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「ふわぁぁぁ♡。こんなに広いなんて♪にゃんて贅沢なのぉ♡」



「こ〜んなに手足を伸ばして〜♪ゆっくり入れるのって良いでしょ?。」



「うん♡。ミアンのお部屋はビルの五階だから〜お風呂の拡張工事はできないって言われたニャ。ん?ララちん?…ちょっと痩せたのかにゃ?」



「え?ええ、まぁ。…每日の様に…レオくんを探し回ってたからねぇ。」



「それでもぉ〜♪。おっぱいの大きさは相変わらずほど良いのにゃ♡」



「きゃあ?。もうミアンったらぁ〜いきなり鷲掴みぃ?。このぉ♪」



「うにゃあん♡ララちん、そこはダメにゃん♡。きゃんっ♪にゃあん♡」




一階の奥の風呂場から、ララとミアンのはしゃぐ声が聞こえてくる。ふたりに手を繋がれて、戻ってしまったバーランド商店。新しいアルバイトだとゆうケモミミな女の子のがいた店内を抜けてダイニングに上がると、しょんぼりとしたミミ・バーランドが待ち受けていた。…頬が痩けている。




「……………ぐす。…おかえりなさい…レオさん。そして…ごめんなさい…」



「ただいまミミ…ちゃん。…でも謝るのは俺の方だよ。…ごめんなさい…」




初めて招かれた日の初めて腰を下ろした椅子に座り、俺は正面に座ったミミ・バーランドに謝罪する。俺が消えた翌日に帰宅した彼女は、その日からずっと俺を探していたらしい。魔術学校から帰宅する間にも每日、日が沈むまで探し回っていたそうだ。ただ俺が零していた『争いごとは苦手』とゆう言葉を信じて、討伐者ギルドには問い合わせをしなかったらしい。




「…いいえ。レオさんが見ず知らずな女性に、いきなり拐われたとしたなら…わたしだって怒り狂ってしまいます。…いくらアトランタ卿が学園の先輩で幼馴染だったとしても…とても軽率な行動を取ってしまいました。」



「…いやいや、俺もそうゆう詳しい事情を知らなくて。勝手に怒って勝手に失望して…おまけに勝手に出て行って。ミミ。本当に…すまなかった…」



「そんな!レオさんは全然わる!?。………」



「いやーん!ミアンー?そんなトコまで揉まないでってばぁ♡」



「うふふふぅ♪。ララちんがヤラシイ身体してるから悪いんだにゃ♪」



「…………………………。」



「………………………ははは。」




何かに盛り上がっているララとミアンの声が飛び込んでくる。その笑い声が話し始めたミミの言葉をザックリと遮ってしまった。口籠るミミ。しかしあのビルでの険悪な雰囲気に比べれば、仲直りできたことは好ましい限りだし、この程度ならまだ許してやれる範疇だ。あくまでも俺は。だが。




「…あの二人…あんなに仲が良かったんだな?」



「ミアンさんはわたしも何度かお会いしています。すごい太客ですし…」



「うにゃあっはっはっは!ダメェ!ララちん!。くすぐったいニャー♪」



「ほらほらほらぁ〜♪。ミアンが脇腹弱いって知ってるんだからね♪」



「…………ははは。(…う〜む。…注意しに行ったほうがいいかなぁ?)」



「…………………はぁ。」




また風呂場から大声が飛び込んで来た。またもミミが話している最中に。一瞬ミミが奥への通路を見た気がする。とても開放的な岩風呂なのと、湯気を逃がすために仕切る扉が無いのだ。反響もするので声は通りやすい。




「…ほんとに…仲がいいなぁ。(二人が煩くてミミとの会話が途切れる…)」



「………………ちょっと待っててください、レオさん…」



「え?あ。ミミ?。(…ここはミミを止めるべきか?。…ひえっ!?)」




二度三度と俺との会話を遮られたのがミミの逆鱗に触れたらしい。俺に氷のような微笑を見せると、ミミは通路へと消えていった。…嫌な予感が。




「……ふふふ…………楽しそうですねぇ?。……おふたりとも………」



「うふふぅ♡。楽しいにゃ♪。ミミちゃんもミアンと一緒に入るにゃ♪」



「うふふっ♪。レオくんとの話は終わった…の?。…ま、待ってミミ?…」



「ひっ!?ひぎゃーーー!?。つっ!冷たいニャーーー!?」



「きゃーーー!?。ごめん!ごめんなさいっミミさんっ!?許して!?」



「いい加減にっ!!お姉ちゃんもミアンさんも五月蝿いからっ!!冷たい水でも浴びてアタマ冷やしなさいっ!!。こらーっ!逃げるなーー!?」



「ひぃー冷たいっ!?。ミミっ!?ミミっ!ごめんなさいってばっ!?」



「ひにゃーーーっ!?。ゴメンにゃ!?。ごめんにゃさーーーい!?」



「…………。(……これはミミの…お仕置きタイムだな。…ご愁傷さま…)」




今度はシューッ!とゆう噴出音と、ララとミアンの悲痛な悲鳴が聞こえてきた。触らぬ神に祟りなし。滅多な事では怒らない慈愛を絵に書いた様なミミを怒らせたのだ、それ相応の厳罰は与えられるだろう。仕方ないか…




