「…少し、聞いてもいいか?」
騒々しい町で、隣に座る青い髪の友人…「蓮」へ、遊ぶ子供たちを見据えながら話しかけた。
声掛けに応じ、私をちらりと見た廉は無言で続きを促す。
少し間を空けて、私は口を開けた。
「君の、好きな食べ物はなんだ?」
「…正直に、言ってくれ。」
付け足した言葉が、私が本当に聞きたかったこと。
彼と会話を重ねる度に、彼を見る度に気づいた。
相手に合わせて自分を変えている。と。
例えば、対象の相手の好きなものが米だった場合、彼もまた「米が好きだ」と言う。
些細な共通点を相手に伝え、親近感を湧かせるという彼なりの交流法なのかもしれない。
だからこそ聞きたい。
廉の…いや、本当の廉の好物を。
彼は私の摩訶不思議な未来予想図を真摯に受け止めてくれた恩人だ。
だから、今度は私が受け止めたい。
そう思って聞いてみたのだ。
だが、その問いかけに対する答えはすぐには横から聞こえない。
何故だろうか。自分の 好きな食べ物を正直に答えるだけなのに。
難しいことではないはず。
声をかけ直そうと彼の方に視線を向けようとした瞬間
「団子。」
と彼が呟いた。
あまりに突然の事だったので咄嗟に「は?」と聞き返すと、彼はぎこちない笑みを浮かべながら言い直した。
「…この町の団子屋さんの団子が好き」
そんな答えが帰ってくるとは思わず豆鉄砲を打たれた鳩のように呆気にとられた。
が、すぐに気を取り直し、彼の答えの返しを零した。
「……君は、本当にをかしな事を言うな。」
それだけ零して、席を立った。
追いかけるように彼も席を立つ。
まだ青い空の下を黙々と歩いた。
本当に彼はをかしい事を言ったもんだ。
この町に、団子屋なんて無いのに。
コメント
6件
表現の仕方たまらん...感動 色々考えられて面白い
きゃぁぁぁぁぁぁあ妄想が止まらないわ…………!!! あてしもこういう世界観好きなの。爆発しそう。
この古い時代の世界観めちゃくちゃ好きです 鳥獣戯画を描きたくなります