テラーノベル
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白い廊下に響く3人分のローファーの音に続き、無数の大人の人影が迫り来る
警備員「お前ら!止まれ!目的はわかっている!!」
警備員「社長を殺すな!!」
警備員は洗練された動きで3人に鉛玉を何度も発射するが、3人もそれに対応し、避ける
これがしばらく続いている。
sepia「閃光弾投下。」
後ろに向けて閃光弾が投げられ、一瞬の眩すぎる光が思わず3人の目すらも突き刺しそうになる
3人は走った。
一方、部長と社長は他の部室よりも少しばかり豪華な社長室に集まっていた。
社長「sepia、あいつは完全な裏切り者として1度処理しろ。」
部長「はっ、ですがsepia、柏かな、りさに人員派遣は通用しないようですが。 」
社長「くそ、しょうがない、ビルの構造をぐちゃぐちゃにプログラムし、次となる部長室にたどり着けないようにしろ。 」
部長「はっ、分かりました、社長。」
社長は舌打ちをする
部長は走り、コントロールルームに急ぐ
「認証完了。」
AIの声が聞こえ、コントロールルームへの扉が開く
部長「…よし、急ごう。」
部長も急ぎ、中枢部分でスクリーンを操作する
かな「…っ!?構造が…」
施設の廊下は壁になり、通路になりを絶えず繰り返している
りさ「くそ、邪魔が入った…sepia、スキャン装置とか出せない?」
sepia「いや、出せるけどスキャンは通用しない、セキュリティで俺が解除できんのは部外者がこの施設に入れる権限くらいだ。」
りさ「そう…なら走るしかない、このまま構造を絶えず変えられている可能性がある。」
りさ「…どうすれば…」
体力が尽きるまで_否、尽きても尚、3人は走り続けなければならない。
かな「どうにか___」
かなも走りながら考える
何か打開策があれば…この問題を突破出来るかもしれない_
かな (もうシステム全体が意図的にバグっていると考えた方がいい、麻酔銃…)
かなは廊下を見回す
横には連なる部室への扉、正面では廊下と壁が点滅するかのように切り替わっている
かな (…どこかで作戦会議をしたいな)
かな「2人とも!1度部室に入らない?」
sepia「は、部室…?」
かな「大丈夫、麻酔銃で少しは時間が稼げる」
かな「1度考えないと一生出られないと思う!」
sepia「了解、りさもそれでいいよな?」
りさ「大丈夫。」
適当な部室への扉をバンッ、と思いっきり蹴飛ばす
社員の肩がビクッと跳ね上がり、急いで入口の方を見ると、銃を向けた金髪の少女の髪が揺らめいているのが見えた
社員A「…侵入者!!早く捕らえっ……」
社員B「おい大丈夫か!?お前っぶっ殺…」
弾丸が飛び、次々と社員が倒れる。
一時の時間稼ぎとはいえ、麻酔銃は数時間効くので丁度いいとかなは感じる
かな「はぁ…っはぁ…と、とりあえずここに立てこもろう…」
りさが眠らされた社員をドア前に運び、外側から入れないように塞ぐと、部室の中で3人は座る
かな「…色々と整理しよう?えっとまず…ぐちゃぐちゃになってる廊下から…」
りさ「…うーん、sepiaは施設の内部構造についてどれくらい知ってるの?」
sepia「まぁ、ある程度は分かるつもりだ、でも一般社員が知っているような事しか知らない。」
りさ「例えば?」
sepiaは手を1の形にし、説明する
sepia「1に、権限だとかは社長がほぼ握ってる、社員がいじったりできるのは俺ができる事と同じだ」
ジェスチャーで上がる指の本数を増やす
sepia「2に、社長と部長は仲がいい、信頼できるパートナーみたいな感じだ。」
sepia「3に、この施設は色々な仕掛けがある、今起こってるのは…それの複数をごちゃ混ぜにしているように思う」
かな「なるほど…」
りさ「なら、その複数は何?」
sepia「個人的に確定しているのは上のやつだけが使える”スキャン”と、”座標移動”」
スキャン
即座に建物内の生体反応を全て感知する
座標転移
生体の座標を建物内の別の場所に転移させる
りさ「座標転移ってのがほんとに行われてるなら、一生部長室にはたどり着けない… 」
座標転移が行われるということは、曲がった先が全く同じ廊下というのがずっと続いている可能性もあれば、建物の階が変わり続けている可能性もある。
かな「…スキャン…」
りさ「…かな、どうかしたの?」
かな「これ、なにかに使えそうだと思って」
sepia「…なるほど?」
かな「…sepia、”ネット”って…なにかに活用してないの?」
sepia「すまん、ネットは盲点だった。」
sepia「…ネット…なら、機械が錆びにくくなるのを利用して、シンギュラリティの研究に使ってる、開発部っていう部署が主にネットでロボットと一緒に作業している」
かな「なら、1回そこに入れない?」
かな「そんなに重要な研究に使ってるなら、かく乱くらいになら使えるんじゃないかな?」
りさ「…そうね、試してみるしかない。」
部長「…チッ、あいつら部室から出ようとすらしねぇ」
部長「…?反応が大きくズレて…は?これは…」
sepia「…こっちだ、」
かな「了解!何かしらのシステムに傷をつければいいんだよね?」
sepia「あぁ、そうしたら警告として音が鳴る、3つほど深刻にならない程度の傷を」
りさ「なら… 」
りさは辺りを見回す、重機械が1つ、それに繋がれたように、未知の細長い小型機械がある
りさ「この繋ぐためのものと思われるコードを1つ」
りさ「…これ、コードは何のためなの?sepia」
