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7 - 第7話 迷惑を掛けたくない(白河先生視点)

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2024年01月07日

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あの日以前から、僕への嫌がらせはあった。

話しかけても無視される。

大切な予定を教えてもらえず、会議に遅れて、校長から激怒されたりした。


けれど、凛さんの為に頑張っていた。

僕が本当に大好きな人だから。

僕が弱かったら、あの子は生きていけないと思うから。

僕が守ってあげないと…。


しかし、嫌がらせはエスカレートするばかり。

僕が居ない間に嫌がらせをしている先生達が、僕のクラスの子達に、僕の悪口を広めていたり。

椅子に画鋲を置かれたり。

本当に、

辛い…。


しかし、あの日で僕は限界だった。




朝、職員室に入ると、女性の先生2人がそそくさと駆け寄り、「まだ来てるんだ。」「いい加減先生を辞めればいいのに」「内気な人には合わない職業だから。」など言われた。


僕は「すみません…」としか言えなかった。

本当は物凄く泣きたかったけど、恥ずかしいから必死に堪えた。


そのうち、生徒も話しかけて来なくなった。

本当に1人ぼっちになった。

寂しい。辛い。


生徒からも、給食を注いでもらえず忘れさられていた。



昼休み。

1人でいるのは恥ずかしいから、ロッカールームに籠もって仕事を1人で淡々とやっていた。

すると、いきなり他学年の先生2人が入ってきた。

手には絵の具セットのようなものがあった。

太めの筆にパレット、絵の具入れ、水入れバケツ…。

僕は怖くなり、後退りした。

しかし、僕を挟むようにして、両方に立っている。

僕が逃げようと動くと、2人は追いかけてくる。

ロッカールームのドアも閉められていた。

その途端、身体がひんやりした。

気づくと、絵の具を塗られていた。

僕の心に逆らう様に。

だんだん白色のカッターシャツが、カラフルになっていく。

怖くて何も対抗することは出来ず、ただ身を任せるしかなかった。


チャイムの音と共に、筆が離れた。

2人は笑いながら出ていった。


僕は「はぁ…」とため息を1つ着く。

『こんな姿は誰にも見せられない』と思い、自分のロッカーを探る。

唯一あった、替えのカッターシャツに着替えた。

僕の手元にある、カラフルになったシャツを見つめる。

だんだん悲しくなり、涙が出てくる。

まるで、知らない世界に1人置いていかれたような感覚。


放課後、職員室に戻ると、昼休みの2人に教室の端に誘導された。

とすぐにまた色を塗られた。

周囲の先生も見て見ぬふりをする。



そして、水をかけられた。

冷たい、辛い。


しかし、あることに気付いた。

絵の具は水性なはずだから、水で消えるはずだと。

しかし消えていない。

これは、絵の具じゃなくて、ペンキなのでは…?

本当にそうならば、もう消えない。


僕は抜け出して、水道で袖を濡らしてみた。

やはり予想通り、全く消えない。

僕は絶望感を感じた。


そして帰り、

靴箱から自分の靴を出そうかした。

何故か重い。

少し靴を傾けると、水が垂れてきた。

僕は、スリッパのまま外へ行き、水を全て流した。

その靴を履こうかしたけど、気持ち悪く、スリッパのまま帰ることにした。

帰っている間、ずっと泣くと共に、『こんな事は人としてやってはいけない。だから僕は絶対に人を傷つけることはやらない。』と決めた。


帰るとすぐに、凛さんの右腕に抱きつく。

「助けて…」

小さい声で言う。というか、そんな声しか出せなかった。

笑えない。笑顔ができない…。

ただ涙が僕を濡らしていくだけ。

凛さんが「どうしたの?大丈夫…?」と聞いてきた。

ただ強く腕を握った。


凛さんが「とりあえずお風呂に…と言ってきたので、僕はお風呂に入った。


上がると、サラダ素麺を作ってくれていた。

『成長したなぁ』と感じた。


食べてしまってからの記憶はない。

多分、寝てしまっていたのだろう。



目が覚めると、タオルケットがかかっていた。

凛さんがかけてくれたのかな?

そういう所、凄く好き。

…本人に言うのは、恥ずかしいけどね。


凛さんは寝ていたのか聞くと、「寝ていない」とのことだったので、後は僕がするからと言い、寝かせた。


テーブルの上には、メモとペンシルがあった。

見てみると、僕の事をどうするか的な事が書いてあった。

本当にいい人だ。凛さんは。

そんな優しい心をもった大好きな人に迷惑を掛けたくない。

そう、思った。


僕はその後、凛さんの寝ている傍に行き、そっと手を繋いだ。

そして「ありがとう。ずっと大好きです。」と耳元で呟いた。

気づかれたかな?

寝顔も可愛いので、そっと写真を連写した。

そんな自分って気持ち悪いなぁと思ったが、好きという感情に嘘はつきたくないので、写真を見まくった。


その1時間後に、凛さんが起きてきたので「散歩でも行こうか」と誘い、外に出た。

雨が降っていたので、僕は自分の水色の傘をさす。

僕のこの心を空が表してくれているみたいだ。

凛さんにその事を言うと、「うん、だね。」と答えてくれた。

その後、そっと後ろを向くと、虹が架かっていた。




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