい?」
「…いーけど、アイス溶けますよ?」
 作業机の前で椅子に座り、既にアイスに齧り付いている大森くんが、俺の手元を顎で指した。
 「あ、じゃあ、先に、頂きます」
 ソファーに腰を据え、軽く手を合わせてアイスを開ける。溶けてしまう前に、急いで平らげた。大森くんも、俺の様子をじっと見つめながら、同じようなタイミングで食べ終わる。俺のゴミを受け取って、ゴミ箱へと一緒に捨ててくれた。
 「…アコギ、ちょっと触ってもいい? 」
「…いーですよ」
 俺は、アコギを手に取って、どこで弾こうかとキョロキョロする。大森くんが椅子を開け渡してくれて、自分はベッドに腰掛けた。
会釈を返して、椅子に座る。幾つかコードを確認して、満を持して一曲披露した。
 「…かんとりーろー…このみーちー…ずーうっとー…ゆーけーばー…」
「…なんでマイナーコード?」
 ウケるかと思って、俺のお得意のCマイナーのカントリーロードを歌ってみたが、冷めた眼で見られて、心まで凍ってしまいそうだった。「…ありがとう…」と言って、大森くんにアコギを返す。大森くんは、そのままアコギを抱えて、コードを弾き始めた。
 
 
 
 
 「人は純白に輝く生き物だ」
それはどうかな ほら またあちこちで
諍いが止まぬ変わらない世の中だ
「人が作り上げた」皮肉なもんだ
 僕達の倫理ってもんは
こんなにも汚れてしまったのかい
誰かが気づいてくれたらいいな
いつか いつか いつの日にか
 知らぬ間に誰かを傷つけて
人は誰かの為に光となる
この丸い地球に群がって
人はなにかの為に闇にもなる
 
 
 
 
 
