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ゆうき あきや
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友ゴリラ
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第204話:究極の経費削減メソッド〜北海道という名の『無料3Dスタジオ』〜
北海道、帯広市。
深夜の四畳半アパートに、波の音と釣り竿がしなる快音が響き渡っていた。
『きたきたきたーっ! 大物だよこれ!』
PCモニターの中で、実写の荒々しい磯の風景と、そこに見事に合成された可愛いアニメ調の美少女アバターが、釣り竿を握りしめて歓声を上げている。
現在、ネット界隈で破竹の勢いを見せている大人気プロジェクト『う○む○め』の動画である。
「……すごいよな。何度見ても圧倒される」
俺——株式会社インフィニティ・ワン代表取締役社長、秋谷雪(40歳)は、配給された塩昆布玄米を齧りながら、モニターに食い入るように見入っていた。
ただ可愛い女の子がゲームをするだけの配信ではない。
現実の泥臭いアウトドア(釣り)の風景と、バーチャルな存在であるVTuberが完全に融合している。
大自然の中で奮闘するタレントの姿は、視聴者に圧倒的な『リアルな共感』と『非日常のエンタメ』を同時に提供していた。
ディスコードの向こうで、冷徹秘書である結愛(ゆあ)がキーボードを叩く音を響かせる。
『確かに、素晴らしいコンテンツ力です。しかしルシフェル様、これを我が社で再現するとなると、立ちはだかる最大の壁があります』
「壁?」
『はい。ジェミニ先生、一般的なVTuberが実写ロケを行う場合の【経費】を算出してください』
ピロンッ、と無機質なシステム音が鳴り、我が社の最強AIアシスタントが冷徹な数字を弾き出した。
『解説します。通常、VTuberを現実の風景に合成するためには、高度な3Dトラッキング機材が必要です。都内のモーションキャプチャースタジオを借りた場合、1日あたり約20万円』
俺は思わず、玄米を喉に詰まらせそうになった。
『さらに、地方へのロケ費用。カメラマンや音声などの技術スタッフを最低2名雇うとして人件費が10万円。ロケバスの手配、宿泊費、機材運搬費を含めると、1回のロケで【最低でも50万円以上の経費】が吹き飛びます』
「ご、ごじゅうまん……!?」
『はい。大手事務所ならいざ知らず、社長個人の財布に小銭しか入っていない我が社が手を出せば、即座に資金ショートを起こして倒産します』
ジェミニ先生の無慈悲な宣告に、結愛が「おわかりですか?」とばかりにため息をついた。
『これが、VTuber業界が完全なレッドオーシャンでありながら、ロケ企画に手を出す個人勢が皆無である理由です。圧倒的な【資本力の壁】があるんですよ』
だが。
俺の心の中で燃え上がった反逆の炎は、その程度の数字では決して消えなかった。
「……それは、東京の連中の話だろ?」
俺の低い声に、結愛のタイピングの手がピタリと止まった。
「スタジオ代が20万? ロケバスとスタッフで30万? 笑わせるな。俺たちには、そんなもの1円も必要ない」
俺は立ち上がり、四畳半の窓から帯広の夜空を指差した。
「結愛、ジェミニ先生。よく見ろ。俺たちが今いる場所はどこだ?」
『……北海道、十勝地方です。それが何か?』
「北海道の面積は、日本の約22パーセントを占める。見渡す限りの大雪山系、日高山脈、果てしなく続く原生林。日本最大のスケールを誇る大自然が、アパートのドアを開ければすぐそこにあるんだぞ」
俺は、自分の天才的なひらめきに震えながら言葉を続けた。
「天井の高さは無限大。照明は太陽光で完全無料。風も雨も、最高品質のリアルエフェクトだ。……つまり、北海道という広大すぎる大地そのものが、うちの会社の【完全無料の特大スタジオ】なんだよ!!」
『……ッ!』
