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あまおう
73
ホウ酸
1,125
#らっだぁ
れーん🌸
3,770
夜。
高い天井。
豪奢な部屋。
窓の外には街の灯りが広がっている。
けれど、その部屋には温度がなかった。
男は書類を眺めていた。
机の上に積み上がった資料。
契約書。
報告書。
取引記録。
その中の一枚に視線が止まる。
”青鬼”。
たった二文字。
男は笑った。
「本当だったか」
報告を持ってきた部下が頭を下げる。
「目撃者は複数です」
「場所は」
「第三区画の市場付近」
男は椅子に深く腰掛ける。
長い指先で机を叩く。
とん。
とん。
とん。
静かな音だけが響く。
青鬼。
数百年。
いや、もっと長い。
その中で、まともに確認された個体は数えるほど。
生まれながらに特殊な力を持つ種族。
それだけではない。
希少。
貴重。
高価。
利用価値がある。
男はそういうものが好きだった。
「確保しろ」
短い言葉。
「生死は」
部下が問う。
男は笑った。
「生きている方が価値が高い」
それが答えだった。
部下が頭を下げる。
その時。
男はふと思い出したように口を開く。
「そういえば」
部下が顔を上げる。
「”ばどきょー”はどうしている」
空気が少し止まる。
部下が答える。
「例の件以降、報告はありません」
男は小さく笑った。
「あいつか」
それだけで十分だった。
何百年も部下を見ていれば分かる。
報告をしない。
隠す。
命令を先延ばしにする。
理由は一つ。
”情が移った”。
「愚かだな」
男はそう呟いた。
けれど。
その声には怒りよりも、
諦めに近い色が混ざっていた。
✦
その頃。
らっだぁは夕飯を作っていた。
平和だった。
本当に。
どうしようもなく平和だった。
鍋の蓋を開ける。
湯気が立つ。
味見をする。
少し考える。
塩を足す。
また味見。
「できたんか?」
頷く。
満足したらしい。
机の上には紙が置いてあった。
『今日は成功』
まだ食べてもいないのに。
気が早い。
金色の彼は少し笑った。
その時。
窓の外で何かが動いた。
らっだぁが顔を上げる。
黒い、影。
一瞬だけ、誰かと目が合った気がした。
赤い瞳。
知らない顔。
次の瞬間には消えていた。
気のせいかと思った。
⋯そう思うことにした。
でも。
何故か、胸がひどく騒いだ。
翌日。
金色の彼は仕事へ向かっていた。
嫌な予感がしていた。
理由は分からない。
ただ、何かがおかしい。
そんな感覚。
路地を歩く。
曲がり角を曲がる。
すると。
見慣れた顔が立っていた。
同じ堕天使。
顔見知り。
「あれ」
その男が笑う。
「珍しいな」
金色の彼は立ち止まる。
嫌な予感が強くなる。
「どうしたんや」
男は肩を竦める。
「いや?」
笑う。
妙に意味ありげに。
「最近忙しいらしいじゃないか」
沈黙。
「別に」
短く返す。
男はさらに笑った。
「”青いの”、元気か?」
呼吸が止まる。
心臓が大きく鳴る。
けれど。
表情は変えない。
変えてはいけない。
「何の話や」
男は答えずに、ただ笑った。
けれど。
十分だった。
知られている。
気付かれている。
どこまで。
誰に。
何人に。
分からない。
分からないからこそ、怖かった。
その日の帰り道。
金色の彼は市場へ向かった。
目的は一つ。
確認のためだ。
噂。
情報。
青鬼。
そのすべてに耳を澄ませる。
聞きたくなかった言葉ばかりが聞こえてくる。
「見たらしいぞ」
「本物か?」
「知らん」
「高く売れるんだろ」
「城一つ分だって」
笑い声。
品定めする声。
興味本位の声。
誰も知らない。
その話題の中心が、
ただ飯を食って、
眠って、
笑って、
『ざこ』
とか言ってくるだけの少年だということを。
金色の彼は奥歯を噛み締めた。
気付けば拳を握っていた。
知らないうちに。
強く。
強く。
帰宅する。
扉を開くと、明かりがついていた。
らっだぁがいる。
いつも通り。
いつもと同じ。
それなのに。
何故か、ひどく安心した。
らっだぁが紙を差し出す。
『おかえり』
いつもの文字。
少し癖のある字。
もう、見慣れてきた字。
それを見た瞬間。
胸の奥が痛くなる。
らっだぁが首を傾げる。
『どうしたの?』
金色の彼は答えなかった。
答えられなかった。
代わりに、らっだぁの頭へ手を置く。
くしゃり。
髪を撫でる。
らっだぁが固まる。
目をぱちぱちさせて驚いている。
金色の彼も驚いていた。
無意識だった。
本当に。
思わず手を離す。
「……悪い」
らっだぁはしばらく固まっていた。
やがて。
紙を引き寄せる。
さらさらと文字を書く。
そして差し出した。
『へんなの』
金色の彼は吹き出した。
らっだぁも少し笑った。
平和な夜だった。
けれど。
二人とも知らない。
その夜。
遠く離れた高い塔の上で。
一人の男が窓の外を見ながら、静かに命令書へ署名したことを。
その紙の内容は、
たった一行。
「青鬼の確保を最優先とする」
雨が降っていた。
まるで、
何かの終わりを告げるように。
NEXT=♡1000
文字の見た目変えるの初めてやってみました(人*´∀`)。*゚+
おもろい…<( ̄︶ ̄)>
コメント
5件
ほんとに…いらんことせんでくれ… らっだぁはただ幸せに過ごしてるだけだぞ?!人の心どこ?! 頼むからこのまま幸せに生きてくれ…