🔥第2章 「はじめての訓練」
入学から一週間後。
雄英体育場には、練習用の人形と焦げた地面の匂いが漂っていた。
今日の課題は――“救助訓練”。
仲間を守りながら、敵を制圧するチーム戦。
⸻
「よし、次のペアは――轟燈矢、哀。」
担任の声に、教室がざわめく。
誰もが視線を向ける。
あの危なげな青い炎と、静かな少女の組み合わせ。
誰がどう見ても、釣り合わない。
哀は小さく息を吸い、頷いた。
隣に立つダビは無言のまま。
だが、その目の奥にはわずかな迷いがあった。
ダビ:「……怪我すんなよ。」
哀:「あなたも。」
短い言葉。
けれど、それだけで十分だった。
⸻
訓練開始。
人形型ヴィランが次々に動き出す。
哀は冷静に動きを読み、ダビの背中を追う。
青い炎が唸りを上げ、敵を飲み込んでいく。
ダビ:「……下がってろ。」
哀:「無茶しないで。」
その声に一瞬だけ動きが止まる。
だが次の瞬間、ダビの炎が暴走した。
青い光が、制御を失って彼自身の腕を焼く。
哀:「ダビっ!」
思わず哀は駆け寄り、彼の腕に触れた。
熱が皮膚を刺す――けれど、手を離さない。
個性が反応し、胸の奥に強い“脈”が響いた。
哀(心の声):「嘘がない……でも、すごく痛い……!」
ダビ:「離れろ、危ないだろ!」
哀:「嫌、あなたが壊れる方が嫌!」
彼女の声に、炎が一瞬だけ揺らぐ。
まるでその心を感じ取ったように。
その時、上空から羽根が舞い降りた。
燃えた地面を覆い、二人の間に風が流れ込む。
ホークス:「おっと、熱烈すぎない?校舎まで焦がす気?」
冗談めかした声。
だが目は笑っていない。
ホークスは哀の手を掴み、彼女を炎から引き離した。
ホークス:「大丈夫?火傷してる。」
哀:「平気……でも、ダビが……!」
振り返ると、ダビは拳を握りしめたまま立ち尽くしていた。
焦げた腕、そして哀の手を見つめる瞳。
その表情に、言葉では言えないものが宿っていた。
ダビ:「……勝手に触るな。」
哀:「あなたが苦しんでたから。」
ダビ:「それでも、俺の炎に近づくな……っ!」
その声は怒りではなく、恐怖に似ていた。
彼は、自分が彼女を焼いてしまうことを恐れていた。
⸻
訓練後。
医務室の外で、哀の手に包帯を巻きながらホークスが言う。
ホークス:「あの炎、君には危険すぎるよ。」
哀:「……それでも、放っておけない。」
ホークス:「君、優しすぎるね。だから惹かれる人、間違えるよ。」
彼の声は穏やかだったが、その瞳の奥には嫉妬が滲んでいた。
哀は何も言えず、包帯を見つめる。
指先に、まだダビの熱が残っていた。
⸻
夜。
誰もいない屋上で、ダビは自分の手を見つめていた。
焦げた皮膚の感覚、そして彼女の小さな手のぬくもり。
ダビ(心の声):「……もう二度と、あいつには触れねぇ。」
けれどその青い炎は、彼の意思とは裏腹に、
静かに、彼女の名前を焼きつけていた。
🌙次章予告:第3章「揺れる心、重なる影」
放課後、ホークスと哀の距離が近づく中、
ダビの炎が“嫉妬”という名の熱を帯び始める――。
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