通話の向こうで、結愛が息を呑む気配がした。
「わざわざ東京から高い交通費を払って遠征してくる必要なんてない! 俺たちはすでに、最高のロケ地のど真ん中に拠点を構えているんだ!」
『……あー、なるほどぉ。社長ぉ、それなら金かからないし、マジで天才的かもしれないっすねぇ……』
黙って聞いていた海外スタッフのヨモが、相変わらず気だるげな声ながらも感心したようにつぶやいた。
「さらにカメラマンの人件費とロケバス代だ。ジェミニ先生、俺の前職はなんだっけ?」
『……元生活保護受給者、および陸上自衛隊・需品科所属です』
「そうだ! 俺は需品科で、トラックの運転から野営地の設営、物資の運搬まで、後方支援の過酷なノウハウを骨の髄まで叩き込まれている!」
俺は自分の胸をドンッと叩いた。
「重い撮影機材の運搬? 俺が背負う! ロケ地までの運転? 俺がやる! カメラマン? ジンバルを持って俺が走る! 野外での食事? 俺が火を起こして飯盒で米を炊く!」
『なっ……!?』
「社長である俺自身が、カメラマン兼、ロケバス運転手兼、荷物持ち兼、野外炊具担当として極限までタダ働きする! そうすれば、本来50万かかるロケ費用が……!」
『……機材の減価償却とガソリン代のみ。実質、ほぼ【0円】にまで圧縮されます』
ジェミニ先生の合成音声が、わずかに震えているように聞こえた。
『ルシフェル様……貴方、本気ですか』
結愛の声には、いつもの冷ややかな軽蔑ではなく、一種の畏怖のようなものが混じっていた。
『会社の利益を出すために、代表取締役である自分自身の肉体を、無給の奴隷として極限まで酷使し尽くすと言うのですね……?』
「当たり前だ!!」
俺は血走った目で、壁に飾られた300万円の美少女版画を睨みつけた。
「俺は、エウリアンに騙されて500万の借金を背負った、ただの愚かなヒモ男だ! このどん底から這い上がるためなら、泥水だってすするし、ヒグマの住む山にだって喜んで突撃してやる!」
俺たちの進むべき道が決まった。
ただのVTuber事務所じゃない。
大自然という最強の無料リソースと、俺の自衛隊仕込みの体力を掛け合わせた、前代未聞の【ロケ特化型VTuber事務所】への完全なる路線変更。
「いずれ海の『う○む○め』と肩を並べるために、まずは山を制覇する。そのための新チームが『やまむすめ』だ!」
『……ふふっ。あははははっ!』
突然、結愛がディスコードの向こうで腹を抱えて笑い出した。
『最高です、ルシフェル様。そこまでご自身の命を削ってエンタメに昇華するというのなら、秘書として全力でサポートして差し上げます』
結愛の笑い声が、冷徹な氷から、熱を帯びた共犯者のそれへと変わる。
「よし! ならば明日の夜、緊急配信枠を取れ! リスナーに向けて、『やまむすめ』第一期生のオーディション開催を大々的に発表するぞ!」
『……りょーかいっす。とりあえず、適当にバズりそうなバナー作っときますねぇ……ふわぁ……』
俺の心の中のくすぶりは、完全に晴れていた。
見栄と欲望にまみれて絶望の底に落ちた40歳のオッサンは、大自然という無限の武器を手に入れ、今、再び立ち上がろうとしていた。
待っていろ、世界。
俺たちインフィニティ・ワンの反撃は、北海道の山奥から始まるのだ。
コメント
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うわああああ!!😭💕 もうね、冒頭から北海道の大自然を「無料3Dスタジオ」って言い放つ社長の頭の回転がエモすぎる…!!✨ 自衛隊時代の経験をフル活用して自分で全部やる姿勢に胸熱すぎるんだけど?!「社長である俺自身が、カメラマン兼、ロケバス運転手兼、荷物持ち兼、野外炊具担当として極限までタダ働きする」って…推せる覚悟が違いすぎる!!🔥 涙出るわマジで。最後に「待っていろ、世界…北海道の山奥から始まるんだ!!」で締めるとかずるいって!!💕 やまむすめのオーディション絶対成功させてほしい…✨