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ルスベスタン「要求は1つです。」
アマラ(…このまま話を聞かなければ、ルスベスタンは…恐らくアタシにとって敵になるだろうな。)
アマラ「内容は?」
ルスベスタン「貴方、あの2人雇ってましたよね。橙色の髪の子と、銀髪の子。」
アマラ「…ああ。」
ルスベスタン「銀髪の子、ジークって名乗ってましたね。あの子と、2人きりで話せる時間を作って欲しい。それだけです。」
アマラ「そりゃどういった目的で?」
ルスベスタン「話さないとダメな感じです?別に取って食ったりしませんよ。」
アマラ「どうかな。お前、巷じゃ爆弾だの地雷の不発弾だの呼ばれてるんだぜ。そもそもこんな簡単な要求自体おかしい。」
ルスベスタン「優しいだけですって。…あと勝手に持ち出したら今頃貴方とガールフレンドちゃんに脳天かち割られるんで。」
アマラ「女性をなんだと思ってんだ…。」
ルスベスタン「それで?どうします?」
アマラ「話の内容に答える気は?」
ルスベスタン「…話の内容、ね。知られちゃまずい話。としか言えませんね。」
アマラ「それを何故ジークに?」
ルスベスタン「…自分としてもあんまり依頼する人に情報を伏せたりするのは好きじゃないんです。嘘をつくのも。この取引成功させたいし。でも貴方、本当に倫理がしっかりしてて手強いんですからね…。話の内容は伝えることは出来ません。それだけは絶対に。」
アマラ「なら…」
アマラは小さなナイフを握りしめる。と反対に、それまでフォークを持っていたルスベスタンの手がカウンターに置かれる。
ルスベスタン「だからほーんのちょっとだけ、本音を伝えますね。それだけで多分理解してくれるでしょうから。」
アマラ「…あまり自分の特技が利用されるのは好きじゃないんだがな。」
ルスベスタン「嘘じゃないですよ。言ったじゃないですか。本音って。」
ルスベスタンは1呼吸おき、アマラの目を真っ直ぐ見据える。
ルスベスタン「死にたくない。」
表情が一切変わらずしかし、その声は多分震えていた。今まで腹を探らせまいとしていた男が、そういった途端、幼い子供のように思えた。
アマラ「……。」
ルスベスタン「死にたくないから、気づいてもらわなきゃいけないんです。」
アマラ「とにかく、手は出さないならそれでいい。アタシとしても、協力してくれるなら話が早くて助かる。」
ルスベスタン「じゃあ取引成立ですね。」
またルスベスタンはすぐに、掴みどころのないような声で返事をした。
アマラ「……。」
(これを嘘だとは…思えないな。いや、思いたくない。)
アマラ「因みにそのフォークどうするつもりだったんだ?」
ルスベスタン「ローズが諦め悪いので、最悪これでどうにかしようかと…」
アマラ「フォークで!?」
(流石…掃除屋という名の殺し屋…。)
クリウス、アマラ、ルスベスタンは宿屋に向かい歩きながら辺りを見渡す。
アマラ「全然起きてるヒトは居ないな。」
クリウス「そうだね、2人が言うにはニャヘマとニェヘマはもう起きてたんだよね?」
ルスベスタン「起きてましたよ。あの様子だと暫く前から起きてたのかもしれませんね。」
クリウス「…1つ仮説はある、けどうーん。とりあえずそれも後で話そう。今は姉上をどうにかしないと。」
宿屋まで着いたクリウスはそう言い、個室のドアをノックしようとして止まる。
アマラ「開けないのか?」
ルスベスタン「アマラさん、彼が満足するまで待ちましょうか。」
アマラ「よく分からんが…お、おお。」
扉を隔てた空間で4人は話す。
ジハード「……。」
アリィ「ずっとローズ殿下の方を見てるけど、何かあった?」
ジハード「いや、特には。」
ジーク「聞きたかったんだけど、ぶっちゃけどう思ってるんだ?ローズ殿下のこと。」
アリィ「あ、それ私も気になってた。悪く言ったりはするけど、気にかけたり…。」
ジハード「まぁ…ローズは屑だと思う。」
ノア「なんにも飾らずに言ったね。」
