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朝。
カーテンの隙間から光が入っている。
部屋は静か。
チャンスは先に目を覚ました。
ソファに座ったまま寝ていたらしい。
肩に重み。
横を見る。
エリオットがぐっすり寝ていた。
チャンスの肩に頭を乗せたまま。
「……」
昨日のバーのことを思い出す。
完全に酔っていた。
ネクタイ引っ張って。
キスせがんで。
チャンスは小さくため息をつく。
「ほんと手がかかる」
エリオットはまだ寝ている。
髪が少し乱れている。
チャンスは立ち上がろうとした。
その瞬間。
「……」
動けない。
下を見る。
エリオットの手。
チャンスのネクタイをしっかり握っていた。
指に巻きつけている。
「……おい」
小さく揺らす。
「エリオット」
エリオットは少し眉を動かす。
でも起きない。
ネクタイは離さない。
むしろ少し引っ張る。
チャンスの体がまた近づく。
「……」
チャンスは呆れた顔。
「寝ててもか」
その時。
エリオットが少し目を開けた。
ぼんやりした目。
「……チャンス」
「起きたか」
エリオットはまだ半分寝ている。
でも手はそのまま。
ネクタイを握っている。
チャンスが言う。
「離せ」
エリオットはぼんやり聞く。
「なんで」
チャンスは短く言う。
「立てない」
エリオットはゆっくり瞬きする。
それから。
自分の手を見る。
ネクタイ。
数秒。
「……」
エリオットが小さく笑う。
「またやった?」
チャンスは呆れる。
ゆゆゆゆ
「覚えてないのか」
エリオットは首を振る。
「途中から」
それから。
ネクタイを軽く引く。
チャンスの顔が少し近づく。
エリオットはまだ眠そうな顔で言う。
「でも」
小さく笑う。
「悪くない」
チャンスはため息。
「離せ」
エリオットはしばらく考える。
それから。
「やだ」
チャンスの眉が上がる。
「子供か」
エリオットは少し笑う。
「だって」
ネクタイを指に巻きながら言う。
「こうすると」
軽く引く。
チャンスの顔がすぐ近く。
エリオットがぼそっと言う。
「逃げない」
チャンスは数秒黙る。
それから。
少しだけ笑った。
「逃げない」
エリオットは目を細める。
「じゃあ」
小さく言う。
「キス」
チャンスは呆れた顔。
「朝からか」
エリオットはまだネクタイを握っている。
「うん」
チャンスは数秒見つめる。
それから。
「……一回だけだ」
エリオットは嬉しそうに笑った。
そして。
ネクタイをもう一回引いた。