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読ませていただきました……!第2話、もう胸がいっぱいです。桃が「好き」ってうっかり口を滑らせるところ、あの衝動と照れが鮮明に伝わってきて、思わず「ああっ」ってなりました。それに対する翠の「俺も好き」もずるいです。両想いなのにそれぞれ「自分だけ特別じゃない」と思い込んでいたすれ違いが、最後に温かく溶けていく流れがとても丁寧で、夕暮れの公園の空気まで感じられました。続きが読みたい気持ちと、この余韻に浸っていたい気持ちと……。素敵な作品をありがとうございます🌷
桃翠
地雷さん🔙or自衛
キャラ崩壊大
ご本人様関係ありません
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# 君が隠した、最後の本音。
#01 いつも通り、のはずだった。
桃「翠、今日の練習終わったら時間ある?」
翠「んー? あると思うよぉ」
桃「じゃあ、ちょっと残って」
翠「えー、桃ゞってば俺のこと好きすぎない?」
桃「……は?」
翠「冗談だよぉ。そんな顔しないで」
いつもの調子で笑う翠に、桃は思わずため息をついた。
桜司桃。
グループの中では、周りを引っ張ることも多く、言いたいことは比較的はっきり言うタイプ。
そして、緑絵翠。
のんびりしていて、何を考えているのか分からないときがある。けれど、誰かが困っていれば真っ先に気づくような人だった。
桃は、そんな翠が苦手だった。
正確に言えば。
苦手なふりをするのが、得意だった。
桃「お前さ、誰にでもそういうこと言うよな」
翠「そういうことって?」
「好きすぎない、とか」
翠「えー? 桃ゞは特別だよぉ?」
桃「……もういい」
翠「あははっ、拗ねた?」
桃「拗ねてねえよ!」
翠は楽しそうに笑った。
桃はその笑顔を見るたび、胸の奥が少しだけ苦しくなる。
だって、翠は誰にでも優しい。
誰にでも笑いかける。
誰にでも、特別みたいな言葉をくれる。
だから自分だけが勘違いするわけにはいかなかった。
この気持ちを知られたら、今までみたいに隣にいられなくなる気がした。
だから桃は、今日も何でもないふりをした。
# 02 知らない顔。
茈「翠、今日ちょっと顔色悪くない?」
練習の休憩中、紫崎茈が翠の顔を覗き込んだ。
翠「そうかなぁ? 普通だと思うけど」
茈「普通のやつは、さっきから同じところ三回も間違えねえよ」
翠「うわ、数えられてた?」
茈「当たり前だろ。ちゃんと集中しろ」
翠「はぁい」
翠は笑いながら返事をした。
1,400
けいか🎼
1,416
蓮香(仮)
589
その様子を少し離れたところから見ていた桃は、何となく面白くなかった。
茈は翠の変化にすぐ気づく。
翠も茈には、無理に明るく振る舞わない。
別に、それ自体はおかしなことじゃない。
なのに。
桃「……」
赫「桃、どうした?」
隣にいた暇赫に声をかけられ、桃は顔を上げた。
赫「さっきから翠のこと見てね?」
桃「見てねえよ」
赫「いや、めっちゃ見てるけど」
桃「うるせえな」
赫「はいはい。分かりやすいことで」
桃「何がだよ!」
赫「別にぃ?」
赫はにやにやしながら離れていった。
最悪だ。
自分でも分かるくらい、翠のことばかり気にしている。
でも、どうしたらいいのか分からない。
好きだと伝える勇気もないくせに、誰かと楽しそうに話している翠を見ると、勝手に寂しくなる。
そんな自分が、ひどく面倒くさかった。
その日の帰り。
桃が忘れ物を取りに戻ると、廊下の向こうから翠の声が聞こえた。
翠「……うん、大丈夫。俺、平気だから」
いつもより、ずっと小さな声だった。
翠「みんなには言わないでね。心配させたくないから」
桃は足を止めた。
続く言葉は聞こえなかった。
ただ、少しして廊下から出てきた翠は、桃を見つけるといつも通り笑った。
翠「あれ、桃ゞ? 帰ったんじゃなかったの?」
桃「……忘れ物」
翠「そっかぁ」
桃「お前、何かあった?」
翠「え?」
桃「いや、さっき……」
言いかけて、桃は口を閉じた。
聞いていたなんて言ったら、翠はきっと困る。
翠「何にもないよぉ」
そう言って、翠は笑った。
その笑顔が、いつもより少しだけ寂しく見えた。
桃「……そっか」
翠「うん」
