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数ある画像の中でも特に社屋で近距離に寄り添い何やら話している1枚が
かなり、グッと胸にきた。
う~ん、上司と部下、はたまた先輩と後輩……同僚とでも、この距離感は
微妙な印象を受ける。
手紙の告発のせいなのか、恋人の距離に見えてしまう。
あっ、もとい不倫関係の距離だわ。
ねぇ、38才のおっさんはやっぱ25才の若い姉ちゃんがいいのかよぉ。
やさしくて理知的で何事にも全力投球で一生懸命に立ち向かっていく、尊敬もしていた
夫のことを……気がつけぱ、私はおっさん呼ばわりしていた。
……にしても、善意の人は一体誰なのだろう。
男なのか、はたまた女なのか!
そして善意という主張を鵜呑みにしていいものか、どうなのか。
そう言えば出張に出掛ける日、夫は『今日は2人で行く』と
私に報告してきたように記憶している。
同行者が男性なのか女性なのか、何も言わなかった。
私は何も考えずに同行者は同性の男性だとばかり思っていたのだ。
今のいままで。
もし、これが立場が反対で私が男性と一緒の出張に出掛けることになったとしたら、
私は男性と行くとは言わず夫と同じように2人で行くとだけ報告するだろうか。
異性と二人きりでの出張なら二心はないという証のために
きっと私は夫にちゃんと話して行くだろうと思う。
だが、実際私にはそんな出張など有り得ないし、過去にもなかったわけだし……。
ifで考えてもしようがないと、ひとまず考えるのを止めた。
夫が若い女と……
夫が若い25才と……
36才じゃ、流石に勝てる気がしない。
世間では美魔女と持て囃され、若さを驚異的に保つことのできる羨ましい限りの女性が
昨今増えてきているようだけれど……
それでも、そんな部類に所属するきれいなおばさんでさえも、若さ……
ううんもっと直截的に言うわ、若い肌には勝てないもの。
もし仮に夫がその女にぞっこんなら……
はいぃーっ私の負けっ!
結婚生活、こんなことで悩みたくはなかった。
もうこの時点で、ぼんやりとではあるが私は最悪の場合を描いてもいた。
どんな準備も、準備することは大切だもの。
心の準備、実際どう動くかの準備、ありとあらゆる想定を考えておこうと思う。
なるべく自分の心の傷を最小限に抑えられるように……
自分の心を守るのだ。
どちらにしても、いつ、どんなタイミングでこんなことを夫に
訊けばいいのか。
訊く? 問いただす?
見苦しい人間でありたくないという私のプライドも守りつつ
この問題を解決しなきゃいけないのだ。
突然画像を見せて急襲するのがいいのか、じわじわっと、それとなく
問いただすのがいいのか……悩まし過ぎる。
夫が私と別れる心づもりがある場合は、案外『バレちゃった? 実は……』と
簡単にゲロってくれる可能性もあるような気がするのだが、
ど・ち・ら・に・しようかなっとか、私との離婚までは考えてないけど
若い女との付き合いにもまだまだ未練がある場合、嘘でとぼけて
切り抜けようとするかもしれない。
これまで付き合ってきた年数と結婚生活の中で私が見てきた夫は
女性関係で二股するようなそんな人間には見えないんだけどなぁ~。
年を重ねて自分が若くない年代に入ってみれば、やはり異性に対する
気持ちに変化が出てくるようなこともあるのかもしれない。
一番の最善は、善意の人の単なる勘違いっていう線よね。
それか夫に嫉妬して陥れようとしているだけ、とか。
私は夫、冬也と相手の女性の関係のことも気になったが
手紙の主である自称善意の人についても誰なのか、どんな人なのか
どんな目的があってのことなのか知りたくてモヤモヤした。
結局ヘタレな私は数日経っても夫に問いただすことができないでいる。
◇問いただす
あのような垂れ込みに『最悪の場合を考えて準備をする』なんて考える一方で、
まだ夫に限ってと、半信半疑の自分がいた。
そしてただただ、夫に確認するのが怖くてたまらない自分がいた。
6日が過ぎた頃、流石にかなり精神的に参ってしまい、否が応でも
聞かなければ己の精神が持たないところまできてしまった。
聞きたくない、聞きたくない、
そんな思いでその日もいつもと同じように
訊くなんてできるような精神状態じゃなかったのに、
心と裏腹に気が付くと
私の口が勝手に夫に向けて言葉を発していた。
心が不安で押しつぶされそうになっているのを身体の中にある
何かしらのエネルギーが口を使って私の心を助けようとでもするかのように。
◇ ◇ ◇ ◇
「ただいま~、はぁ、汗かいちゃったよ」
「お帰りなさい……お疲れ様。今日はどんな感じだったの?」
「仕事は、まぁ最近ことにいい感じで進んでるよっ」
「ねっ? この間の出張確か、2人で出掛けるって言ってたわよね? 」
「ン? そうだったっけ?」
「やだ、覚えてないの?」
『2人で出張なんて珍しいから私に報告したんじゃなかったのかいっ。
たまにしかない出来事を普通忘れるかなぁ~、しかもつい最近なんだ
ぜぇ~』
「あぁ、フムフム そうそう、2人だった。
ねぇ、それより腹空いた飯にして!」
『刺身を買ってきてたんだけど、ネタの裏にコッテリわさび塗ってやろうか!』
「そうね、私もそう言われてみればお腹すいちゃったぁ~。
早くご飯にするねっ」
なんか、話してて胸がスカスカして、ドキドキしてきちゃった。
これはいけない兆候なのだ。
こういう傾向は相手と向かい合うにはかなりヤバいのよね。
あがり症が出てきてるっていうか、活舌よく話せなくなりそう。
そんな自分に不利な状況では、とても女性のことなんて上手く追及
できそうにないよぉ~。