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3話
𝒈𝒐⤵︎ ︎
たっつんがふらつく足取りで部屋へ戻っていくのを見送り、うりはその場に立ち尽くしていた。
まるで全身の血が凍りついたかのように、彼は動くことができなかった。
『メンバーに害がないなら、自分だけ犠牲になればいい』
その思いは、たった一晩で無意味なものになった。
自分が触れたことで、たっつんが苦しんでいる。
その事実が、うりの心臓を鋭く突き刺した。
俺のせいだ。
その日は、もう誰とも顔を合わせたくなくて、うりは自室に引きこもった。
ベッドに横たわっても、頭の中に浮かぶのは体調を崩したたっつんの顔ばかり。
そして、彼の肩でひっそりと黒い紋様を広げ続ける、あの呪いの桜。
このままでは、他のメンバーにも、きっと呪いが伝染してしまう。
そう思った時、うりは決意した。
「…どうにか、しなきゃ」
自分一人で抱え込もうとしたことが間違いだった。
誰にも言わずにいることが、こんなにも大切な仲間を傷つけてしまうなんて。
そう気づいたうりは、いてもたってもいられなくなった。
翌朝、メンバーがまだ寝静まっている時間を見計らい、うりは静かに玄関を出た。
向かう先は、シェアハウスから近い神社だ。
お祓い。
そうすれば、この不吉な呪いを、きっとどうにかできるはずだ。
境内に足を踏み入れると、ひんやりとした空気がうりの体を包み込む。
神社の奥にある社務所へ向かい、彼は祈るような気持ちで声をかけた。
「…すみません、お祓い、お願いできますか」
うりは、どうかこれで全てが解決してほしいと、ただただ願うばかりだった。
うりがお祓いを頼むと、年老いた神主は静かに彼を本殿へと招き入れた。
うりは意を決し、左肩の服を少しだけずらして、黒い桜の模様を見せた。
神主は、目を細めてその模様をじっと見つめた。
長い沈黙の後、神主はゆっくりと口を開いた。
「これは……どうにもできません」
その言葉に、うりの頭は真っ白になった。
神頼みが最後の望みだった。
それなのに、あっさりとその可能性は潰えた。
「これは、人の手で解けるような呪いではありません。人の強い想いが、形となって現れたもの……。お祓いなどでは、浄化できないんです」
神主は静かに語る。
うりの耳には、その言葉が遠くから聞こえてくるようだった。
「…そんな、じゃあ、俺は…どうすれば…」
「原因は不明です。しかし、私が若い頃、一度だけ、あなたと同じような症状の人を見たことがあります」
神主の言葉に、うりはハッと顔を上げた。同じ症状の人。
もしかしたら、その人がこの呪いを解く手がかりを知っているかもしれない。
「その人は……」
しかし、神主は苦しそうに言葉を区切った。
「その人は、やがて全身を黒い桜に覆われ、消えてしまった」
消えてしまった――その言葉が、うりの全身を戦慄させた。
ただの比喩ではない。
まるで、この世から存在そのものが消滅したかのように、誰もその人のことを覚えていなかったという。
「しかも、その人の周囲にいた者たちも、同じように次々と体調を崩していった……。そして、呪いが広がるにつれて、皆から徐々に忘れられていったそうです」
うりは、自分の背筋を冷たい汗が伝うのを感じた。
たっつんの体調不良。
そして、自分に広がっていく黒い桜。
もし、このまま呪いが広がり続ければ、メンバー全員が、そして自分自身が、この世から存在ごと消されてしまう。
……どうすれば
🌸𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