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「なうなぅ」
「可愛い。可愛すぎる」
子猫ほどのサイズ感の幻獣猫は私にべったりで、とっても甘えん坊だ。モフモフでふにゃふにゃでとっても可愛い。癒し、そう超癒される!
「ロゼッタはジルベール様に愛されているわね」
「ですね」
「……ん?」
どうしてここでジルベール様が出てくるの? まあ、この子を生み出したのはジルベール様だから、好意的だってこと?
もしかして幻獣猫って特別な意味があったりする?
「ミレイア姉様。幻獣猫ってなんだか私知らないのですが……」
「!?」
「ああ、そっか。そもそもクライフェルゼ王国ではそういう風習はないし、シュプゼーレ聖魔法国でも王家しかないものだから知らなくて」
「いえ、殿下の婚約者ならなんで事前に話をしていないのか! あとで問いただしましょう」
「あ、うん……それで幻獣猫ってなに?」
話が逸れたので、改めて幻獣猫について教えて貰った。
「幻獣猫とは王族のみ魔力から分身で、発動条件が生涯愛すると決めた人が現れた場合です」
「ひゃう!?」
「王族にとって最大級の求愛であり、幻獣猫は生み出した者の愛情度によって態度が変わります」
「つまりロゼッタ嬢以外には懐かない」
マジか。
そういうのは早めに言って欲しかったのだけれど。「なうなう」と腕に引っ付いてくる姿が可愛すぎる。え、可愛すぎるのだけれど。
そっか。
私が不安だからジルベール様は、この子を残してくれたのかもしれない。「大丈夫だよ」とこの小さな幻獣猫を見ていると不安が消えていく。
まだ誰かを信じることは怖いし、裏切られるかもしれないと思う気持ちはある。でも幻獣猫の温もりが愛おしいと思えるようになった。
ギュッと抱きしめると微かにジルベール様と同じラベンダーの香りがした。
『おやおやおや? ジルベール殿はいらっしゃらないのか』
「「「!??」」」
第三者の声に全員が窓に視線を向けた。そこには折り紙のフクロウが、窓からすり抜けてちょこんと現れたのだ。魔導具? それとも魔法?
ミレイア姉様とリュカ様がすぐさま戦闘態勢に入る。
「何者だ!?」
『上位神官のヴィリバルト・クルーグハルトです。中々、お返事をいただけなかったので、使い魔を使ってご連絡したことお詫び申し上げます』
お返事? そんなもの貰った記憶はないのですが……。ミレイア姉様とリュカ様を見ると二人とも視線を逸らした。
あ。これは意図的に隠してましたね?
『まあ、ロゼッタ様に会えたので良しとしましょう。早速本題ですが、ロゼッタ様と私の養父ベンドリック枢機卿と血縁関係が確認できました。ですのでお時間を作っていただきたいのです』
血縁関係!?
あーー、そういえば髪の毛を一房切って教会に提出したけれど、アレで確認したってことね。
え、私本当にあの家の子どもじゃないの!?
「それならばシュプゼーレ聖魔法国の王家と我がデサンティス侯爵家に、打診していただきたい」
『そんなことを言ったらいつになるか分からないではないですか。それにロゼッタ様の叡智を、シュプゼーレ聖魔法国が独占するなど許せるとでも? ロゼッタ様なら我が教会の失われつつある魔法術式の復活や、白銀比の素晴らしさがわかると思うのです』
白銀比。日本では神の比率とされていて、法隆寺や伊勢神宮、最近だとスカイツリーだって多く取り入れられている。アレ?
黄金比が有名だけれど、日本だと白銀比の歴史も長いのよね。でも私の知っている白銀比と違ったらいけないから、一応確認してみよう。
「白銀比というと、正方形で縦横の比率が1:√2(約1:1.414)のことで合っていますか?」
確認の意味を込めて尋ねたのだが次の瞬間、フクロウの両目が輝き──。
『その通りです正確には1 : 1+√2となりますが正方形の対角線の長さが白銀比でもっとも美しい形であり無駄のない素晴らしいものまさに銀色の比率』
「え、あ」
『きんぴかな黄金比とは似て非なるもの。私は白銀長方形も愛しておりますが、やはりなんと言っても白銀比こそ究極形態でしょうああやはりロゼッタ様もこの美しさがおわかりのようですぜひぜひこの話を飽きるまで語り合いたい昼に夜も関係なくこの奇跡を味わい尽くして』
唐突に句読点なく早口でまくし立てるので、私は思わず怖いと言う感情が溢れ出しまう。
しかも迫ってくる!? 怖っ!
「ゔぅ!」
私の機微にいち早く気付いた幻獣猫が、使い魔に向かって火を吐き──灰にしてしまった。
こ、怖かったよぉ。
「なう!」
幻獣猫!!
なんて頼もしいの! 思わずモフモフを抱っこした。
「さすが幻獣猫様です」
「ジルベール様に連絡を入れておきます」
「……お願いします」
うーん。好きな話をする分には良いけれど、人の話を聞かないのは減点だわ。会話のキャッチボールって大事ね。
血の繋がりがあっても私のしたいことを邪魔しようとするのなら、関わりたくないかな。どうするかは、ジルベール様と会ったときに相談しよう。
そう決意して、幻獣猫をギュッと抱きしめた。
***
ジルベール様がシュプゼーレ聖魔法国に戻って一週間が経ったところ、クライフェルゼ王国の王太子リベリオ・ペテリウス・シルタネンが視察を終えて戻ってきた。これでようやく王太子に謁見したら、シュプゼーレ聖魔法国に移住ができると思っていたのに、問題が発生する。
私は早く魔導具作りが出来る生活がしたいのに~~~~。
白薔薇が咲き誇る庭園にて、お茶会のような形で私と招待された。警護としてミレイア姉様とリュカ様がいるので心強い。
紅茶に口を付ける間もなく、リベリオ殿下は朗々した口調で話す。
「天才魔導具技師、ロゼッタ。報告書には目を通している。このたびは魔導具制作において注視していなかった国の責任だ。申し訳なかった」
「いえ。……そのことは」
「どうか君はこの国に残って、魔導具の発展に協力してほしい。もちろん報酬ははずもう。住む場所もそうだな、王都に準備させる。望むノなら私の二番目の妻に──」
「リベリオ殿下」
思わず声を遮ってしまった。不敬かもしれないけれど、ハッキリと断っておくべきだ。