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「へ…?」
店長は最初、何で知ってるのかという風に驚いたが、やがて私が左手の薬指に注目してるのに気づいて、苦笑いをした。
「あ、あはは。いやぁー…まあその…大丈夫なんじゃないかな。」
そう言って私と目を合わせずにメニューをしまう店長。
その仕草で私は何となく理解した。別に、店長は気づかせようとした訳じゃないと思う。それだけ分かりやすい人なのだ。
「……奥さんに相手にされていないんですね。」
「っ…!!ごほっ!!ごほっ!!」
店長が水を飲んだ瞬間に図星をついてしまったせいか、むせてしまう。
私はとっさに飛び退くが、こっちに吐き出すことはなかったので、冷静に座り直す。
全く、いい大人が、動揺を態度に出すなんて。軽く受け流せばいいのに。
瞬き1つしないで、更に追い討ちをかける。
「当たりですか?」
「い、いやその…あははは…」
涙目になりながら、店長は乾いた笑いで誤魔化す。
その瞳の奥にはかすかな寂しさが宿っていた。もう、どこにも自分の家族はいないような。だけど取り戻すことを願っているような、そんな瞳。
「私と…一緒だ。」
「へ?」
「あ、いえ…」
思わず出てしまった言葉に口を塞ぐ。この人に一瞬でも共感してしまったのは事実だ。
意外だった。いつも、店長はお気楽そうに呑気に笑っていて、平和そうな顔をしていたから家庭内も円満なんだろうと思っていたのに。