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母は病気持ちだ。そのため月に一度、病院に出向いて薬を貰う必要がある。

俺は、母の付き添いで病院にきた。

母が医師と話をしている間暇なので、病院の庭に入ってみたは良いものの、ただ木と草と小道があるだけのつまらない空間。ベンチに座って待っているだけじゃ、時間の進みが遅すぎる。

さて、どうしようか。スマホを見るのも好きではないし、本も持ってきていない。なにか暇つぶし出来る物は___。


「あ!ヤバッ!うわあ!!!」


…あ、いた。暇つぶし出来そうなもの。

病衣を着た、車椅子の黒髪の男。焦った声を出しながら、車椅子共々転げたらしい。小道にある、あの石ころで。


「大丈夫ですか?」


横になった車椅子を座れるように立て直して、彼を抱えて乗せた。その間、彼は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていたけど、やられるがままだったところを見ると体の自由が効かないらしい。


「あ、ありがとうございます…。」


「どういたしまして。どこか行きたい場所があるんですか?」


「いや、行きたい場所はないんです。ただ綺麗な天気だったから散歩をしたくなって。」


なるほど、散歩。いい暇つぶしになりそうだ。


「そうですか。なら、俺が押していってあげましょうか?」


「いえいえ!そんな、大丈夫ですよ!」


俺が大丈夫じゃない。暇なんだ。


「いえいえいえ。そんな遠慮なさらずに。ほら、さっきみたいに皆の前で転けたくないでしょう?」


彼はムッと口を尖らせたが、図星だったらしい。直ぐに口を元に戻して、短い溜息を一つついた。


「分かりました。お願いします。」


うん、そう来なくては。

彼の後ろに回ってハンドルを握った。男一人分の重さが乗ってる車椅子なら重いだろうと思って、思いっきり押したら随分前に進んでしまった。つまり、軽すぎる。病気のせいで食べ物が喉を通りずらいのだろう。見た目だけではあまり分からなかったけど、病衣の下は多分、痩せ細って肋が見えている。


_________


「……そういえばお名前、なんですか?」


彼は耐えられなかったのだろう。3分ほど無言で散歩していたから。だから、さほど興味もないだろうに、俺の名前を聞いている。


黒矢 凌くろや しのといいます。君は?」

風見 潾かぜみ らんです。えーっと…。」

「……無理に会話を広げなくてもいいんですよ?俺は無言でも大丈夫ですし。」

「そういうわけには…!僕が、無言は耐えられなくて……。」

「ん、なるほど。なら、俺が話題を提供しますね。バスケは好きですか?」

バスケという言葉を言った瞬間、風見さんは目をキラキラと輝かせて、後ろで車椅子を押している俺に顔を向けた。


「僕、バスケの試合とか、テレビでずっと見てるくらい好きなんです!」


正直、バスケを好きじゃないと広がらない話題だったけど好きそうで良かった。なら、これを聞いたらもっと目を輝かすんだろう。


「俺は、高校のバスケ部に所属してるんですよ。そして、全国大会に出たこともあります。」


案の定、風見さんは目をギラギラに輝かして、俺を観察するように見つめた。


「ってことは、バスケ選手!?生で見たの初めてです!握手!握手してください!」


うむ、悪くない気分。

車椅子の前に立って握手待ちの風見さんに手を差し出した。彼は躊躇なく思いっきり手を掴んで言った。


「あの…!これから一週間に一回、僕に会いに来てくれませんか…!!」


「はい?」


「僕、実は余命が半年なんです!だから、最後の思い出に、友達が欲しくて。」


「いや、…。」


「それに、バスケ選手って聞いて、確信しました!ここで出会ったのは運命なんです!お願いします、どうか…!」


突然すぎるし、正直言うと、迷惑だ。余命が半年ってのは気の毒だと思うけど、そんなのは俺に関係ない。大体、一週間に一回会いに行く?そんな時間ないに決まってる。


「すみません。俺はそういうの難しいです。」


にこやかに微笑んで当たり障りなく。

そう、例えば、何かを断る時、何かを注意する時は、にこやかに微笑んで当たり障りなく、これを意識すれば大抵の人は納得したし、それ以上食い下がることは無かった。

これが潤滑に、見事に、つまらない人間関係を構築してきた方法だ。

だから今回も、風見さんは諦めるはず__。


「っいやです!良いって言うまで、僕この手離しませんから!!」


…予想外。まさか食い下がってくるなんて。

でも、こんな細い手、すぐに振り払える。

俺は、風見さんの手を振り払って、背を向けた。

こんなに面倒くさいことをしてくる人だとは思ってなかった。暇つぶしの為に散歩していたけど、こんなことになるなら彼が転んだ時助けなければ良かった。

「うわあっ!痛!!」


……ん?後ろでまた転けた?

いや、どうでもいい。また助けたら面倒くさいことになるのは目に見えてる。


「痛い!痛いよおーー!!」


………………。はあ…。


「おわっ!」


今度は乱暴に、彼を助けた。

正直助けるつもりは無かったけど、周りの人から、一番近くにいるんだから助けろよ、という視線を節々から感じたから助けただけ。

もう早くここから離れよう。

と思って背を向けたのに、また手首を掴まれた。


「転んで気を引く作戦に引っかかりましたね?絶対友達になってください!じゃないと次こそ離しません!」


……もう限界。しつこすぎるし、うるさい。


「…ああ、いいよ。君の友達になってあげるよ。だけど俺は優しくしないし、日頃の鬱憤を全部全部君にぶつけてやる。それでもいいならいいよ?友達になろうか?」


どうかしていた。イライラの限界だったとしても、こんなに感情的になったことはない。いつもは何を言われても論理的に考えるようにしていたし、理性を保っていたのに。

まあでもいい。これで彼ももう、俺と友達になりたいなんて戯言は言わなくなるだろうし。


「本当!?本当に友達になってくれるんですか!? 」

ん?

「嬉しい!ありがとうございます!黒矢 凌くん!あ、黒矢 凌くんは長いな、じゃあ、凌くん!それと、友達になったんだし敬語無しでいいよね?」

「待って待って。俺、優しくしないって言ったし、日頃の鬱憤を君にぶつける、みたいなこと言ったよね?」


「?、うん、そうだね?」


「え、嫌じゃないの?」


「嫌なわけない!だって友達になってくれるだけで嬉しいんだから! 」

なにそれ。

「あっははははははは!!!」


「な、なんで笑うの?」


「いや、頭おかしいよ、君。あんなこと言われて、そんな嬉しそうにするの世界で君だけだと思うけど?…あはは!!」


笑いが込み上げてくる。こんなに笑ったのは人生で初めてかもしれない。こんなに感情を剥き出しにしたのも。

何かが変わる。そう思った。彼といたら、俺の人生が楽しく感じるかもしれない。今まで、完璧を演じて、当たり障りなく過ごしてきた、この面白みのない人生が。


「んん、そうかなあ…?あ、それと、君じゃなくて、潾って呼んでよ。あと、絶対一週間に一回会いに来てね?半年って結構短いんだからさあ。」


「分かったよ。俺も楽しみになってきたからちゃんと一週間に一回は行くよ。」


「ほんと?」


「本当。それとお母さんがもう診察終わったらしいし、帰るわ。じゃ、また。潾。」


「うん分かった。またね!凌くん!」


__________


この出会いがどんな結末になるかも知らずに。二人は無垢で。

狂うほど愛してるから、いいよね?

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