TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する


「ええぇ? サンフィアさん、いなくなっちゃったんですか!?」

「どこに行ったのか分からないが、そのようだ……」


ミルシェの話を聞く限りでは、途中までは文句を言いながらもついて来ていたようだ。辺りは霧深いが、魔物はいなく何かが起こったとは考えにくい。ましてどこかに隠れるような所があるわけでも無い。


「アックさま、どうされます?」

「フニャウゥ~……フニャ~」


シーニャはひたすらおれにくっついて甘えっぱなしなので、無理に意見は聞かないでおくとして。やはりここは一番近くにいたミルシェの意見を聞いて判断する。


村の入り口が目の前に見えているし、村に進んでみるという手もある。ルティなら何か知っていそうだし、まずはルティに駄目もとで聞いてみるか。


「ルティ! この辺のことはお前が詳しい。何か手がかりになるものは無いのか?」

「はぇ? 詳しくは無いですよー? あ! でも、もしかしたら……」

「……何か思い当たるものが?」


それにしても村の入り口にまで来ているのに誰も出迎えないな。認められた者しか入れないという掟があるからなのか?


そうだとしたら厄介な村だ。


「あ! もしかしたらなんですけど~、サンフィアさんって武器を手にしていませんでしたか?」


ネーヴェル村は武器を手にしてはいけない――だったな。だがその話ならイデアベルクでしていたし、ミルシェもしつこく注意していたはず。


そう思ってミルシェの顔を見ると、呆れた表情を見せている。


「それは無いですわよ。あたしは、確かに槍を取り上げましたもの」

「それもそうだな」


その場面を見たわけじゃないが、ミルシェは厳しい女性だ。たとえ相手が誰であろうと厳しく言い放ってくれる。


「――ですけれど、さすがに”内側”に隠し持っていたとしたら、そこまでは分からないことですわね」

「他にも武器を隠し持っていたと?」

「ええ。それだと分かりかねますわ。アックさまだって、そこまで分からないのでは?」

「……そこまではな」


護身用に短剣でも忍ばせていた、あるいはエルフの部下たちに持たせられていたか。そうだとしても、突如いなくなるなんてこの村は何かあるな。


ミルシェと悩みながら話をしていると、気付かないうちに霧が晴れていたようだ。そしてミルシェとサンフィアがいた辺りには、サンフィアが着ていたエルフの布服だけが見えている。


「布服だけ!? ま、まさか……」

「期待させておいて残念ですけれど、サンフィアは脱がされたわけではありませんわね」

「へ?」

「エルフは用心深い種族ですから、何着か持ってきていたのでは?」


どうやら裸にされたわけでは無く、ストックの布服らしい。別に期待していた訳じゃなかったが。


「なるほど」

「それはともかく、彼女は何者かに連れ去られたのでは?」

「そう考えるべきだろうな……」


状況が良く掴めないが、霧に紛れて複数の何者かが彼女をどこかに連れて行った……そう考えるべきだろう。


「アック様、アック様! とりあえず、村に行きませんかっ?」

「サンフィアのことはどうするんだ?」

「心配は心配ですが~……実は、ここは時間が経つとまた霧が濃くなっちゃうんですよ~」

「何? そうなると何かあるのか? 村はすぐそこだぞ?」

「大変なことが起きちゃうんですよ~! 《アックさん》」


ルティの言葉に半信半疑だったが、確かに晴れていた霧がまた出だしている。それもさっきよりも濃い感じで。


「ウニャ、アック! ドワーフの言うとおりにするのだ! 毛が逆立ってるのだ。何か起きそうなのだ」

「シーニャも何か感じているのか」

「ウニャッ!」


さっきまでおれにくっついていたシーニャだったが、嫌な気配でも感じ取ったのか耳をぴくぴくさせている。サンフィアのこともあるが、村が歓迎しているうちに入るしか無さそうだ。


「アック様、その前に魔石を~……」

「ん? 魔石を何だって?」

「魔石も危ない目に遭わせるかもなので、わたしが預かりますよ~!」


こんなことを言うのは初めてだ。ドワーフの村で何が待ち受けているか分からないし、ルティだから預けておくか。いつもなら人に渡したり預けたりしないのだが、両手を差し出すルティの手に魔石を乗せた。


だがこれが間違いだった。


「はいっ、頂きましたよ、アックさん!」

「――え? あ、おいっ!! 待てっっ!!」

「追いかけて来てくださいね! ルティちゃんもそこで待っていますよ!」

「――ちぃっ!! なんてこった!」


霧が再び出た時点と、シーニャが気付いた時点で気付くべきだった。ルティの雰囲気も何となく変わっていたし、あの話し方と雰囲気は間違いなくリリーナさんだと。


「アックさま。ルティはともかく、魔石を取り戻さなければなりませんわ!」

「あぁ、くそっ! 完全に油断した」


魔石をごっそり渡してしまうとは。ルティもそうだし、恐らくサンフィアも捕まっているはずだ。


何か起きるとは思っていたが、まずは魔石を取り返さなければ。

loading

この作品はいかがでしたか?

15

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