その日は結局、それ以上何も聞けなかった。
# 03 優しい嘘。
それから数日、翠は少しずつ練習を休むようになった。
理由は体調不良。
それでも連絡をすると、必ず返事は来る。
『大丈夫だよぉ』
『心配しないでね』
『次はちゃんと行くから』
全部、いつもの翠らしい言葉だった。
けれど、桃は知ってしまった。
翠が、本当のことを言わないときほど笑うことを。
ある日の夜。
桃はスマホを握りしめたまま、翠とのトーク画面を眺めていた。
何度も文章を打っては消す。
『本当に大丈夫?』
違う。
『無理してない?』
それも違う。
聞きたいことは、もっと別にある。
どうして何も言ってくれないのか。
どうして自分には頼ってくれないのか。
どうして、そんなに一人で平気な顔をするのか。
結局、送ったのは短い一言だった。
『明日、会える?』
しばらくして返信が来た。
『うん、会えるよぉ』
その文字を見て、桃はようやく息を吐いた。
翌日。
二人は練習後、近くの公園で待ち合わせた。
夕方の風は冷たく、街灯がぽつぽつと灯り始めていた。
翠「それで、話ってなぁに?」
桃「……最近、何してんの」
翠「何って?」
桃「体調悪いって休んでるだろ。連絡しても大丈夫ってしか言わねえし」
翠「うん。ちょっと疲れてるだけだよぉ」
桃「それ、本当?」
翠「……」
初めて、翠がすぐに答えなかった。
桃「俺にくらい、話してくれてもよくね?」
翠「……桃に?」
桃「そうだよ」
翠は困ったように笑った。
翠「桃って、優しいねぇ」
桃「……は?」
翠「でも、大丈夫。ほんとに」
その瞬間、桃の中で何かが切れた。
桃「だから! 大丈夫じゃねえなら、大丈夫って言うなよ!」
翠が目を見開いた。
桃「俺、ずっと気になってたんだよ。お前が何考えてるのか分かんなくて、何もできなくて……」
声が少し震えた。
桃「お前が苦しいなら、俺だって心配するだろ」
翠「……ごめん」
桃「謝ってほしいんじゃないんだよ」
翠「……うん」
桃は拳を握った。
本当は、もっと別のことを言いたかった。
心配だから。
大切だから。
好きだから。
けれど最後の言葉だけは、どうしても口にできなかった。
翠「……俺ね」
しばらく黙っていた翠が、ぽつりと呟いた。
翠「最近、ちょっと自信なくなっちゃって」
桃「え?」
翠「みんな頑張ってるでしょ。俺も頑張りたいんだけど、うまくいかないことが続いててさぁ」
翠は空を見上げた。
翠「それで、みんなの前ではいつも通りにしてたら、何となく平気な気がしたんだよね」
桃「……」
翠「心配かけたくなかったんだ。俺が笑ってたら、みんなも安心するかなって」
桃は何も言えなかった。
翠「でも、桃には気づかれちゃったねぇ」
そう言って笑う翠の目は、少しだけ潤んでいた。
翠「俺、桃にはかっこ悪いところ見せたくなかったんだよ」
その言葉に、桃の胸が痛くなった。
どうして。
どうしてそんなに、一人で頑張ろうとするんだ。
桃「……ばか」
翠「えぇ、ひどい」
「ばかだろ。かっこ悪いとか、そんなの気にすんなよ」
翠「……桃ゞ」
桃「俺、お前が何でもできるから好きなわけじゃねえし」
言ってから、桃は固まった。
翠も固まった。
夜の公園に、沈黙が落ちる。
桃「…………」
翠「…………え?」
桃「……あ」
やってしまった。
完全に。
口が勝手に動いた。
桃は顔を覆いたくなった。
翠「……今、好きって」
桃「忘れて」
翠「えっ、無理だよぉ!」
桃「忘れろって!」
翠「む、無理無理! そんなの無理だって!」
翠は珍しく慌てていた。
その姿がかわいくて、こんな状況なのに桃は少しだけ笑ってしまった。
桃「……あー、もう。そうだよ、好きだよ」
翠「……」
桃「ずっと好きだった。悪いかよ」
翠は俯いた。
桃「返事は今すぐじゃなくていい。困らせたいわけじゃないから」
そう言って立ち上がろうとしたとき。
翠「……待って」
桃の袖が、小さく引かれた。
翠「俺もね」
桃「……うん?」
翠「俺も、桃ゞのことが好き」
時間が止まった気がした。
桃「…………は?」
翠「だから、俺も好きなの。ずっと」
「……はあ!?」
翠「ちょ、声大きいよぉ!」
桃「いや、だって、お前……!」
翠「だって何ぃ?」
桃は言葉を失った。
まさか。
まさか、両想いだったなんて。
桃「……じゃあ、何で言わなかったんだよ」
