テラーノベル
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君は、俺が重ねた手を振り払った。
『優しく、しないでっ、…』
その瞬間、考えることより先に身体が動いた。
気づけば、君に抱きついていた。
点滴が落ちる規則的な音が聞こえながら、
俺は、君の背中に手を回していた。
君の手の行き場はなくて、俺の服の裾をキュッと掴んでいた。
少しの間そうしていて、俺は1度離れようと思った。
だが俺は、離すのとは逆に、君のことをさらに強く抱き締めていた。
その後、君は、堪えていた涙がこぼれ落ちたかのようだった。
俺は、少し離れて君の涙を拭った。
『俺が居るから。』
それだけ言った。
それ以上は、言わなかった。
幼い頃に病気を発症して、
中学生の頃に不慮の事故で父親を亡くした君にとっては、
一人で抱え込む事が当たり前で、
そうでなければ混乱してしまうと思ったから。
でも、俺の存在を伝える事は出来る。
言葉はなかった。
いや、要らなかった。
しばらくすると、俺の肩に体を預けていた君の重みが増すのを感じた。
寝たか、と思って顔を覗き込むと、
少し泣いた跡が残った顔で、少しだけ、
俺が来たばかりのときより安心したような顔をして眠っていた。
俺は、その場で、君が俺に体重を預けている方では無い腕を、
君の医療用帽子の上から撫でた。
君の表情は、すっと、笑顔になったように感じた。
コメント
2件
うわ、悲しいなぁ……