(…だからどうだというの?仲間意識でも芽生えた?そんなわけない。)
頭の中の考えを打ち消そうと、横に振る。
その時――
「それは…違うよ。」
はっきりと、否定の言葉が耳に届く。顔をあげて、店長をまっすぐに見上げる。
目が合ったとたんに、店長はおろおろと視線を泳がせた。
「あ、いやその…藤塚さんの家庭事情はよく分かんないけど…俺と同じかもしれないけど…決定的に違うのは、原因は俺にあることさ。きっと、藤塚さんのところは…藤塚さんは何にも悪くないんじゃないかな?」
「何で…よく分からないのにそんなこと言えるんですか?」
「うーん、藤塚さんがすっごくいい子だからかな。」
眩しい笑顔でそう言われた。その声が優しく、ゆっくりと胸に響き渡っていく。
心臓の奥にじんわりと火が灯り出す。
いい子、なんてこれまでいっぱい言われてきた。
その度に自分はいい子じゃないって、素直に受け取ることができなかった。
なのに何故。こんなにも心が穏やかになっているんだろうか。
この感情は…多分嬉しさだ。そう、嬉しく感じている自分がいる。いくら頭で否定しても、理屈じゃない部分が店長の言葉を認めているんだ。
(ああ、そっか。裏の顔を見られてもいい子っていってくれてるからだ。)
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