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【能力者】ジェヘナ•グラシー
【能力名】ジェヘナ
《タイプ:制御不能型》
【能力】 身体がガラスのように脆く割れやすくなるかわりに寿命が尽きるまで生きられる能力。
【以下、細菌達の記録】
《土曜日、米津町の河川敷にて》
その日、どろりは一人で表の《ボランティア活動》としてゴミ拾いをしていた。
長袖、長ズボンを着て帽子と軍手とトング、そして何枚かのビニール袋を持ち、ズボンと財布を少し大きめのカバンに入れていた。
他の部員二人は今日はおやすみだった。
表裏一体は女友達と
遊びに出かけていた。
海街心蔵は家でスマホ弄りながら
だらだらしていた。
(タバコ、タバコ、グズグズの牛乳パック、
…….タバコ。)
河川敷の端ら辺に落ちてるゴミを拾い、
ある程度拾い集めたら袋をまとめて 鞄の中にしまった。
そんで手袋もビニール袋に入れて鞄の中に
入れた。
アルコールスプレーで手を消毒した。
そんで、水筒でお茶を飲んだ。
そして、ぽけーっとしていた。
(最近、ロカ先生に疑われたり殺人鬼に襲われたり激辛担々麺で死にかけたり2日に一回くらい痛見に殴り合いのタイマンバトルしかけられたり勉強だったり部活だったりで糞忙しかったからなぁ……….。)
どろりはすっかり疲れ果てていた。
どうして彼は毎回こんな酷い目に会うの
だろうか。
自らの能力《メルト》で能力犯罪者
あるいは非能力犯罪者をおよほ50人ほど
溶かしてこの世から抹消したただの
連続殺人鬼が どうしてこれほど酷い仕打ちを受けなければならないのか。
不思議で不思議で仕方ない。
ふと、琉球ガラスのように儚く美しい
20代くらいの女性がどろりに話しかけた。
彼女の顔色はとても白く、目は晴れの日の
沖縄のように澄んだ水色。
そして、身体のあちこちにガラスのような
皹が入っており、左手の薬指には綺麗な
ダイヤモンドの指輪がはめられていた。
「すいません……ケフッ……ちょっと、
米津公園の行き方を教えていただけませんか
……..。」
彼女はひどく苦しそうに言った。
どろりは行った。
「あ、ちょっと待ってくださいね
……..ここをこう行って、こう行って
ここをこう曲がってこう行ってこうです。」
困っている人を見ると手を差しのべずには
いられない。
どろりとはそう言う偽善者なのだ。
「ありがとうございます。」
彼女は軽く頭を下げ、どろりの元を去った。
ふと、スゥーッと風が吹いた。
【ガラスの割れるような音】
どろりは驚いた顔で振り向き、彼女の元へと
駆けつけた。
足が、ガラスのように、砕けていた。
どろりは急いで119番に電話しようとした。
「待って!!!!!」
彼女は叫んだ。
身体をうずめて酷く苦しげだった。
「ケホッ……だいじょう….ぶ…だから…..
足を….そっちに持ってきてくれるかな…..。
ごめんね…..こんなこと頼んで…….。」
どろりはおそるおそる割れた足を持ち
彼女の側に置いた。
すると、不思議なことに彼女の脚がスゥーッ
とくっつき元の脚に戻った。
「ありがとう…….君はやさしいね……
もう大丈夫だから……。」
彼女はそう言って、苦しそうな息を吐きながら、立ち上がろうとしていた。
どろりはおんぶのポーズを取った。
「お姉さんが嫌ではなければ公園まで送ります。」
とどろりは彼女を見ずに言った。
彼女は少し悩み。
「うん…… ありがとう。」
と言ってどろりにおぶられた。
《河川敷沿いを歩いて、公園に向かいながら》
「私ね……癌だったの。手術が終わって….なんとか治ったんだけど…….。」
どろりにおぶられ、苦しそうに息をしながら、彼女は言った。
どろりは公園に向かいながら、 黙ってそれを聞いていた。
「その時にね、能力者になったの。身体が
ガラスみたいに脆く、肺でさえ強く吸い込むと割れちゃう身体になった。そして私の余命は、あと二十年延びた。」
彼女をおぶりながら、公園に向かう横断歩道の道路が赤色から青色になるのを待ちながら どろりは、
「それすげー大変じゃないですか?」
と相槌を打った。
どろりは彼女をおぶりながら、彼女が割れてしまわないように
ゆっくり、ゆっくり歩いていった。
「うん……でも…….わたしこの能力好きだよ。だって、この能力を得る前の私よりも、今の私の方が、ちゃんと生きれてる気がするから。」
苦しそうに息をしながら彼女は言った。
どろりはそれに耳を傾けながら
ゆっくり、ゆっくりと公園に続くコンクリの
道を歩いていった。
《米津公園のベンチにて》
「あ、これピーチネクターです。」
どろりは彼女から頼まれピーチネクターを
自販機で買い、彼女の待つベンチに戻った。
どろりは彼女の隣で水筒のお茶を飲んだ。
「ありがとう…..ングッ、ングッ……..。
ふぅ……….今日はお日さまが綺麗だね。」
「ですね。」
「どろり君力持ちだねー。助けてくれて
ありがとね。」
苦しそうに息をしながら、彼女はにこやかに
笑った。
「全然、めちゃ軽でした。」
どろりは少し汗をかき、水筒のお茶を飲みながら相槌を打った。
公園には噴水があり、水の音と、木々の擦れる音と、時々鳥の囀る音がした。
「どろり君って米津高校の子?」
彼女は長い髪を風に少し揺らしながら
言った。
チリンッと風鈴のような音がした。
「はい。一年生です。」
とどろりは素っ気なく言った。
「私の婚約者もね、米津高校出身なんだー。」
そう言って彼女は清らかに笑った。
「すごくやさしい人なんだー…..。わたしが
死ぬのがこわくて泣いてたときにずっと
励ましてくれて……。わたしのために…..
大好きな人との結婚をあきらめてくれて….。 わたし、ずるしちゃった…….。」
ポロポロと彼女は泣いた。
どろりは何も言えなかった。
どろりは立ち上がった。
「実は僕、能力者なんですよ。」
「…..え…..?」
どろりはいないないと手を顔に当てた。
するとスッとどろりが消えた。
ジェヘナは目を大きく見開きあたりをきょろきょろ見渡した。
またどろりが出てきた、どろりはおどけた
顔をした。
「これが僕の能力、いないいないばあがめちゃめちゃうまくなる能力です。」
どろりはそう言ってニカッと笑った。
彼女はぽかんと口を開け、そしてケフッ
と笑い。
「いいね、それ。」
と言った。
《しばらくとりとめのない話をした後。》
「今日はありがとね、帰りは家族に送って
貰うから大丈夫だよ。またね、どろりくん。」
「ええ、またどこかで。」
どろりはそう言って、彼女の元を去った。
チリンッ、と風鈴のような音がした。
妖怪沢どろりはこのBioTOPEという
物語で決して誰かと付き合うことはなく。
決して誰かとウコチャヌプコロすることは
なく。
誰かと結ばれることも、決してない。
それは、彼が自らに課した罰であり、 世界が彼に与えたいくつかの罰と呪い の内の一つであり。
世界なりの、彼への愛なのかもしれない。