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さんぱち 地方遠征が同部屋ホテルの話
地方公演の夜。
ホテルの廊下は静かで、足音がやけに響いた。
「……ここだな」
はやちゃんがカードキーをかざす。
ドアが開いて、ツインの部屋が現れた。
「同部屋、久しぶりだね」
柔太朗がそう言うと、はやちゃんは小さく頷いた。
「スケジュール詰まりすぎだな、今回」
荷物を置いて、二人ともベッドに腰を下ろす。
ライブ後の疲れが、今になってどっと来る。
「今日のMC」
はやちゃんが言う。
「柔太朗、助け舟出すの早かった」
「はやちゃんが詰まったからだよ」
「……そういうとこ」
少し照れたみたいに笑って、ペットボトルを開ける音。
シャワーを済ませ、部屋の明かりを落とす。
ベッドサイドのランプだけが点いている。
「眠れる?」
「多分」
柔太朗は天井を見つめながら答えた。
「遠征の夜、いつも少し緊張して」
「わかる」
はやちゃんも、同じ方向を見ている。
少しの沈黙。
それから、低い声で。
「……隣に人がいるって、安心するよな」
「…うん」
間にあるのは、ベッド二つ分の距離。
触れない。触れないけど、確かに近い。
「柔太朗」
「なに」
「明日も、俺の横な」
それは指示じゃなくて、確認みたいな言い方だった。
「……もちろん」
ランプを消す。
暗闇の中で、二人の呼吸だけが聞こえる。
「おやすみ」
「おやすみなさい、はやちゃん」
同じ部屋、別々のベッド。
それでも、心の距離は確かに縮まっていた。