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『 拾い物と、その飼い主 』
降りしきる雨の音で、アパートの階段を上がる足音が消される。 大学生、佐野勇斗は、自宅のドアの前に丸まっている「それ」を見つけた。
泥に汚れたパーカー、細い肩。 声をかけると、顔を上げたのは驚くほど綺麗な顔立ちをした少年だった。
「……行くところ、ないの?」
佐野が問いかけると、少年は震える唇で「捨てられた」とだけ答えた。 それが、吉田仁人と佐野勇斗の始まりだった。
仁人を拾ってから一ヶ月。 佐野の生活は一変した。大学の講義が終わればすぐに帰り、仁人に食事を与え、清潔な服を着せる。仁人はまるで捨てられた仔犬のように、佐野が帰宅する足音だけで顔を輝かせた。
「勇斗くん、おかえり」
「ただいま、仁人。今日もいい子にしてたか?」
佐野が頭を撫でると、仁人はうっとりと目を細めてその手に頬を寄せる。 その瞳には、救い主である佐野しか映っていない。それが佐野の歪んだ独占欲を激しく刺激した。
ある夜、狭いベッドの中で、仁人が震える手で佐野のシャツを掴んだ。
「ねぇ、勇斗くん……。僕を、また捨てたりしない?」
不安げに見上げる仁人の潤んだ瞳。佐野は仁人の腰を引き寄せ、耳元で低く囁く。
「捨てないよ。……でも、俺がいないと生きていけない体にしてあげる」
佐野の大きな手が、仁人の細い首筋から背中へと這う。 優しく、けれど拒絶を許さない強さで、仁人の服の中に滑り込んだ。
「っ、あ……勇斗、くん……」
仁人の吐息が熱を帯びる。佐野は、自分なしでは呼吸もままならないほどに、仁人を快楽の渦へと突き落としていった。
深夜、絡まり合った体温の中で、仁人は佐野の胸に顔を埋めた。
「勇斗くんがいれば、もう、何もいらない……」
「そうだよ。仁人は俺だけのもの。……分かってるだろ?」
佐野が見せる、若さゆえの過剰な支配欲。 仁人が求める、居場所への渇望。 それは傍から見れば危うい檻のようだったが、二人にとっては世界で一番甘く、安全な場所だった。
雨の夜、ドアの前で始まった関係は、もう引き返せないほど深く、熱く、互いの身を焦がし続けている。