ジハード「脅された立場としても勿論だけど…王族として向いてない、かな…。いやむしろ向いてるか…?あんまり国民を人と考える考え方じゃなかった。恨んでる。でも感謝もしてる。」
ノア「それは…」
アリィ「なにか分かるの?」
ノア「…記憶を覗いた時、ずっとなんとも言えない倦怠感があったんだ。覗いた時からだからボクのじゃない。それのことかなって。」
ジハード「概ね、間違いはない。ローズに会うまで、ずっと迷ってたんだ。」
ジーク「迷う?」
ジハード「ああ。…ヒトを食う悪魔を止める。それに違和感を持ったことは無い。でも、俺はそこまで戦えるわけじゃない。1人は狂って、1人は追って行方不明になって。俺一人で止められるなんてとても思わなかった。無理だって諦めて逃げた。ただ2人の生きてくれって言葉に縛られて、ずっと隠れて生き続けて、でもそれに意味があると思うか?お前達は知らないだろうが…俺達は万年を生きる可能性だってある。目的なく生き続けるのに、意味を見いだせなかった。」
アリィ(目的はある。生きてって言われたから。でも…それじゃあジハードの生きる理由には、ならなかったってことなんだろうな。)
ジハード「理由はどうあれ、ローズは俺に生きる意味を与えてくれたんだ。明確な目標を。だから感謝もしてる。…終わりのない戦いに疲れていたのは俺もだ。」
それはきっと砂漠に無数に存在する悪魔のことを指しているのだろう。それ以上は誰も何も聞かなかった。
ルスベスタン「戻りましたー。」
再び沈黙が訪れかけたその時、ルスベスタンが扉を開け、帰宅したことを伝える。この宿を家にしたつもりはないけど。
アリィ(って思っても今更か。全然他の人達が起きないから、都合よく話し合いの場にさせてもらってるし。)
アリィが考え込んでいる間に、クリウスは不慣れながらも、ルスベスタンの助力を受けながらローズに口枷を嵌める。クリウスはローズをしばし眺め、すぐに部屋から出ていこうとする。何を思ったのか、それは考えるだけ野暮だろう。
クリウス「少し2人と話をしてくる。」
そして、その一言でこれから何が行われるか理解した。
アリィ「…あんまりもう取り繕う気ないね。」
ジーク「夢に嵌め込まれたと言っても、俺が分かっちゃってるからな…。あのまま素の状態で行くみたいだ。」
アリィ「ちょっと迷わない?クリウス殿下って呼ぶか、キールって呼ぶか。」
ジーク「すっごいわかる。」
ノア「大変だね。」
アリィ「複雑で困るぅ…。にしても…ほんとになんでジークには効かなかったんだろう…範囲?それなら城の人も起きてるはず…」
ジハード「効いてないのは3人。アマラ、ジーク、ルスベスタンの3人だ。それぞれ当時場所が違いすぎるし、範囲はない。俺としてもそれは気になってた。」
アリィ「故意じゃないんだね。尚更…」
ジハード「でも…もしかしたらってのはあるんだ。本当にこれは感覚なんだが…魔法をかけた相手にはなんとなく自分がかけたどうかの痕跡があるんだ。例えば、そのヒトの肩を触ったみたいな…そしたら当然服は同じ形ではなくなる。そんな僅かな痕跡。アマラにはそれがあったんだ。同時に、なにかに跳ね除けられた感覚がした。」
ジーク「アマラは魔法を受けてから跳ね返したのか…!?そんなこと出来るはず…」
ノア「いや、出来るよ。彼女はフェニックス所属だ。ならそんなことができてもおかしくない。ボクは、魔法を防ぐ道具を知ってる。フェニックスなら持っていてもおかしくは無いよ。」
ジーク「…なら俺とルスベスタンは?」
ジハード「…本当にありえない話だ。正直考えにくいけれど…これしか考えた限り可能性はなかった…。多分…わざと避けた。魔法を使うのを。」
アリィ「…え?」
ジハード「今でも、そうだが…本能的にルスベスタンと君に魔法を使うのを恐れている。恐れて、避けた、可能性が高い。」
ジーク「…理由がわかった。でもなんでルスベスタンが?」
アリィ「えっ!?ま、待ってよ!?私置いてかれてるって!1人で納得しないでよ!?」
ノア「…ああそういうことか。」
アリィ「ノアまで!?」