テラーノベル
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4話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
その後、キヨは驚くほどの速さで回復した。
深く裂けていたはずの傷も完全に塞がり、
まるで何事もなかったかのように、いつもの生活へと戻っていた。
森に入り、獲物を追い、
変わらない日常をこなしていく。
——ただ一つ、変わったことがあるとすれば。
「おい、レトさん」
キヨは足を止め、頭上の木々を見上げた。
「隠れてないで出てこいよ」
その声に応えるように、枝葉がガサガサと揺れる。
やがて、ひとりの獣人が軽やかに地面へと降り立った。
『……やっぱりバレてた?』
へへへと嬉しそうに笑うレトルト。
あの花畑での告白以降も——
レトルトは相変わらず、姿を隠すようにキヨのそばにいた。
「隠れなくていいって言ってるじゃん」
キヨは少し呆れたように、それでもどこか笑いを含んだ声で言った。
レトルトは照れたように頭をかきながら、
『ごめん……ずっと隠れて見てたから、その癖が取れへんくて』
と少しだけはにかみながらそう答えた。
「……ほんとにさ」
腕を組みながら、じっとレトルトを見る。
「全然隠れる気ないだろ、レトさん」
レトルトは一瞬きょとんとしたあと、心外だとでも言う様に叫んだ。
『…あるよ!!』
そう言いながらも、尻尾は正直にぱたぱたと揺れている。
全然隠せていない。
キヨは呆れたように目を細めた。
「その尻尾どうにかしろ」
『え?』
「バレバレなんだよ」
レトルトは自分の尻尾を見て、はっとしたように押さえる。
だが、嬉しさが滲んでいるのか、完全には止まらない。
『……だって、キヨくんに逢えるの嬉しいんやもん』
ぽつりと落ちたその一言に、キヨの動きが一瞬止まる。
(……こいつ……/////)
まっすぐすぎる。
照れを隠すように、キヨは視線を逸らしたまま口を開く。
「で?…今日はどこ行く?」
その一言に。
レトルトの表情が、ぱっと明るくなる。
まるでその言葉を待っていたかのように——
『俺の巣に来てよ!!』
勢いよく前に出て、キヨの顔を覗き込む。
『最近模様替えしたんやけどさ!キヨくんに見てほしくて……!』
嬉しさを隠しきれない声。
そのまま、レトルトはキヨの周りをぴょんぴょんと飛び跳ねる。
大きな尻尾もぶんぶんと揺れていて、全身で喜びを表現していた。
「レトさん、落ち着けって」
そう言いながらも、完全には突き放さない。
『来たくない?』
不安そうに、上目遣いで聞くレトルト。
その様子に キヨは一瞬だけ言葉に詰まり——
「まぁ、行ってやってもいいけど」
ぶっきらぼうに答える。
その瞬間。
レトルトの尻尾が、さっきよりもさらに大きく揺れた。
『ほんま!?やった!!』
また飛び跳ねそうになるのを、なんとか堪える。
そんな様子を見て、キヨは小さく微笑んだ。
レトルトの巣へ向かって、森の中を歩くふたり。
鳥のさえずりが高く響き、 風に揺れる木々がざわめく。
澄んだ空気が、ゆっくりと流れていた。
キヨはこの森が好きだった。
命の気配が満ちていて、
騒がしいのに、どこか落ち着く。
『キヨくん見て!これ、めっちゃ甘い木の実!』
『あとで巣で食べよ!』
横でぴょんぴょん跳ねながら、レトルトが木の実を摘んでいく。
あっちへ行ったかと思えば、すぐ戻ってきて。
またどこかへ行って、すぐに戻ってくる。
落ち着きがない。
「レトさん、騒がしいなぁ」
呆れたように笑って言うと、レトルトはくるりと振り返った。
『だって、キヨくんが来てくれるから嬉しくて』
当たり前みたいにレトルトはキラキラと言う。
その一言に、キヨは一瞬だけ言葉に詰まる。
「……そっか////」
少し赤くなる顔を誤魔化す様にキヨは雲一つない青空を見上げながらレトルトの巣へ向かった。
レトルトの巣は、大きな洞穴の奥にあった。
外からは想像もつかないほど中は広く、 そして綺麗に整頓されていた。
壁には枝で作られた人形(?)のようなものや、
葉っぱを繋ぎ合わせた絵画(?)のようなものが飾られていた。
どれも少し不格好で、でも丁寧に作られているのが分かる。
『すごいやろ?』
誇らしげに笑うレトルト。
『全部、俺が作ったんやで!』
その言葉に、キヨは少し目を見開いた。
「……へぇ、すごいじゃん!」
キヨはキョロキョロと部屋の中を見渡しながら
レトルトの器用さに感心していた。
『あ!キヨくん、こっち!こっちも見て!』
ぐいっと手を引かれて 連れて行かれた先には、大きな大木をそのまま切り出したようなソファがあった。
『このソファな、キヨくんと座りたくて運んだんやで!』
レトルトは満面の笑みでキヨにソファを見せた。
(……俺と?)
