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テラーノベル(Teller Novel)
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二人を俺の部屋に入れると、とりあえずミノリと一緒にちゃぶ台の近くに座らせた。その間に俺はお茶をいれた。


「……粗茶ですが」


今のは俺の『死ぬ前に誰かに言いたいセリフランキング』に入っている。何位にランクインしているかは想像してくれ。

ちなみに、俺がミノリのとなりに、例の二人は俺たちの向かい側に座っている。


『……………………』


気まずい……非常に気まずい……。誰か俺と代わってくれ……。

俺はそう思っていたが、ミノリ(吸血鬼)と目の前の少女たちの仲を取り持つ重要な任務があることを思い出した。

まあ、それのせいで俺がなんとかしなくてどうする! というわけのわからない使命感を感じてしまったのだが……。

俺が『仲間を歓迎しよう会!』という町内会のイベントのような会議を開こうと決意した直後。

ミノリの周囲から、自分の敵だと認識した者を即座に、あの世送りにしてしまいそうなオーラが俺の方にまで放たれていた。

まったく……勘弁してくれよ。

俺は一度、深呼吸をしてから会議を開くことにした。吸って吐くだけの動作だが、これだけでも人は心を落ち着かせることができる。深呼吸を考えた人は天才だと思った。それじゃあ、そろそろ始めるとしよう。


「えーっと、ようこそ我が家へ……かな? まあ、警戒しているとは思うが、まずは自己紹介といこうか。これから仲間になるんだし」


俺がそう言うとミノリが口を挟んできた。


「あたしは、まだ認めてないけどね」


それを聞いた俺はとっさに誤魔化した。


「い、今のは冗談だ! だから、その……気にするなよ?」


だが、二人はキョトンとしていた。意外とメンタル強いんだな。

そう思いながら、ミノリを見ると、頬を膨らませた状態で俺を見ていた。

どうして怒っているのかは分からなかったが、俺はミノリの頭をポンポンと撫でた。

俺は、少しおとなしくしてくれよ、というサインを出したつもりだったが、ミノリは少し嬉しそうな顔をしていた。

よく分からないが機嫌は良くなったようだったので、会議を続けた。


「……えーっと、じゃあ、俺からいくぞ。はじめまして、俺は『本田 直人』。一応、ミノリの未来の結婚相手らしいけど、まあ仲良くしてくれ。短いと思うが俺にはあまりこれといった特技がないから、俺のことはこれから知ってもらえると助かる。それじゃあ、次は……ミノリだな」


俺がミノリの方を見た時、ミノリはなぜか笑っていた。

ミノリはアニメに出てくる悪役のような笑みを浮かべていた。

何をするのか心配だったが、ここはあえてミノリの好きなようにさせてみることにした。まあ、いざとなったら止めるけどな。

するとミノリはなぜか、スッと立ち上がった。二人を罵るつもりか!

しかし、そんな心配をする必要はなかった。


「コホン……。あたしはナオトの未来の妻『ミノリ』よ。この名前は、未来の夫であるナオトに付けてもらった大切なものだから、あたしがいない時にバカにしたり、影でクスクス笑ったりしたら、すぐにあの世に送ってあげるから、覚悟してね? あっ、あと、あんたたちにナオトをあげるつもりなんて、これっぽっちもないから、間違っても手を出さないでね? あんたたちに言いたいことはたくさんあるけど、今回はこれくらいで許してあげるわ……以上よ」


