テラーノベル
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意気消沈していると奥原が武器を持った手下の村人を連れてやってきた。
「やはり無理じゃったのう」
奥原はどこか勝ち誇っているようにも見える。いや、実際そうなのだろう。もし妖怪を倒していたら村の実権は奪われることになるのだから。
「お前らはこれから下民として扱わせてもらう」
奥原の命令にもはや逆らうことが出来ない。だが、それだけでは終わらなかった。
「そしてもう一つ。親分さんが死んでいた。だからお前らの中から次の生け贄になってもらう」
努は言葉を失う。いや、梶も含めて全員が呆然としていた。
「お前ら自身で決めるがよい。まあ、もう決まっていそうじゃがな」
奥原は梶の怪我を見て言うと家を出て行った。特に見張りはない。もはや反撃する気力もないと思っているのだろう。
「クッ……」
しばらく沈黙が続くと静寂の中で梶が苦悶の声を漏らした。
「あ、梶さん、大丈夫ですか?」
「皮を剥がれただけだ、見た目ほど重傷ではない」
梶の声は意外としっかりとしていた。
「それより……妖怪について考察したことを話せ」
梶は目を閉じて訊いた。努は安堵の息を吐く。梶が総てを諦めたらもう助かりようがないからだ。
「は、はい。まずは見たことを纏めます。妖怪の姿は大きなサルという感じですが手が六本で足は二本。顔もサルっぽい形はしていましたが目の部分が赤黒いブツブツでした。攻撃面では素早い動き、それにあの手。触れた部分の皮が剥ぎ取られていくみたいです。そして防御面では矢も鉄砲も、火までまったく効いていませんでした」
努は早口で説明した。早く話さないと忘れるような気がしたからだ。
「あの顔というか目ですが合わせて八本の手足とあの無数の赤黒い目は蜘蛛の妖怪か蜘蛛と猿が合体した化け物なんじゃないかと思いました」
「蜘蛛と猿のハイブリッドか……そういえば、この村の形どことなく蜘蛛の巣に似ていたな」
目を閉じながらもちゃんと聞いていたようで梶はボソッとつぶやいた。
「どのみち、もう直接戦うという方法では無理です。攻撃が通じないですし戦える人も、もう……」
自分で言いながら暗い表情になる。
「武器で倒せるなら、とっくに退治されているからな」
「そうですね」
「それでも倒す方法はないか?」
「え? そうですね……」
努は頭をフル回転させて考える。会社が倒産して半分引きこもりだった時期。そしてこの村にきてネットで調べたこと。有象無象の怪談話や昔話を思い出しながら口を開いた。
「お経とかお札とか、お坊さんの神通力は……ここでは期待できませんね。そうなると、あとは日光とか毒とかお酒とか……」
言葉と共に気持ちもしぼんでいく。薄暗い森の中とはいえ日中なのに妖怪は平気だった。
武器は通らないし口もないので毒や酒も無理。この封鎖された村で用意できるもので妖怪に対抗出来る方法なんて何も浮かばなかった。
「俺は少し眠る」
努が無言になったので梶はメガネをとって枕元に置いた。本当に眠ったのかわからないが努は音をたてないように壁際に移動して腰を下ろした。
考えないといけない。妖怪を倒す方法かこの村を出る方法。そんなものがすぐにわかれば苦労しないが……。
「あっ」
思わず声が漏れた。そんな単純なことではなかった。夜までに何らかの答えを出さないと誰かが生け贄としてあの椅子に拘束されて……そして拷問される。
――怪我をした梶さん……いや、梶さんはいてもらわないと困る。じゃあ……
「って、なに考えているんだ僕は……」
妖怪のことよりも誰を生け贄にするかを考えていた自分に気づき努は頭を抱えた。このままじゃいけない。頭を冷やすために努は一人で外に出て行った。
#怪異
イキリ火の玉
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コメント
1件
うわ…今回も重かったですね。奥原のあの勝ち誇った態度、すごく腹立たしくて。でも一番胸にきたのは、努が無意識のうちに「誰を生け贄に」って考え始めてたところ。自分で自分に気づいて慌てるところ、人間の弱さがリアルで苦しかったです。追い詰められた時の心の動き、丁寧に描かれててぞっとしました。八頭道尾さんのそういう表現、本当に大好きです🥀