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ep.6
目side
【回想】
小さい頃に両親が離婚した。
シングルマザーになった母は一生懸命働いてくれた。
俺が高1になった頃、母が再婚して、新しい義父と高3の義兄ができた。
義父も義兄も、すごく優しくしてくれて、義兄とは友達のような距離で遊んだり勉強をしたりした。
「ね、兄ちゃん、」
兄「なにー」
「ここ、どーやって解くの?」
兄「ここは、、」
一緒に暮らしていくうちに、家族や友達とは違う、特別な感情を抱くようになった。
けど、その感情が何かを深く考えたことはなかった。
兄「蓮ー」
「なにー?」
兄「今度さ、夏祭り連れてってよ」
「あー、近所の?」
兄「そうそう、俺まだ行ったことないからさー!」
「いいけど、、彼女とかいないの?」
兄「んー、引っ越してくる時に別れた、笑」
「元カノじゃん、笑 俺でいいの?行く相手」
兄「おー、」
「分かった、勉強頑張る、笑」
・
・
【夏祭り】
兄「蓮、何食べるー?」
「かき氷食いたーい!」
兄「いいね、何味?」
「俺ソーダ」
兄「おっけ、買ってくるから待っててー」
「ありがと、」
〈あの、お兄さんかっこいいですね!〉
兄「えあ、誰ですか?」
〈えっとぉ、逆ナン?しに来ましたぁ!良かったら私と回りませんかぁ?♡〉
兄「弟待たせてるんで、あとかき氷溶けちゃうから、、」
〈何歳の弟くんなんですかぁ〜?〉
兄「高1っすけど、」
〈じゃあぁ1人でも大丈夫ですってぇ!早くいきましょーよぉ♡〉
兄「あの、めいわk」
兄ちゃん遅いな、
あ、兄ちゃんだ!
「にいちゃ!、、誰?」
「元、カノ、?」
でも、嫌がってるよね?
なんか気分悪いな、
兄「あの、めいわk」
「あの、嫌がってるの分かんないですか?」
兄「蓮、!?」
「逆ナンとか、普通にダサいっす笑」
「兄ちゃん、行こ」
兄「あ、うん」
〈あぇ、あのぉー?、、、、、ッチ〉
兄ちゃんが他の誰かのものになるのが嫌だった。
あの女のあんな汚い触り方に吐き気がした。
そこで自分の気持ちに気がついた。
兄「、!れん!」
「ぇ?」
兄「腕痛いわ、笑」
「あごめん、」
兄「さっきはありがと、助かったわ」
「ううん、」
兄「かき氷、溶けちゃったね笑」
「うん笑、あもうすぐ花火始まるよ!」
ヒュー、、、ドォーン
兄「結構綺麗だねー!」
「うん、綺麗だね」
兄「クライマックスだー!」
ヒュー、、、ドォーンドーン
ヒュー、、ドドーン
「兄ちゃんのこと、好きかも、」
ふいに出た想いは花火の音でかき消された。
・
・
【帰り道】
兄「綺麗だったな、、花火」
「うん、楽しかった」
ぎゅ、(手を握る)
「!?えっ、」
兄「俺も好きだよ、蓮」
「き、聞こえてたの?」
兄「うん、笑ちょっと恥ずかったわ、//」
「、いつから?俺のこと、、」
兄「最初から、、だから、下心隠して蓮と話してた。ごめん、」
「、別に嫌じゃないよ。嬉しい、」
それから、隠れて兄と付き合い始めた。
「ん”っ、兄ちゃん、、ぁ、」
兄「蓮、、ふぁ、あ、、っ好き、」
「あぁっ、、俺も、っ、、んっ」
兄「ごめっ、、いく、、ん”っ」
「俺、も、、、、あ、っ、」
身体を重ねたことだってあった。
こんなにも好きだと思った人は初めてだった。
幸せだった。ただ単に、好きな人と居られることが。
でも、長くは続かなかった。
兄に、病気が見つかった。余命は3ヶ月。
若いと進行が早いらしく、気づいた時にはもう、手遅れだった。
兄は入院した。見舞いに行くたびに痩せていく姿を見るのが苦しかった。
何もできない無力さが、心を抉った。
それでも兄は俺が来ると嬉しそうに、
兄「蓮、!」
と名前を呼んでくれた。
兄「天気が、いい、ね、」
「そうだね、」
兄「なぁ、蓮、?俺のこと、忘れて、いいからな」
「え、?」
兄「自分が、一番、大切に、した、いって思った、人と幸せ、に、なれよ、?」
「兄ちゃん、急にどうしたの?俺が一番大切で、好きなのは、後にも先にも兄ちゃんだけだよ?忘れるなんてできないよ。」
兄「嬉、しいな、笑」
〈目黒さん、面会時間残り10分です〉
「わかりました。」
兄「気をつけて、帰るん、だよ?」
「分かってるよー笑」
兄「愛して、るょ、今まで、ありが、とぅ」
「俺も、愛してるよ、また明日も来るね。」
兄「、、ぅん」
翌日の早朝、病院から兄が危篤だと連絡があった。
病室に行った時にはもう、目を覚ますことはなかった。
兄は自分の死が近いことを悟ったのだろう。だから最期にあんなことを言ったんだ。
それから俺は、特定の人と付き合ったことはない。
自分が、誰かと新しい関係を始めれば兄と過ごした時間が薄れていっちゃいそうで怖いから。
兄の存在を俺が忘れてしまったら、兄が生きていたことすら無くなっちゃいそうだから。
完全に兄の死が吹っ切れた訳じゃないけど、次第に兄との思い出も楽しめるようになった。
♡×250