sepia「開発部には携わったことがないから分からない、そこはすまない。」
sepia「だが、1つなら破壊しても大丈夫だとは思う。」
sepiaの言葉を聞き、りさは即座にピストルを構える
かな (ちゅ、躊躇とかないの…?_いや、そんなこと言ってられないか。)
鉛玉が、機械を繋ぐ細い管を貫くと、繋がれていたと思われる小型機械は倒れ、赤い光が点滅を始める
部長「…開発部、応答せよ、侵入者の生体反応を確認」
開発部員「了解致しました、速やかに対処を…_っ!機械g…………」
強いノイズが耳を劈き、応答がなくなる
部長「開発部…開発部!?おい!応答を…!」
部長「チッ、あいつらを追い出さないと…は…」
部長の後ろから、気配
知らない、社長は女で、後ろにいるのは自分より身長の高い男
こんなやつさっきまで生体反応になかった、誰が
部長が動揺で動きを止めると、強い衝撃が襲う
冷たい鉄の感触だ、幼子が、小さな虫に向ける加虐のように容赦のない、それほどの勢いが。
熱い、冷たい、痛い
そして、ぼやける頭で、最後の声を聞く
「…残念でしたね、敵は3人だけじゃない。」
「3人を中心にしても、無駄ですよ。」
部長は意識を失う、
「あ、あー、エージェント”リボルバー”コントロールルームの無力化を確認。」
待機している時、sepiaがこちらに突然連絡をしてきた。
「今の状態が良くねぇから、マークされてないタイミングでコントロールルームに向かって欲しい。」
「…どうやって?」
「座標を送る、俺らは勝手に転移されててどこにいるか分からねぇけど、リボルバーならマークされてない」
「今からネットで騒ぎを起こす、その間に頼んだ」
リボルバー「了解です。」
リボルバーは、倒れた部長を観察する
左手、目立ったものなし
名刺を首にかけている
右手、どこかで見た指輪がある
足、黒いブーツだろう、スーツと、口元には硬いマスクがある、身体を徹底的に隠そうとしている。
他の社員を見た限りここまで隠しているのは彼だけだ
辺りを見渡す、その流れで自分の手を見る
左手には指輪、傷があれど、特徴は_
リボルバー「待てよ、この人もしかして…」
リボルバー「私と同じ…エージェントの可能性が…」
リボルバーからsepiaに向け、連絡が来る
「部長を気絶させました、これでコントロールルームの稼働が止まったので、座標の転移は無くなるかと。」
「今のうちに部長を調べ、わかったことを共有します。 」
え
「私が倒した”部長”は本当の部長では無い」
「彼は、確実にエージェントです。」
社長「…セメントが戦闘不能か、クソ…面倒なことになった。」
社長「ケヤキも無力化…チッ、自ら行くのも明らか危険で…」
段々、段々追い詰められる
少しの焦りが彼女の顔に汗を浮かばせる
社長「…いや、こういう時こそ冷静にならなくては」
社長「…損害規模は甚大だ……ん、これは新たな侵入者…」
社長「…チッ、セメントと同じエージェントか_」
部長_セメントは、雇われのエージェントだ。
miaの方で雇って、既に5年という月日が流れた、相応の結果を残してくれた彼の終わりが、こうも呆気ないものだとは、彼自身きっと思っていなかっただろう
誰もが目を逸らしていただけで、mia支社という事実をなくし、単体のみでこの会社を見るのなら、もう既に欠陥がむき出されている、いつ崩落してもおかしくない崖なのだ。
_だがそれは、襲撃者側も同じなのだ。
だって、社長という権力者で、マインドコントロールの得意な人間だ。
会社の全てとは言わずとも、彼女は…言うのなら、セキュリティくらいなら、全てを担えるマスターキーだ。
社長は手元のPCをいじりながら、連絡をとった。
ギュイン、と部屋全体に形容しがたい、不快な音が響いたと思うと、コントロールルームから、光が消えた。
リボルバー「…はっ!?な、何故…」
先程までうるさく響いていた 機械特有の風の音が止むと、まるで別世界に1人残されたかのような孤独感が一瞬リボルバーを動揺させる
リボルバー「れ、連絡を!!」
スマートフォンを取り出し、通信を試みる
リボルバー「つ、繋がらない_3人に何かあったら…私は…!!」
コントロールルームがもぬけの殻となる、ただ暗く、静かだ。
コントロールルームが担う制御権は、全て社長のパソコンに移行する
社長「臨時だから仕方がない、とにかく撹乱して、最中に侵入者は全員殺す。」
社長「miaの理念に反したsepia、ケヤキにはより重い罰を…」
社長「チッ、あいつらを雇ってから全て狂った、…やはり人間はクソだ。」
社長からの一報が、代理AIを通じて全ての社員に届く
「総員、聞け。」
「緊急事態がゆえに、このような伝達となってすまない。」
通信を受け取る者のみが閲覧出来るスクリーンが、視界の端に表示される
特殊なプログラムが用いられており、悟られず通信するには最適である。
責任者の言葉に皆が耳を傾ける
「改めて、分かっていると思うが、現在侵入者が施設内で暴れている。」
「現在コントロールルームの電源を全てシャットダウンし、私のPCに制御権を移した。」
「侵入者の目的は私の殺害だろう。」
ご丁寧にsepiaは権限を外されているので、侵入者にこれが伝わることは無いのだ。
「侵入者は4人、3人は技術室、1人はコントロールルームの入口にいる。」
「早急に侵入者の排除を。」
それを最後に、通信は途切れ視界はクリアになった。
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