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煌びやかなシャンデリアの光が、王宮の大広間を埋め尽くしている。
宝石を散りばめたドレスに、着慣れない高いヒール。
鏡の前で何度も確認した自分の姿に自信が持てないまま、私はシュタルク様の腕にそっと手を添えて会場に入った。
「……メリッサ。あまり俺から離れないように」
低い声で囁くシュタルク様は、今夜も驚くほどに凛々しい。
漆黒の礼装に身を包んだ姿は、周囲の令嬢たちの視線を釘付けにしている。
けれど、当のシュタルク様はどこか機嫌が悪そうだ。
眉間の皺は深く、私の手を握る彼の指先には、微かな熱と強張りが混じっている。
「はい、もちろんです!シュタルク様のお側が、一番安心しますから」
私が笑顔で答えると、彼はなぜか視線を逸らして、小さく「……そうか」とだけ呟いた。
会場を歩くたび、他国の貴族だと思われる方々から視線を感じる。
けれど、今の私の頭の中は、並べられた豪華な料理でいっぱいだった。
「見てください、シュタルク様!この鴨のロースト、オレンジのソースがとってもキラキラしています。あちらのカナッペも、まるでお花畑みたい……!」
思わずパァッと顔を輝かせると、シュタルク様が呆れたように私を見た。
「メリッサ、そんなに身を乗り出さなくても、料理は逃げない」
「だって、すごく美味しそうなんですもん……あ! シュタルク様、これ!このパイ包み、中身がとってもジューシーですよ?ほら、あーんしてくださいっ」
フォークに刺した一口サイズのパイを、彼の口元へ差し出す。
公爵夫人として、もっと淑やかに行動すべきなのは分かっている。
けれど、彼と一緒に美味しいものを共有できるのが嬉しくて、ついつい尻尾を振る子犬のように浮き足立ってしまうのだ。
「……ふう、まったく」
毒気を抜かれたのか、シュタルク様の険しかった表情がわずかに和らいだ。
彼は困ったように溜息をつきながらも、私の差し出したパイを大人しく口に含んでくれる。
「……美味しい、ですか?」
「あぁ。……君がそうやって嬉しそうに食べているのを見る方が、毒気がなくなる」
「毒……?」と首を傾げる私を余所に、シュタルク様は一瞬だけ
会場のあちこちから「品定めするような視線」に、鋭い冷徹な眼光を飛ばしていた。
宴も中盤に差し掛かった頃。
「少し、飲み物をもらってくる。すぐに戻るからここで待っていてくれ」
そう言ってシュタルク様が数秒、私の元を離れたときだった。
「おや、一人でお留守番かな? 麗しい公爵夫人」
不意に、ねっとりとした声が背後から響いた。