翠「桃ゞが誰にでも優しいから」
桃「は?」
翠「みんなのこと大切にしてるでしょ。だから、俺だけ特別だなんて思いたくなかったんだ」
翠は困ったように笑った。
翠「好きって言って、今までみたいに隣にいられなくなったら嫌だったから」
桃は、ゆっくりと翠を見つめた。
同じだった。
自分と、まったく同じだった。
桃「……ほんっと、ばか」
翠「二回目ぇ」
桃「だって、俺も同じこと考えてたんだぞ」
翠「……え?」
桃「お前が誰にでも優しいから、俺だけじゃないんだろうなって」
翠は目を丸くしたあと、ふにゃりと笑った。
翠「何それぇ……」
桃「笑うな!」
翠「だって、嬉しいんだもん」
その言葉が、あまりにもまっすぐで。
桃は、もう何も言い返せなかった。
# 04 君だけの本音。
帰り道。
二人は並んで歩いていた。
いつもと同じ道。
いつもと同じ街並み。
けれど、隣にいる翠が、今までとは違って見えた。
桃「……なあ」
翠「んー?」
桃「これからは、ちゃんと頼れよ」
翠「……うん」
桃「大丈夫じゃないときは、大丈夫じゃないって言え」
翠「うん」
桃「俺にも、ちゃんと話して」
翠「……うん」
桃は歩みを止めた。
桃「……あと」
翠「まだあるのぉ?」
桃「ある」
桃は少しだけ視線を逸らした。
桃「……俺のこと、特別って思ってくれてんなら」
翠「うん?」
桃「もっと、特別扱いして」
言った瞬間、顔が熱くなった。
何を言っているんだ、自分は。
翠は一瞬きょとんとしたあと、声を上げて笑った。
翠「あははっ! 桃ゞ、かわいい!」
桃「はあ!? かわいくねえし!」
翠「かわいいよぉ。いつもはあんなにかっこいいのに」
桃「うるせえ!」
翠「ねえ、桃ゞ」
笑い終えた翠が、そっと桃の手に触れた。
翠「……手、繋いでもいい?」
桃は一瞬、息を止めた。
それから、翠の手を握り返した。
桃「……最初からそう言えよ」
翠「ふふっ。ありがと」
指先が触れて、手のひらが重なる。
それだけなのに、心臓がうるさかった。
翠「ねえ、桃」
桃「何だよ」
翠「俺ね、桃の隣が好き」
桃は黙って聞いていた。
翠「無理に笑わなくてもいいところも、かっこ悪いところを見せてもいいところも。……桃の隣なら、そう思えるんだ」
桃は握った手に、ほんの少し力を込めた。
桃「……俺も」
翠「ん?」
桃「お前の隣がいい」
それ以上は、恥ずかしくて言えなかった。
でも、今はそれで十分だった。
翠は嬉しそうに笑って、桃の肩にこつんと頭を寄せた。
翠「……これからも、よろしくねぇ」
桃「……おう」
少し歩いてから、桃は思い出したように口を開いた。
桃「……なあ、翠」
翠「なぁに?」
桃「俺、お前のこと好きすぎるかもしれない」
翠「……え?」
桃「今さらだけど。多分、思ってるよりずっと」
翠は目をぱちぱちさせたあと、顔を赤くした。
翠「……それ、ずるいよぉ」
桃「何が?」
翠「俺だって、桃ゞのこと……すっごく好きなのに」
その言葉を聞いた瞬間、桃は思わず笑った。
今まで何度も欲しかった言葉。
聞きたくて、でも聞けなかった言葉。
それが今、ちゃんと自分に届いている。
桃「……じゃあ、もう隠すなよ」
翠「桃ゞもねぇ」
桃「……分かった」
翠「約束だよぉ?」
桃「おう。約束」
二人は、繋いだ手を離さなかった。
好きだからこそ、怖かった。
好きだからこそ、言えなかった。
けれど、言葉にしてみれば。
思っていたよりずっと、世界は優しかった。
そして桃は、心の中でそっと決めた。
これから先、翠が笑っているときも。
泣きたいときも。
自信をなくしてしまったときも。
隣にいたい。
誰よりも近くで、翠の本音を聞いていたい。
桃「……翠」
翠「んー?」
桃「大好き」
翠「……っ、も、桃ゞぉ!」
桃「あははっ! 何だよ、今さら!」
翠「今さらでも恥ずかしいのぉ!」
桃「じゃあ、これから毎日言ってやる」
翠「えぇ!? それは……!」
桃「嫌?」
翠「…………嫌じゃ、ない」
桃「……そっか」
翠「……むしろ、いっぱい言って?」
桃は、もう一度笑った。
今度は、隠す必要なんてなかった。
夕暮れの道を、二人で歩く。
繋いだ手の温度が、確かにそこにあった。
君が隠した、最後の本音。
それはきっと。
俺がずっと、聞きたかった言葉だった。
翠「好きだよ、桃ゞ」
桃「……俺もだよ、翠」
――END.