そう言うとミノリはスッと座った。

その直後、ミノリは俺に、さっきまでの笑顔はあんたが見た幻覚……そうよね? というサインを送るかのように微笑みを浮かべた。

俺は苦笑いを浮かべると二人の方を見た。

色々とバタバタしていて気がつかなかったが、目の前にいる二人は……とても可愛かった。

それにしても、彼女たちモンスターチルドレンは白いワンピースしか着ないのだろうか……? まあ、約一名、例外がいるが……。

しかし、これはこれでいい。まだ性に関する知識がないからかもしれないが、彼女たちからは負のオーラが全く感じられない。

お姉さん(?)の方は、アゴの少し下まである横髪が窓から差し込んでくる光に照らされて、いっそうきれいに見える。

つい頭を撫でてしまいそうな、それでいてフワフワしていそうな茶髪。

この子は……いや、この子こそがまさに天使だ。俺は心の中で、そう呟いた。

そして妹(?)の方は、お姉さんの後ろに隠れていて見えないが(お姉さんの耳は髪の色と同じ茶色)この子の耳と髪の色が真っ白なのは分かった。

それと、この子にはお姉さんの方にはないものがある。それは『人見知り属性』だ。

お姉さん(?)の後ろにずっと隠れていて姿を現そうとしないが、じーっとこちらを見つめる目は、ジト目(?)というか、何を考えているのかよく分からない目だった。

俺は彼女の目を見ているうちに、いつのまにかずっと自分を見ていてほしい! と思えるほど、その目の虜になっていた。

どちらも今すぐにモフモフしたいが、ロリコンだと思われたくないので、今は控《ひか》えておこう。

俺がそう考えていると、お姉さん(?)が俺の方を見てきた。

どうやら自己紹介をしてくれるようだ。俺は小さく頷いて、了解! というサインを出すと、彼女はゆっくりと立ち上がった後、自己紹介を始めた。


「えっと、わ、私とこの子は一緒にこの世界にやって来ました。だけど、未来の結婚相手が見つからなかったので、この辺りを二人で歩いていました。それから散々歩き回って、ようやく辿《たど》り着いた場所がここでした。でも名無しの私たちには、この世界を救うことができません。でも、やっぱり世界を救いたいと思ったので、私たちはお二人の様子をこっそり見ていました。だから、その、もしよかったら、私たちの名前も付けてもらえませんか? よろしくお願いします」


えー、要するに、未来の結婚相手が見つからないと、この子たちのような『はぐれモンスターチルドレン』があちこちに出現して、自分を受け入れてくれるような人を探すということだな。

けど、話の流れ的に俺がこの子たちにも名前を付けてあげないといけないのではないだろうか……。

ミノリは俺が付けた名前をきっと誇りにしているだろうから、この子たちの名前も俺が付ける……なんてことを言ったら、きっと反対するんだろうな……。


「それは別に構わないが、問題はミノリが許可するかどうかだな」


しかし、ミノリは俺の予想とは全く異なることを俺に言った。


「別にいいわよ、それくらい。というか、名無しのままじゃ、何かと不憫《ふびん》でしょ? まあ、そういうわけだから、この子たちの名前もあんたが考えてあげなさい」


ななな、なんと、あっさり許可が下りた。


「お前、反対じゃないのか?」


「えー、だって、あたしたちは名前がないとあっちの世界に戻れないし、名前があった方が呼びやすいでしょ?」


「じゃあ、俺がこの二人に名前を付けてもいいのか?」


「ええ、もちろんいいわよ。可愛い名前を付けてあげてね!」


「……分かった。じゃあ、この子たちに、とびきり可愛い名前を付けてやるとしよう。あっ、そうだ……。ミノリ」


「ん? なあに?」


「その……ありがとな」


「え? あたし、何かしたっけ?」


「いや、色々な意味で、だよ」


「ふーん。まあいいわ、早く二人の名前を考えてあげて!」


「ああ! 任せとけ!!」


そんなやりとりをした後、俺は二人の名前を考え始めた。

すると、今回もあっさりいい名前が思い浮かんだ。俺は名前を付けるのが得意なのか? と自身に問うた。

だが、今は二人に自分が考えた名前を言う方が先だ! という答えが出たため、俺はスッと立ち上がった。

そして、一人ずつ名前を発表した。


「じゃあ、まずは、お姉さんの方からだ。お前の名前は今から……マナミだ」


「……マナミ。それが私の名前……。とっても可愛い名前です! そ、その……あ、ありがとうございます! ナオトさん」


「おう! これからよろしくな! マナミ!」


「は、はい!」


「よかったわね、マナミ。これからよろしくね!」


「う、うん! これからよろしくね! ミノリちゃん!」


よし、どうやらうまくいったみたいだな。この調子でいこう。

だけど、この子はちゃんと喋れるのかな? 一度も声を聞いていないのだが……まあいいか。


「じゃあ、妹の方の名前を発表するぞ。お前の名前は今から……シオリだ」


「……シオリ……。うん、悪くない。ありがとう、お兄ちゃん。これからよろしくね」


「おう! よろしくな! でも、お兄ちゃんはちょっと恥ずかしいかな……。俺、一人っ子だし」


「ううん、私にとってはお兄ちゃんだから、ナオトお兄ちゃんって呼ぶ」


「え、えーっと、まあ、これからよろしくなシオリ」


「うん、これからよろしくね。ナオトお兄ちゃん」


名前を付けるのって、楽しいな。こういう仕事があればいいのに……。

その直後、俺は彼女たちにやってもらいたいことを言うことにした。


「あー、お前たちに一つ頼みがあるんだが、いいかな?」


「なに?」


「な、なんでしょうか?」


「なあに?」


「それはな、晩ごはんを作るのを手伝うことだ。今日はカレーにするから役割を決めてから、やるんだぞ?」


『はーい!!』


ということで、マナミ(茶髪ショートの獣人)とシオリ(白髪ロングの獣人)が仲間に……いや、家族になった。

ミノリ提案(?)の仲間集めは、まだ始まったばかりだが、今は美味しいカレーを作ることに集中するとしよう。

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