「え〜っと。(球の体積を求めるには…半径の3乗に四分の三をかけて、更に円周率《π》を掛けるんだよな。体積をXとして公式はX=(4/3)πr3で、今回は割る2になるんだけど…桁が。あ〜計算機欲しいなぁ…)」




ララとミミとミアンが、寄って集って夕飯の支度に入った。俺はこれ幸いと自室でひとり、ギルマスに与えられた依頼の予備知識をアタマに叩き込んでいる。預けられている『天災』のデータ資料。質量を知りたかった。当然ながら平民が使える様な小型のパソコンも電卓もこの世界にはない。算盤に似た物体はあるのだが…これは暗算が基本だ。やはり疲れてくる。




「………。(移動速度が極めて遅いから、チャンスは一度っきりって訳でも無いんだけど、やっぱりこの巨大さは脅威だよなぁ。向こうとしては海に還りたいだけらしいが…通過した跡は土が剥き出しになった荒れ地しか残らないみたいだし。まさに悪意の無い災害そのものだよなぁ。う〜ん…)」




全長700メートル、全幅420メートル、そして全高200メートルからなる巨大スライムを、跡形もなく駆除するにはどれだけの魔力やエネルギーが必要なのだろう?。例えば使用する魔術も、炎で包んでも相手の復元能力を超えるのかは不明だし、凍らせたとしても溶ければ復活するかも知れない。岩石で潰すのは無茶の境地だし、風で切り刻んでもやはり無駄だろう。スライムの90%以上は水分だとゆう常識。そこを活かしたい。




「やっぱり電撃になるよなぁ。今朝のスパイダー・ゴーレムの時の一撃で出力は約40%くらいだったか?。俺が全力出すと迷宮そのものが崩落する危険性があるってサクラさんから釘刺されてるし、過去に落盤も起きたもんなぁ。でも今回は野外だし残りは七日しか無いんだし。……これは?」




銀色なバインダーに閉じられている『天災』の資料の最後のページに、その巨大スライムの予想進路が線引かれている地図があった。ギルマスのリン・ムラサキが言ったように、城塞都市の東門の北東から、南門の西側までがその枠に入っている。この予想進路通りなら…街の四分の一は確実に失われてしまうだろう。そしてこの店は…東門にかなり近い場所にある…




「レオさん、食事の準備ができました。宜しければキッチンへどうぞ♪」



「あ、うん。すぐに行くよ。(…あと6日か。…やるしかないよなぁ…)」




入口で待つミミに目をやってから俺は立ち上がった。因みにあの『伝統の寝室』以外にも個室は与えられているのだ。ただしその部屋で眠ることは禁じられていて、あくまで私用を済ませる場所として定められている。つまるところ郷に入らば郷に従えだ。特に不便もないので良しとしている。




「皆で一緒に寝るの!?。ひとつのベッドで!?。凄くヤラシイにゃ♡」



「ミアン〜?あんたの発想のほうがヤラシイわよ。妹も一緒なのよ?」



「そうです。姉がいるのにその横で…くんずほぐれつなんてできません…」



「くっ?くんずほぐれつって何にゃ!?。それもヤラシイ事かにゃ!?」



「声がウルサイわよ?ミアン。興奮するのは構わないけど少し抑えて…」




食事を済ませ、一家団欒を終えた私たち姉妹と猫人娘は、寝間着のワンピースに着替えるとバーランド家伝統の寝室へと集まっていた。レオは自室に籠もって勉強らしき何かをしているので構わないようにしている。またヘソを曲げて飛び出されたら大変だ。男性の扱いって…ちょっと難しい。




「『くんずほぐれつ』とゆうのは、互いに愛しあう男女が、甘く激しく性交している様を例えた言葉です。…つまり、あられもない姿で手足を絡めあい、快楽を貪る男女の情事の淫らさを表現する隠語とも言えますね?」



「せ…セイコウする男女の姿を表す言葉…にゃ。…で…せいこうって何?」



「…ミミ。ミアンに難しい単語は通用しないから。それにアンタも…そんな露骨な言葉を使うの止めときなさいよ?。聞いてる方が恥ずかしくなってくるから。…しかし、うちの王子様が来ないわねぇ。…部屋にいた?」



「うん。さっきお茶を持っていったら何かを計算していたみたい。もしかしたらギルドのお仕事かも知れないわ。…邪魔しないようにしないと…」




たとえひとつ屋根の下に居るのが分かっていても、その顔を見れないのは淋しいものがある。それに彼は、私達が知るレオ・ヤツカドでは無くなっていた。ミアンとゆう古い戦友の話では『幻のS級』も夢ではない程に強いらしい。しかし彼は短命種族の人間。儚い栄光のために戦わせるのは…




