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店を出て二人はシゲさんからもらったワインに合うおつまみをお店で選ぶ。「なんかいつも悪いなぁ……こんないいワイン」
「私たちだけよ、こんなにしてくれるの」
「そうなん?」
「最近若い人はスーツをオーダーすることないし、シゲさんは娘さんしかいなくて彼が引退したらあの店閉めてしまうしね……私たちのことを息子のように思ってるとか言ってた」
「……そうなんだ。跡継ぎがいないのも寂しいよね」
ふとそう湊音が言った後、自分たちもだなと思いながらも前みたいに気まずくなりたくないのかアレコレおつまみを物色する。
「ミナくんの遺伝子は残ってるんだからさ……跡継ぎはあるじゃない、あなたには」
「ん、まぁ……」
「今度会うんだって?」
「うん……なんか息子が剣道教えてほしいって」
「いいじゃないー。きっと腕いいわよ」
「李仁は嫌じゃないのか」
「なんで? 生ませたら会わずにおしまいよりかはいいけど」
「養育費も払ってないし、今更父親ヅラしてもさ……」
湊音は動揺して普段食べないブルーチーズを手に取る。
「それに同性愛者だって知ったら……」
「そんなこと気にしてるの。まだ教えるのは先の話でしょー」
「だよな、まだ小学生のチビにはハードモードすぎるか」
ブルーチーズを戻した。
「私のことはなんて紹介するの?」
「……それなんだよな」
普段は互いに人から聞かれたらパートナーと答えている。前はとっさに夫と言ったことがあった湊音だがどっちが夫で妻でとかは考えたことがない。
ベッドの中もどっちがどっちとは決まってないわけだと思いながらも。
「まぁ仲良くしていたら父親の大切な人、て思ってくれるんじゃない?」
「なのか……?」
「父親が幸せにしてたらそれでいいのよ。ねっ」
李仁がそう言って微笑んで湊音の手に持っていたブルーチーズを棚に戻した。
湊音はハッとして
「てかさ、何気に僕の話にシフトしてシゲさんの話を流そうとした?」
「え、なんのこと?」
「絶対シゲさんは李仁の好きなワインだってくれたんでしょ、これ」
「そうかのかしら?」
「ぜったいそうだって」
「まぁ昔からご贔屓してますから。て、ミナくんーヤキモチ? ふふふ」
「もう嫌ーっ!」
「かわいい、ミナくん」
重苦しい話も最後は笑って終わる。不思議な2人である。
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