 
 俺は、その歌に圧倒されて、気付けば涙を流していた。俺のその様子に、大森くんも眼を見開いて驚いている。ゆっくりとしたテンポで、静かな声で歌い上げていたが、俺にはそれが、この子の叫びのように感じて。手の平で慌てて涙を拭って、「ごめん」と謝った。
 「…いや。泣くとは、思わなかったけど」
「…これは、大森くんの、曲?」
 俺は、パソコンの方を見遣って、恐らくはここで作曲作業をしているんじゃないかと推察した。大森くんはこくんと頷き、アコギを収納棚へ立て掛ける。
 「…なんて、名前?」
 大森くんが、また眼を丸くして、俺を見た。
 「…パブリック」
 パブリック。一般の、とか、公共の、という意味か…。学校や社会の、集団意識や全体主義みたいなものへの、“個”の叫び、のように感じた。
 「凄かった…うん…凄く…凄かった…」
 ふ、と大森くんが口角を上げた。そのすぐ後に、表情を崩した事を悔やむように、眉根を顰める。俺は、膝をぽんと両手で叩く。
 「ねえ、俺、明日フルート持って来ていい?」
「…え?」
「俺、ここの音楽科コース出身で、今も大学でフルートやってんだよね」
「あ、そうだったんだ」
「そう。なんか、大森くんの歌聴いてたら、むずむずしてきた!」
「…うずうずじゃなくて?」
「ん? うずうず? か」
「たぶん」
「明日、良かったらセッションしてみたい、ここで」
 大森くんは、意外そうな顔をして、俺を見つめる。
 「…学校で、じゃないんだ」
「え?」
「いや…だって、なんか…全然、学校来いって言わない人だな、と思って」
「だって、俺まだ先生じゃないもん。大森くんを引っ張って学校連れてく義理、ないし」
「うわ、怖」
「そう?」
 くくっと喉を鳴らして、大森くんが眉を下げる。右側に、笑窪が現れた。
 「あ、笑窪だ。俺ね、こっちにあるよ」
 ほら、と口を開けて笑顔を作ると、俺の左頬に少し笑窪が現れた。
 「俺たち、2人で一つの笑窪だね。二人でワンセット」
「ヤダよ。お前とワンセットなんて、絶対ヤダろ」
「おい、ちょっと言い過ぎだろ!」
 二人で笑い合いながら、少し砕けて話をする。その後は、ギターの弾き方を少し教えてもらったりして、なかなか楽しい時間を過ごすことができた。
 「ありがとう。昔ギターにも挑戦したけど、なかなか難しいよねー、ギターって」
「…若井もね、上手いよ、ギター」
 大森くんが、二本のギターを収納の中に立て掛けながら、小さく呟いた。俺は、まだ大森くんの深くまで踏み込むべきじゃないと判断して、静かに頷くだけにしておいた。
ため息をついて、大森くんがベッドに横になる。かなり、眠そうだ。
 「…寝る?」
「…ん…」
 腕を目元に置いて、掠れた声を出した。
 「…俺さ、夜、寝れないんだ」
「…そう…」
「…やりたい事があるのもそうだけど…それだけじゃなくて…。色々考えてたら、いつも5時とかにやっと気絶するみたいに、寝れる…」
 俺は、ベッドの傍にしゃがみ込んで、そっと頭を撫でた。一瞬、ぴく、と腕が震えたが、嫌がる事は無さそうで、俺は安心して柔らかな髪を撫で続ける。やがて、すうすうと寝息が聞こえて、大森くんが無事に眠りに着いたとわかった。俺は、静かに立ち上がると、そっと部屋を出て行く。
お母さんに挨拶をして、学校へと戻る為に歩き始めた。ふと、大森くん家の門の前で、二階の窓を見上げる。
彼が、学校に来ない理由は、なんだろう。あそこまで、公共を、公衆を、この世界を愛しながらも憎んでいるように歌を綴るのは、何故なんだろう。俺は、気付けばただのお迎え要員なんて気持ちはとうに何処かへ消えていた。
もっと、もっと彼を知りたい。そんな気持ちが、芽生えていた。
 「あなたね、私の話を理解できないのかしら」
 職員室に戻ると、早速松嶋先生から冷たい視線を浴びる事になった。どうやら、若井くんがアイスを食べながら登校した事を生活指導の先生に咎められたらしい。その時に、「だって藤澤先生に貰ったんだもん。」と今度は彼のいい子が悪い方へ作用してしまったようで、こうして俺は再びお説教を甘んじて受け入れているのだ。昨日のお菓子の件で注意されたばかりなのに、今日はアイスと来たもんだ。そりゃ、説教だよね。
 「…もういいわ。あなたは、自分の実習に専念して頂戴」
「…え?」
「もう、大森くんの家に行ってはダメよ。いい? ここまでハッキリ言えば、あなたもわかるわよね?」
「…はい…、すみませんでした」
「…これ、指導案。少し赤入れてあるから、作り直して来て頂戴」
「はい、ありがとうございます」
 深くお辞儀をして、指導案を受け取る。職員室を出ると、若井くんが廊下に立っていた。
 「あ、先生! マジごめん!」
 顔の前で手を合わせて、眉を下げて凄く申し訳なさそうな表情を作っている。俺は、くすっ、と笑ってしまった。
 「…やってくれたね」
「ごめんて! そんなにダメな事だと思わんかったの!」
「ふふ、嘘だよ嘘。全然大丈夫だったよ。…でも、もう大森くんの家には行っちゃダメだって」
「えー…。うそぉ…ごめぇん」
 俺は、若井くんの肩に手を乗せて、ポンポンと叩いた。
 「…まあ、元々が、俺なんかが担っていい事じゃなかったんだから。普通の実習生に戻るだけだよ」
「…普通じゃなかったの?」
「うん。この頭見たら、わかるでしょ?」
 にこっと笑うと、若井くんは、ふはっ、と吹き出した。
 「確かに」
「だから後は、若井くん、よろしくね」
「…俺でいけるか、わからんけど」
 少し伏し目がちに不安を零す。俺は、首を小さく振って、肩をさすった。
 「若井くんじゃないと、ダメなんだよ。俺と話してた時もさ、ぽろっと言ってたよ。『若井もギター上手いよ』って」
 若井くんが、驚いた顔で俺を見た。嬉しそうな、少し泣きそうな、複雑な表情だ。
 「…ほんとに? 元貴が? 俺のギター、褒めてたの?」
「うん。だからきっと、大森くんの心にはちゃんと、若井くんの居場所があるんだと思ったよ」
 「自信持って」とまた肩を優しく、ぽん、と叩くと、若井くんははにかみながら頷いた。そこで彼とは別れて、俺は実習生室へと向かった。
 