「…それにゃんだけど。…ララちんミミちゃん。二人がミアンの大切な仲間だから聞いてほしいことがあるのにゃ。クイーンの街が危ないニャ…」



「!?。…ミアン、詳しく聞かせて。アタシにできる事なら協力するわ…」



「わたしもです。…わたしは、この街で、皆と幸せに暮らしたいのです。ミアンさん教えてください。それはレオさんにも関係あるのでしょう?」



「…壁に耳あり。ニャ。…みんな…ミアンの近くに集まるにゃ…」



「あんた…そうゆう変な言葉は知っているのね。…これでいい?」



「……………。はい、寄りました。…始めてくださいミアンさん…」



「…怪しい音は。…うん。…実はトンデモナイことになりそうなのにゃ…」




討伐パーティを組んでいた頃は元気過ぎて、真っ先に魔物に見つかっていた猫人娘が、こうも声を抑えられるようになっていたとは驚いた。しかも見たこともないほどの真剣な表情と語り口。その成長も嬉しかった。これがレオ・ヤツカドの影響だとするなら、彼は特別な調教師になれるかも。




「よし…よしよしよし。(…轟雷の出力を最大のAとして、そこに3乗できる魔力を放てれば全体を包める。そして一気に体液を沸騰させれば…。なんて…机上の空論だよなぁコレ。何にしても…実際にやってみなけりゃ分からないし。なぁに…社畜だった頃には国政を敵に回しかねない事案もあったんだし何とかなるさ。今回は…頼れるバックボーンが無いだけだ…)」




理論だけだが…最低限な魔力計算は出来たと思う。俺の持つ魔力量は計測不能だったそうだ。ギルドタワーの最上階、あの部屋を出る直前に、俺の適性検査の結果をギルマスが教えてくれた。俺は驚きに固まってしまう。


適性魔法は火と水と雷に白と黒だ。三属性に適性があるだけでも前例が無いのに、色彩魔法への適性まで持つ俺を魔族ではないかと疑ったらしい。


しかし現在の討伐者たちは日々の収入を優先するため、危険な階には踏み入ってくれない。しかも登録者の八割は女性なのだ。討伐ギルドとしての本懐を取り戻すために、リン・ムラサキは…俺の採用を決断したらしい。




「…日が昇れば残りは六日か。こうなったらコチラから打って出て、俺の全力をぶつけてみるしか無いな。ぶっ倒れるほどの急激な魔力放出は経験ないけど、試してみる価値はあるか。…だけど、あの三人には秘密にしておきたい。…心配かけると…また叱られちゃうだろうしなぁ。…そうだ!」




彼女たちの好意に甘えて、出戻ったばかりの自分の立場を考慮すると到底ムチャは言えない。ましてやトンデモナイ魔物を退治に行くなど、口が裂けても言いたくない。そこでギルマスにひと肌脱いでもらおうと考えた。




「ギルド・マスターの名前でテキトーな依頼書を書いてもらえれば、天災の件で揉めなくても良くなるはずだ。…えっと、ギルマスのナンバーは…」




今夜中に発行して貰い、ここに届けてもらえたら、明日の朝には出発することができるはずだ。あのデカブツに会敵するまで何日かかるのかは移動手段次第に寄るが、馬車なら三日はかかってしまうのでパスだ。次は馬に乗って走らせる方法だろうか?。それでも二日は見込まないとだろうし…




「参ったなぁ。これもギルマスに頼ってみるか。『前略ギルド・マスター殿。この度の指令、確かに賜りました。できうる限り勤める所存ですが幾つかお願いが御座います。ひとつ目は、共に暮す者達に家を空ける口実を作るための指示書が欲しい事と、ふたつ目は移動手段とする乗り物の調達です。残り日数を考慮すれば馬車はありません。お願い致します。』こんな感じかな?。さっそく送信っと。…くあああっ!…んむ。…あ〜眠た…」




あの騒動の後、ミミとふたりで風呂に入り、少しイチャイチャしてから豪華な夕飯を食べる。その後の団欒で俺の討伐者経験を話した。驚きと笑顔の絶えない姉妹と、ネコミミ娘の元気さにほっこりとした。それから数時間、ミミがお茶を運んでくれてから俺の部屋を訪れる者は一人としていない。時々聞こえる狼らしき遠吠えの声。あの森が…そう遠くはないのだ。


もし『天災』が想定通りに進めば、この家も、街も、俺が飛ばされて来た泉や森までもが消失してしまう。都市の損害はどうあれミミとの出会いの森が、あの転生した泉が、奴に消されてしまうのはどうしても許せない。




「あとは『天災』に直接会ってからだ。向こうに悪意はなかったとしても指を咥えて見ている訳にはいかないからな。…そう。…やればできるさ…」




俺は自分に言い聞かせるように呟いて腰を上げる。絶対にできる!そう思い込むこともたまには必要なのだ。恐らく俺が討伐を失敗したとしても、あのギルマスの事だ。次なる手を隠しているに違いない。しかし手を抜いたり安心するのは負け犬の思考なのだ。俺は社畜だ。負け犬ではないっ!

社畜のおっさん。転生先で色々と無双する。(序章)

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