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あの日以前から、僕への嫌がらせはあった。
話しかけても無視される。
大切な予定を教えてもらえず、会議に遅れて、校長から激怒されたりした。
けれど、凛さんの為に頑張っていた。
僕が本当に大好きな人だから。
僕が弱かったら、あの子は生きていけないと思うから。
僕が守ってあげないと…。
しかし、嫌がらせはエスカレートするばかり。
僕が居ない間に嫌がらせをしている先生達が、僕のクラスの子達に、僕の悪口を広めていたり。
椅子に画鋲を置かれたり。
本当に、
辛い…。
しかし、あの日で僕は限界だった。
朝、職員室に入ると、女性の先生2人がそそくさと駆け寄り、「まだ来てるんだ。」「いい加減先生を辞めればいいのに」「内気な人には合わない職業だから。」など言われた。
僕は「すみません…」としか言えなかった。
本当は物凄く泣きたかったけど、恥ずかしいから必死に堪えた。
そのうち、生徒も話しかけて来なくなった。
本当に1人ぼっちになった。
寂しい。辛い。
生徒からも、給食を注いでもらえず忘れさられていた。
昼休み。
1人でいるのは恥ずかしいから、ロッカールームに籠もって仕事を1人で淡々とやっていた。
すると、いきなり他学年の先生2人が入ってきた。
手には絵の具セットのようなものがあった。
太めの筆にパレット、絵の具入れ、水入れバケツ…。
僕は怖くなり、後退りした。
しかし、僕を挟むようにして、両方に立っている。
僕が逃げようと動くと、2人は追いかけてくる。
ロッカールームのドアも閉められていた。
その途端、身体がひんやりした。
気づくと、絵の具を塗られていた。
僕の心に逆らう様に。
だんだん白色のカッターシャツが、カラフルになっていく。
怖くて何も対抗することは出来ず、ただ身を任せるしかなかった。
チャイムの音と共に、筆が離れた。
2人は笑いながら出ていった。
僕は「はぁ…」とため息を1つ着く。
『こんな姿は誰にも見せられない』と思い、自分のロッカーを探る。
唯一あった、替えのカッターシャツに着替えた。
僕の手元にある、カラフルになったシャツを見つめる。
だんだん悲しくなり、涙が出てくる。
まるで、知らない世界に1人置いていかれたような感覚。
放課後、職員室に戻ると、昼休みの2人に教室の端に誘導された。
とすぐにまた色を塗られた。
周囲の先生も見て見ぬふりをする。
そして、水をかけられた。
冷たい、辛い。
しかし、あることに気付いた。
絵の具は水性なはずだから、水で消えるはずだと。
しかし消えていない。
これは、絵の具じゃなくて、ペンキなのでは…?
本当にそうならば、もう消えない。
僕は抜け出して、水道で袖を濡らしてみた。
やはり予想通り、全く消えない。
僕は絶望感を感じた。
そして帰り、
靴箱から自分の靴を出そうかした。
何故か重い。
少し靴を傾けると、水が垂れてきた。
僕は、スリッパのまま外へ行き、水を全て流した。
その靴を履こうかしたけど、気持ち悪く、スリッパのまま帰ることにした。
帰っている間、ずっと泣くと共に、『こんな事は人としてやってはいけない。だから僕は絶対に人を傷つけることはやらない。』と決めた。
帰るとすぐに、凛さんの右腕に抱きつく。
「助けて…」
小さい声で言う。というか、そんな声しか出せなかった。
笑えない。笑顔ができない…。
ただ涙が僕を濡らしていくだけ。
凛さんが「どうしたの?大丈夫…?」と聞いてきた。
ただ強く腕を握った。
凛さんが「とりあえずお風呂に…と言ってきたので、僕はお風呂に入った。
上がると、サラダ素麺を作ってくれていた。
『成長したなぁ』と感じた。
食べてしまってからの記憶はない。
多分、寝てしまっていたのだろう。
目が覚めると、タオルケットがかかっていた。
凛さんがかけてくれたのかな?
そういう所、凄く好き。
…本人に言うのは、恥ずかしいけどね。
凛さんは寝ていたのか聞くと、「寝ていない」とのことだったので、後は僕がするからと言い、寝かせた。
テーブルの上には、メモとペンシルがあった。
見てみると、僕の事をどうするか的な事が書いてあった。
本当にいい人だ。凛さんは。
そんな優しい心をもった大好きな人に迷惑を掛けたくない。
そう、思った。
僕はその後、凛さんの寝ている傍に行き、そっと手を繋いだ。
そして「ありがとう。ずっと大好きです。」と耳元で呟いた。
気づかれたかな?
寝顔も可愛いので、そっと写真を連写した。
そんな自分って気持ち悪いなぁと思ったが、好きという感情に嘘はつきたくないので、写真を見まくった。
その1時間後に、凛さんが起きてきたので「散歩でも行こうか」と誘い、外に出た。
雨が降っていたので、僕は自分の水色の傘をさす。
僕のこの心を空が表してくれているみたいだ。
凛さんにその事を言うと、「うん、だね。」と答えてくれた。
その後、そっと後ろを向くと、虹が架かっていた。