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食事会から3日後‥‥‥
テレビ局での仕事で早朝からの打ち合わせの為、ふわぁーと欠伸をしながら廊下を歩いていた。めっちゃ眠い‥‥‥終わったら、午後から練習か‥‥‥。
食事会が終わり、祐希さんにCMについて話をしようと思ったが‥出来なかった。祐希さんを好きだと言うモデルのエリカが気になって‥
そんな事を思っていたら、角を曲がる時‥小走りで走ってきた人とぶつかり、転びそうになるのを慌てて掴み引き寄せる。
「だ、大丈夫ですか？」
「‥ったー、ちょっと、気をつけてよね！どこ見て歩いてんの！」
腕を掴み転ばないように配慮した相手が、急に怒鳴ってきたのでまさかの事に驚き、顔を見つめる。
身長は170以上あるだろうか‥ロングヘアーにとても細いスタイル‥サングラスに細いヒール。‥‥‥そして、香水だろうか？あまり嗅いだことのない匂いがする‥‥。
「ちょっと、聞いてるの？‥‥‥って、やだっ！もしかして‥‥髙橋藍さん？」
グイッと怒りながら近寄り俺の顔を見た女性は、俺が誰か分かると何故か慌てて離れ、サングラスを外した‥
あっ‥‥‥‥。顔を見てすぐにわかった。目の前にいたのは、祐希さんと一緒にCMに出演していたモデルのエリカだった‥‥‥‥。
「ごめんなさーい♡藍さんだとは思わなくって」
「いいですよ、俺も不注意だったし‥」
最初の怒鳴っていた声とは全く違う、可愛らしい声で謝られる‥。チラッと顔を見ると、確かにとても綺麗だ‥大きな瞳に綺麗な鼻筋、誰かにも似てる気がするな‥そんな印象を受ける。
「やっぱりバレー選手って背が高いんですねー。こないだも祐希さんと会った時に思いました♡あっ、私祐希さんと共演したんですー」
「CM俺も見ましたよ。とても素敵でした」
「ええー、見てくれたんですか。恥ずかしい‥もう、祐希さんがとっても優しくてずっとエスコートしてくれてたんです♡」
CMの事を思い出したのか、くすっと笑い‥その瞳を見るとすぐにわかった。ああ‥祐希さんの事が好きなんだと‥‥‥。
そして‥この匂い‥‥‥あまり嗅いだことのない香水の匂いに思わずクンクンと匂ってしまった‥
「あっ♡香水気になります？」
「あっ、すみません、とてもいい匂いだったので‥」
「この香水って珍しいんです。紅茶系なんですけど、アクセントで焼酎が入ってて♡」
紅茶系か‥どうりでレモンティーのような匂いが‥した。
「ところで、藍さん♡祐希さんと同じ代表ですよね？祐希さん、私の事何か言ってませんでした？」
「えっ‥‥あっ、すみません、まだ祐希さんとCMの話をしていなくて‥」
「そうなんですね‥あっ、じゃあ今度祐希さんに会ったら伝えててください。また一緒にお仕事しましょうって。そして、連絡先交換待ってますって♡‥あっ、マネージャーだ、それじゃあ、藍さんよろしく」
手を振り笑顔で駆けていく彼女を見て‥俺は何も言えずただ、手を振り返すしかなかった‥‥‥。
テレビ局での仕事も終え、午後から練習場に向かった。体育館に入ると、そこには‥‥
「げっ‥‥」
思わず口に出てしまう俺を見て彼はニヤリと笑う。
「藍‥失礼じゃない？後輩にその態度‥」
タメ口で話すお前も失礼だけどな‥そう思いながら、背の高い勇斗を見てため息をつく。
今日は、どうしてここに居るのか‥そう考えていたのが顔に出ていたのか、俺の顔を覗き込みながら、また勇斗は笑う。
「くくくっ、顔にでてるよ、藍。今日俺がここに来たのは‥藍に会いに来たから♡」
「はぁ？」
「酷いな。まあ、一番の理由は監督に呼ばれたからだけどね‥ってわけで藍の練習も見ていくから‥よろしくね」
何がよろしくなんだか‥‥‥。意味ありげに俺の肩を叩いて勇斗は監督の元に走っていった‥。
勇斗Side
めんどくさ‥‥今日だけで何回思っただろうか‥バレーを始めたのもただ背が高いってだけで推薦され、始めると女達がキャーキャー言うから続けただけだった。特に意味はない。
全く興味のない長い話を続ける監督を眺めていたら‥いつの間にか終わったので、帰る前に練習風景を覗いていくことにした。
コートを見ると、ちょうどゲームが行われていた。（アイツうまいな‥）何人かの選手を見て思うがその中でも‥やはり何故か藍に目がいってしまう‥
オールラウンダーだけあって、高いレシーブ力と跳躍力、力強いスパイクやサーブを兼ね備えている。一際目立つ存在感。
決まるたびに嬉しそうに仲間とハイタッチを交わしている‥
（俺と話してる時と全然違うじゃん）
まぁ、藍は俺が嫌いそうだから、仕方ないか‥。しかし‥あんなに笑顔を振りまいてるのは‥
「‥面白くねぇな」
誰に言うわけでもなく、ぽつりと呟く‥。
練習も終わったようなので、帰宅する為、駐車場に向かうことにする。いつの間にか最期まで見てたなんてな‥自分でも笑えるぐらい俺は何をしたいのか、よく分からなかった。
‥途中、練習後の藍が、廊下で立ち尽くしているのを見かける。周りには誰もおらず、一人のようだ。
よく見ると、1枚のポスターを凝視しているようだった‥その顔を見て、
（あの顔‥CM見てた時と同じ顔だ‥）
やるせないような、切ない表情にも見えたあの顔‥
ぐいっ！！
「った！‥なっ、何なんだよ、急に！？」
自分でも驚くぐらい、気付いたら藍の肩を掴み、こちらを向かせていた‥。
振り向いた顔は‥急に掴まれ振り向かされたせいもあって、少し赤く怒りの色が滲んでいる。
何故かは分からないが、横顔を見たとき、藍が泣いているんじゃないかと思った‥。
「返事もないん？用がないなら帰るから、お疲れー」
そう言うと藍はスタスタと歩き出していた。その後ろ姿を眺めながら‥何を見ていたんだろうと藍が見ていたポスターを見ると‥
（なんだ、この前のCMのキャプテンのやつじゃん）
メガネブランドのCMのポスター。しかし、そこにはエリカは映っていない‥キャプテンだけが映っているポスターだった‥。
（キャプテンしかいないじゃん‥）
何故あんな顔で見つめていたのか‥‥‥。
無性に何故かそればかりが気になっていた‥‥‥‥‥
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