胸の奥が、少しだけざわつく。
「……そ、そうか」
うまく言葉が出てこなくて、視線を逸らす。
そのまま促されるように腰を下ろした。
『はい!これ!』
レトルトが嬉しそうに戻ってきて、
葉っぱの上に乗せた木の実を差し出す。
『この木の実、めっちゃ甘いよ!キヨくん、食べてみて』
期待に満ちた目。
キヨはその視線を受けて、少しだけ気恥ずかしくなり視線を逸らしながら ひとつ手に取って口に運んだ。
甘い果汁が広がる。
「うまい!」
本音が漏れた その瞬間、 レトルトの尻尾がぱっと大きく揺れた。
『ほんま!?』
ぐいっと顔を近づけてくる。
『俺にもちょーだい』
そう言って、レトルトはキヨの口の中に残る木の実を舐めとった。
「んっ….!?んんっ///っぷはっ」
『ふふ、美味しいね』
赤面するキヨの目をキラキラと光る黄金の瞳が見つめた。
「そ、そういうの…やめろって////」
キヨは頬が熱くなるのを感じて、視線を逸らした。
(……獣人ってみんなこうなのか)
慣れない距離。
慣れない空気。
でも、不思議と嫌じゃない。
レトルトはそんなキヨの様子を見て、くすっと笑う。
『キヨくん、顔赤いで?』
「……赤くねぇよ」
すぐに否定するが、声が少しだけ上ずっている。
それに気づいて、レトルトはさらに楽しそうに笑った。
レトルトと過ごす時間は、思っていたよりもずっと穏やかで。
どこか甘くて、やわらかいものだった。
無邪気に笑う声や、
隣で揺れる大きな尻尾。
近すぎる距離に戸惑いながらも、
その全部が少しずつ——キヨの心をほぐしていく。
気づけば、警戒していたはずの相手に、
こんなにも気を許している。
離れたくないと、どこかで思っている自分がいた。
ここ数日で。
レトルトとキヨの心の距離は、ぐっと縮まっていた。
言葉にしなくても分かるくらいに一一。
洞穴の中に、静かな空気が戻る。
キヨは少しだけ息を整えてから、隣にいるレトルトへと視線を向けた。
「……なぁ」
低く、少しだけ真剣な声。
「この前の……魔女の一族って、なんなんだ」
一拍置いて、続ける。
「あいつら……何者なんだよ」
その問いに レトルトはすぐには答えなかった。
少しだけ視線を落とし、何かを考えるように黙り込む。
さっきまでの柔らかい空気とは違う。
重く、張り詰めた沈黙。
やがて——
『……あいつらは、魔女や』
ぽつりと、言葉が落ちた。
『この森を……支配しようとしてる存在』
静かに語り始めるレトルトの声は、どこか冷たかった。
『表向きは、“森を守る者”って言われてる』
『数十年前にあった大規模な森林伐採……あれを止めたのも、あいつらや』
キヨの脳裏に、話だけ聞いたことのある出来事がよぎる。
『そのおかげで、動物たちからは崇拝されてる』
『森を守った英雄みたいに』
そこで一度、言葉を切る。
そして ゆっくりと顔を上げた。
黄金の瞳が、わずかに揺れる。
『……でも、裏は違う』
その一言で、空気が変わった。
『森のエネルギーを吸い取って……自分らの魔力に変えてる。森が伐採されてなくなるとエネルギーを吸えなくなるから森林伐採を食い止めた。自分たちの魔力の為や。』
『その力で、動物たちを支配しようとしてる』
キヨの表情が、わずかに険しくなる。
『動物の支配が終わったら……次は人間』
低く、はっきりとした声。
『最終的には、この世界全部を支配するつもりや』
洞穴の中に、重たい沈黙が落ちた。
さっきまでの穏やかな時間が、嘘みたいに遠ざかる。
キヨはしばらく何も言わなかった。
ただ、ゆっくりと拳を握る。
レトルトは怒りで震えるキヨの拳をそっと上から握りゆっくりと言葉を続けた。