 
 松嶋先生に返された指導案を作り直し、音楽の授業を見学に行く。松嶋先生の指導を見ながら、メモを取ったり、他の生徒の様子を気に掛けたり、俺は実習生らしい、やるべき事に注力していた。しかし、松嶋先生への視線は、俺が思うより鋭くなっていたかもしれない。
 どうして、俺を迎えに行かせたのか。
どうして、貴女が彼をそこまで気に掛けるのか。
どうして、引き合わせたのに、途中で引き離す様な事をするのか。
 そんな考えが頭をもたげて、心に広がっていく。多分、それが良くなかった。良くなかったんだな。
 
 次の日の早朝。朝の4時頃。俺は、大森くん家の門の前に立っていた。道に落ちた小石を拾って、窓目掛けて投げる。カツ、と窓ガラスが鳴って、庭へ小石が落ちて行く。それを何度か繰り返し、漸く彼の部屋のカーテンが揺れた。隙間から顔を覗かせた大森くんが、慌てて窓を開けた。
 「…先生…!? その髪…!」
 俺は、髪を撫でて、ニコッと笑った。俺の髪は、薄いピンク色へと変貌を遂げていたのだ。
 「おはよう」
「…待って、降りる」
 このままの距離で話すのは憚られたのか、窓を閉めて姿を消した。暫くすると、出来るだけ音を殺して、玄関ドアが開かれる。スウェット姿の大森くんが、そろりと身体全てを外に出した。
 「…どうしたの?」
「よかった、昨日この時間は起きてるって言ってたから、ホントに起きててよかった」
 俺が笑うと、片眉を器用に上げて、大森くんが顔を顰めた。
 「ねえ、ほんとに、それってどうなの? 普通生徒がこんな時間まで起きてたら叱るもんじゃないの?」
「知らないよ。俺ただの実習生だし、…もうここには来られないし」
「え?」
 大森くんの眼に、少し困惑が宿る。
 「ごめんね、俺、ルール違反しちゃったみたいで、もうここに行くなって言われちゃって。急に顔出さなくなるのも嫌で、それだけちゃんと伝えておこうと思ってさ」
「…そうなんだ」
「うん…ごめんね、勝手に来て、勝手に来なくなって」
「…ホントだな、凄い勝手」
 俺の言葉に妙に納得して、大森くんが、ふふ、と笑う。
 「…また、若井くんにも、顔、見せてあげてね。あの子本当に、凄く大森くんを心配してる」
「…うん」
 それだけ答えると、大森くんは黙って俯いた。俺は、肩に手を乗せ、にっこりと笑う。
 「最後に、ちょっと先生ぽい事を」
 大森くんが顔を上げた。
 「…もし、俺に会いたいと思ってくれるなら、学校に来て。もう、そこでしか会えないから」
 大森くんが、じっと見つめてくる。
 「俺の実習、4週間なの」
「え…そうなんだ」
「うん。…じゃあ、ごめんね、おやすみ」
 最後に、大森くんの手を取ると、その中に飴玉を落とした。これくらいなら、ルール違反とまでは行かないだろ。
外に出たまま見送ってくれる大森くんに手を振りながら、俺は自宅へと一度帰っていった。
 実習生室に集まった皆に、髪の毛を沢山触られる。
 「涼ちゃんって、顔に似合わず結構ぶっ飛んでんな」
「この色可愛い。なんてオーダーしたの?」
「松嶋先生の怒鳴り声、校舎中に響いてたよ。生徒たちもその話しかしてなかったし」
 それぞれに好きな事を言いながら、俺の髪を弄り倒す。
案の定、俺の髪色チェンジは松嶋先生の逆鱗に触れて、今日も実習生室から出るのを禁止されてしまった。まるで有害物扱いだ。
 高野と綾華が、それぞれ授業へ向かう中、空き時間の亮平くんが、俺の横に座った。
 「…で? なんでピンクになったの?」
 今日の天気図を机に広げながら、亮平くんが俺に訊ねる。彼は、気象予報士の資格を取る為に、こうして毎日気象庁の発表する天気図や衛星画像などを元に、独自の解析をしているのだった。
 「…松嶋先生への、反発?」
 亮平くんが、俺の発言を促すように、さらに問う。俺は首を捻って、「わからない」と零した。
 「…松嶋先生って、確か仲良かったよね?」
