テラーノベル
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____光が漏れていた。
「仁人? おーい、生きてるか?」
五度目の、三日前。
俺は、もう起き上がる力もなかった。
布団の中で丸まり、子供のように声を殺して泣いた。
「仁人ー? 本当に大丈夫か?」
勇斗が心配そうに布団の上から俺の背中を叩く。
その感触が、前のループであいつが自ら命を絶った事実を突きつけてくる。
何をしても無駄なんだ。
俺が守ろうとすればするほど、勇斗は死へ引き寄せられていく。
まるで、この世界に「佐野勇斗」という存在が許されていないかのように。
『 ……はやと、』
「ん? なに?」
『……ごめん。本当に、、ごめん…っ』
「何が?笑」
『…。』
「怖い夢でも見たか?」
『ごめん…ごめ..っ,,』
「…もぉ…おいで仁ちゃん」
勇斗は俺を優しくあやすように抱きしめて、笑った。
その屈託のないいつもの笑顔で。
俺は、もう物理的に守るのをやめた。
刃物を取り上げることも、外に出るのを禁じることもしなかった。
その代わりに、ただ、勇斗のそばにいた。
太智、舜太、柔太朗も集まって、いつも通りに過ごした。
俺がいつもより、異常に静かになったのを心配してか、三人は気を遣って面白い話をたくさんしてくれた。
勇斗は心の底から楽しそうに笑っていた。
そして、その笑顔を俺は網膜に焼き付けるように見つめ続けた。
二日目、三日目。
死の影は、静かに忍び寄っていた。
勇斗がふとした拍子に躓く。
空が急に暗くなる。
そのたびに俺の心臓は止まりそうになるが、俺はただ、勇斗に触れた。
体温を確認するように。
そして、三日目の夜。
かつて勇斗が交通事故に遭った、あの交差点が見える公園のベンチに俺たちは座っていた。
「…仁人さ」
『ん?』
「最近ずっと、俺が明日いなくなるみたいに見てくるよね」
勇斗が、オレンジ色の街灯に照らされながら言った。
「でもさ、もしそうなっても、俺は幸せだったよ。仁人とこうして笑ってられたから」
喉の奥が熱くなる。
物理的なガードじゃない。
勇斗が「死にたい」と思わず、運命が「死ね」と言えないほどの、もっと根源的な何かが必要だったんだ。
俺は、震える声で口を開いた。
俺らしくない。
そんなことは分かっている。
でも、今まで一度も、照れくさくて、当たり前すぎて、言えなかった言葉。
『…勇斗…愛してるよ、』
勇斗が、目を見開いた。
『友達とか、親友とか、そんな言葉じゃ足りないくらい、愛してる。……だから、生きて。俺のそばで、明日も、明後年も…俺と一緒に生きて。俺と一緒に笑って。毎日愛してるって言わせて』
勇斗は一瞬、呆然としていたが、やがて噴き出すように笑った。
「はは笑んなの当たり前だろ? 何だよ急に、仁人らしくないこというじゃん」
『……真剣なんだよ』
「分かってるって。…俺もだよ。俺も、愛してる」
勇斗が、俺の肩を抱き寄せた。
その瞬間、時計の秒針が、今までとは違う音で刻まれた気がした。
夜が明ける。
四日目の朝、俺が目を開けると、そこには「三日前」ではない景色があった。
隣で、勇斗が盛大にイビキをかいて寝ている。
窓の外には、四日目の太陽が昇っていた。
カレンダーは、あの日を超えて、新しい日付を刻んでいる。
俺は、まだ眠っている勇斗の温かい手を握りしめた。
もう、戻る必要は…願う必要はない。
『…おはよう、勇斗。もう朝だよ、』
返ってきたのは、寝ぼけた「おはよ」という掠れた声。
『愛してるよ』
「俺も…愛してるよ」
それは、俺が何度も何度も夢に見た、世界で一番愛しい続きの音だった。
end.
コメント
8件

泣きました…最高です…素晴らしい作品書いてくれて本当にありがとうございます😭😭😭
ありがとうございます!! 途中にさのじんのどちらかが不憫な目に合って、最終的にハピエンになるっていうシチュが大好きでして…。
ありがとうございます😭😭😭久しぶりに小説で泣きました😭最高です‼️
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