『……キヨくんの一族はな それにいち早く気づいたんや』
静かな声。
『魔女一族を……潰そうとしてた』
キヨの指先が、わずかに強く握られる。
『特に……キヨくんのひいおじいちゃん』
一度、言葉を選ぶように間を置く。
『その人の力は、群を抜いて強かった。
魔女一族を、絶滅寸前まで追い込んだ』
洞穴の空気が、ひやりと冷える。
『……でも、完全には終わらなかった』
『逃げ隠れた魔女の生き残りがいた。 どこかに身を潜めて……ずっと機会をうかがってた』
キヨの脳裏に、あの老婆の顔がよぎる。
あの笑い声。
あの執着。
『それが最近になって……また動き出した』
レトルトの声が、わずかに硬くなる。
『森のエネルギーを吸い取って、魔力を取り戻して 力を蓄えてる』
『でも……それでも足りなくて一一』
その一言で、空気がさらに重く沈む。
『今はもう、森だけじゃなくて 生き物からも……魂のエネルギーを吸い取るようになってる』
キヨの表情が、はっきりと変わった。
「まさか….」
『最近、森で人や動物が消えてるやろ』
レトルトは、まっすぐキヨを見つめる。
『……あれは全部、魔女に連れていかれてる』
沈黙。
さっきまでの温もりが、遠くなる。
『……俺の仲間も』
レトルトは、ぽつりと呟いた。
その声は、さっきまでよりも低く、重い。
『何人も……連れ去られてる』
拳が、ぎゅっと強く握られる。
『魂のエネルギーを全部吸い尽くされて……』
一度、言葉が途切れる。
そして——
『みんな….死んだ』
短く、吐き出すように言った。
その体から滲むのは——はっきりとした怒り。
『俺は……魔女を許せない』
静かに、けれど確実な憎しみが言葉にこもっていた。
キヨは何も言わず、ただそれを聞いていた。
そして、ふと——
あの日のことを思い出す。
赤ずきんの護衛をしていた時。
森の中で感じた、あの張り付くような視線。
獲物を狙うような、冷たい殺気。
(あの凄まじい殺気は、赤ずきんに向けられていたのか。 あの時から既にレトさんは赤ずきんを殺す隙を狙っていたんだ)
キヨはゆっくりと息を吐いた。
「レトさん……話してくれて、ありがとう」
キヨは静かにそう言って、レトルトの手を握り返した。
その手は、少しだけ強くて——
でもどこか、優しかった。
「俺の家族を、あいつらは殺した」
低く、はっきりとした声。
「レトさんの大事な仲間も……」
一瞬だけ、視線を落とす。
そして、ゆっくりと顔を上げた。
「……許さない」
その瞳に、強い意志が宿る。
「俺が……絶滅させる」
キヨの目には、はっきりと怒りの炎が燃えていた。
その言葉に レトルトは一瞬も迷わず、強く頷く。
『俺も、一緒に戦う!』
握られた手に、さらに力がこもる。
『キヨくんを……絶対一人にさせへん』
まっすぐな言葉。
その瞳にもまた、同じように炎が宿っていた。
怒りと、覚悟と、そして——
守りたいもののための強さ。
ふたりの手は、離れない。
燃え上がった想いが 今、ひとつに重なった。
——魔女一族を討つために。
その日、ふたりは同じ敵を見据え 同じ未来を選んだ。
続く
コメント
4件

今回も最高です🤯ありがとうございます😭😭︎💕︎💕 細かい設定まで練り込まれていて、ほんとうに凄すぎます!!!

や、やばい… 物語が良すぎる😭 尻尾がぱたぱた動いちゃうレトさんも可愛いし、照れ隠しのキヨも可愛いし、もうずっとにこにこしてました𐤔𐤔𐤔 でも仲間や家族が亡くなってしまったなんて悲しい😢 これからの展開が気になります チ ラ チ ラ ( ˙꒳¯ )
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