 亮平くんが、もう少し、踏み込んでくる。彼とは高校時代そこまで面識は無かったが、俺が吹奏楽部でフルートを演奏し、顧問の松嶋先生に目を掛けてもらってた事は、知っている様だ。
 「…うーん…仲…良いっていうか、まあ目は掛けてくれてたよね? 確かに。だけどさ、実習に来た日に、いきなり『なんで来たの。なんなのその頭。』とかブチ切れモードでさ。ちょっと歓迎してくれるかな、なんて思ってたのに、俺こんなに嫌われてたんだ〜って、結構ショックで」
「まあ、その頭だからじゃないの。松嶋先生が受け入れちゃったら、それこそ示しがつかないでしょうに」
「そう…かなあ、やっぱり。でも、俺、ここに来るからって、自分を変えたり、合わせたりってのは、なんか違うっていうか、なんか、嫌だったんだよね」
「あー、そういう…。確かにね、俺もちょっとそれは思うかも。あのさ、就活の時に、全員黒のリクルートスーツ着て、真っ黒な髪にしてさ、“個”を殺して集団に属そうとするあの感じあるじゃん。あれは俺も、ぞわぞわする」
「うん、それに近いのかも。ね、俺がピンクにするのもわかるでしょ」
「うん、わかんない」
「なぁんでよ!」
 ははは、と笑い合っていると、ドアがノックされた。高野も綾華もノックなんかしないから、誰か他にこの部屋に用事がある人なんて居たかな? と首を傾げる。
 「あ、教材じゃない?」
 亮平くんがそう言って、辺りを見回す。そういえばここは、教材室でもあるんだった。俺は立ち上がって、ドアを開けに行く。
 「はい」
「あ、先生!」
 ドアの隙間から、若井くんがパッと笑顔を咲かせた。
 「え? 若井くん? あれ? 授業は?」
 俺は、腕時計を見て確認する。まだ、1時間目の真っ只中だ。
 「今日、遅刻しちゃって。松嶋先生も、今日だけは特別って、1時間目は自由時間にしてもらっちゃった」
「え? 松嶋先生が?」
 ルールに厳しくお堅いかと思いきや、こんな風に柔和な対応をしたり、ホント、松嶋先生わかんないわぁ。なら俺にもその柔和をくれよ、と思いながら眉根を顰めていると、若井くんが、にひひ、と笑った。
 「ほんとだ、すげー髪色」
「え、あ。そう。可愛いでしょ?」
「うん、よく似合ってる。な、元貴」
 若井くんが、廊下の向こうに視線を移して、その名を呼んだ。俺は、慌ててドアを全開にして、廊下へ身を乗り出した。少し離れた場所に立っている彼は、ぎこちなく制服を身に纏って、俺と眼を合わせる。
 「…大森くん…」
「…おかげで、徹夜なんだけど」
 眼の下におおよそ高校生らしくない隈を作って、恨めしそうに俺に言う。俺は、嬉しさで少し涙目になりながら、笑顔を彼に向けた。
 「…おはよう、ございます」
「…おはようございます」
 俺が挨拶をすると、大森くんが、ぺこりと頭を下げて、にこっと笑う。彼の右側と、俺の左側の頬に、笑顔の種が埋まっていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
コメント
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久しぶりのコメント失礼します(*_ _) 最近Snow Manにハマっていて、阿部ちゃん推しになり、めめあべをずっと見ています(*^^*) 涼ちゃんと阿部ちゃんの絡みが好きなので、七瀬さんの作品は、あべちゃんが出て来てくれるのでとても嬉しいです(>ᴗ<) 今回の作品も楽しませていただきます( ᴗˬᴗ)
藤澤先生の元貴くんへの距離感や詰め方が適切でいいわ♩♬ 関わったからには勝手に終わらせない、そんな藤澤先生の何かが元貴くんに刺さったのかな🥹 モロッコヨーグル私も食べたなw 因みに私の好きな駄菓子はチョコバット これからどう距離が縮まってくのか楽しみ🌼
部屋に入ってから仲がいいね好きです😭大森くんきた😭そりゃ若井くんきっと色々あるから遅れるだろうし先生も1時間目なんか色々あってOKするわけだ😭好きですとても大好きです