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雪月❄️
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翌日の放課後、学校の昇降口はいつも以上の喧騒に包まれていた。突然の激しい土砂降りによって、部活が中止になった生徒や、傘を持たずに足止めされた生徒たちが下駄箱の前にひしめき合い、騒がしい声がコンクリートの壁に反響している。高校2年生の深澤は、他クラスの友人たちに
モブ「深澤、傘入ってく?」
と声をかけられ、笑顔で手を振っていた。
深澤「あー、大丈夫。俺、ちょっと職員室に用事あるから、先行ってて」
友人たちが雨の中へ走っていくのを見送り、昇降口の波が引いて完全に静まり返るのを待つ。深澤が一人で自分の下駄箱を開け、ローファーを取り出そうとした、その瞬間だった。
岩本「深澤先輩」
背後から響いた、低く掠れた声に、深澤の肩がビクッと跳ねた。振り返ると、そこには自分の下駄箱の前に立ち、ブレザーのポケットに手を突っ込んだ岩本がいた。周囲にほとんど生徒がいないこの空間で、岩本の鋭い瞳は、真っ直ぐに深澤のことだけを射抜いていた。
深澤「……っ、岩本。お前、まだ残ってたのかよ」
心臓がドクンと嫌な高鳴りを上げるのを隠すように、深澤はぶっきらぼうに鍵を閉めた。岩本は無言のまま距離を詰めると、自分の大きなビニール傘を、深澤先輩の目の前に差し出した。
岩本「俺、傘あるから。先輩、持ってないでしょ。……一緒に入ろ」
深澤「は!? //いや、いいよ、まじで。こんな大荷物の男二人で相合い傘とか、他の奴らに見られたら変な噂立つだろ/」
深澤は顔を赤くして断ろうとした。誰のことも特別にしないことで守ってきた自分のモテ先輩としての平穏が、岩本の真っ直ぐすぎる好意によって壊されかけている。その周囲の視線に対する「恐怖」と、岩本を意識してしまう「戸惑い」が、どうしても彼を躊躇わせていた。だが、岩本は一歩も引かなかった。差し出した傘を引くこともせず、一回り大きな体躯で深澤先輩の視界を塞ぐ。
岩本「周りなんか関係ない。俺は、先輩が雨に濡れて風邪ひく方が嫌。……それに、噂になっても別にいい。俺は本気だから」
岩本の言葉は、優しさというよりも、これ以上ないほど強烈な執着だった。付き合ってほしい、という言葉はまだ口にしない。ただ、深澤の曖昧な境界線を、自らの熱量でじりじりと侵食していく。
深澤「お前さぁ……まじで強引すぎ……」
深澤はカバンのストラップを強く握りしめ、耳の裏まで真っ赤に染めながら視線を地面に落とした。いつもなら器用に笑顔で壁を作って逃げるはずの深澤だったが、この強面の後輩に正面から本音をぶつけられると、どうしても最後の一線を踏み越える踏ん切りがつかない。
岩本は、深澤のその躊躇いを見透かすように一瞬だけ切なそうに目を細めたが、すぐにその大きな手で、深澤先輩の手を傘の柄ごと上から優しく、だけど拒めない力強さで包み込んだ。
岩本「すぐじゃなくていいから。……でも、俺、絶対に諦めないよ」
まだお付き合いはしない。だけど、重ねられた手のひらから伝わる岩本の熱い体温に、深澤の心は激しく揺さぶられていた。土砂降りの雨音が昇降口に冷たく響く中、防戦一方のモテ先輩と、一歩も引かない強面後輩の、焦れるような真夏の夕暮れが続いていくのだった。
改めて言います!
フォローワー様がついに
100人に行きましたーー👏
まだまだ増えて欲しいのでこれからも宜しくお願いします♪
コメント
1件
昇降口の土砂降り、傘の柄ごと手を重ねる熱。まだお付き合いじゃないのに、岩本の「本気だから」が重くて真っ直ぐで……深澤先輩の戸惑いと耳の赤さが痛いほど伝わってきました。防戦一方の先輩と一歩も引かない後輩、この焦れったさがたまらないです。続きが気になります!