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何も描くことないし何も書くことなぁい… わーむです。
日本とかの絵でも描こうかな…。
日本受けの小説でも書こうかな…。
降り続く雨は、ロンドンの街並みも東京の喧騒も、すべてを等しく灰色に塗りつぶしていく。
仕事終わりの駅の軒先。
二人の間には、ビジネス上の付き合いというには少し近く、友人というにはあまりに静かな、不思議な距離感があった。
帰宅ラッシュの駅前は、ビニール傘の海だ。
隣に立つイギリスさんは、濡れた歩道を見つめたまま動かない。
どうやら傘を忘れたらしい。普段は完璧な彼が、稀に見せる小さな隙。
彼を放っておくこともできた。
が、この冷たい雨の中に彼を一人残していくのは、自分の胸が少しだけ痛む気がした。
「……あの、イギリスさん」
勇気を出して、自分の傘を広げる。少し大きめの、紺色の傘だ。
「よろしければ、駅のタクシー乗り場まで入りませんか。この雨では、すぐにずぶ濡れになってしまいます」
自分でも驚くほど控えめな提案。
それでも、彼と視線が合うと、心臓が少しだけ速く脈打った。
不運というものは重なるものだ。
会議は長引き、予報にはなかった雨が降り、おまけに傘を持ってくるのを忘れた。
濡れて帰る覚悟を決めようとしたその時、隣から柔らかな声がした。
彼はいつも、こちらが声をかけてほしいタイミングを正確に測っているような気がする。
その慎ましさが、今はひどく救いだった。
「……いいんですか? お邪魔でなければ、お言葉に甘えさせていただきます」
一歩、彼の傘の下へと足を踏み入れる。
狭い空間。
肩が触れ合わないよう、お互いに気を遣いながら歩き出す。
傘を叩く雨音が、まるで世界に二人きりしかいないような錯覚を抱かせた。
「すみません、日本さん。あなたまで濡れてしまっていませんか?」
少しだけ自分の側に傘を寄せようとする彼の手が、私の手に触れそうになる。
私たちはいつも、誰かに囲まれて、役割を演じて生きている。
けれど、この小さな布一枚の下だけは、ただの小さな一人でいられる気がした。
傘を持つ手に、ほんの少しだけ力がこもる。
彼の肩が濡れないようにと意識するあまり、自分の右肩には雨粒が当たっていた。
けれど、不思議と冷たくは感じない。
彼も私も、きっと似ている。
誰にも頼らず、一人で立つことに慣れすぎてしまった。
だからこそ、こうして誰かの体温を感じる距離が、ひどく特別に思えるのだ。
「大丈夫ですよ。……イギリスさん、少し歩くのが速いかもしれません。滑りますから、お気をつけて」
「おっと、失礼。……あなたと歩いていると、この鬱陶しい雨も、それほど悪くないと思えてくるから不思議ですね」
彼の穏やかな微笑みが、街灯の光に照らされる。
目的地まではあと数分。
この静かな孤独の共有が、もう少しだけ続いてほしいと、願わずにはいられなかった。